約 115,178 件
https://w.atwiki.jp/bugshiren/pages/18.html
シレンがンドゥバの肉でアイテムに擬態中に攻撃を受けると、姿はシレンに戻るが武器と盾の特殊効果を失った状態になってしまう。 肉を食べてから20ターン経つか、別の肉を食べて戻るか、改めて武器や盾を装備し直せば解除される。 盾を装備し直して、ンドゥバの肉の効果が切れる前に再度肉(なんでも良い)を食べると、盾の効果が出たままで変身することができる。剣は装備し直しても必中の剣とミノタウロスの斧の効果しか出ない。 原因調査中。
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/607.html
崩壊─ゲームオーバー─(9) ◆gry038wOvE 「ラブ……! ラブ……!」 蒼乃美希が何度呼びかけても、返事はない。 桃園ラブの身体は、何度揺さぶっても、呼びかけても、美希が何を思っても、返事をする事はなかった。しかし、背中を上に向けて倒れたそれの表情を見る決意はなかった。 確実に死んでいる。 それを理解し、それでも、──「万が一」に賭けて、少しの希望を持って、何度か呼びかけたが、返事はやはり、帰ってこなかった。 「……」 そう、こんなにもあっけなく。若干、十四歳の少女の命が……その短さは、丁度同じ年齢の美希が一番よくわかる。 彼女の持つ夢も、彼女と親しい男の子も、彼女を愛した家族も、美希はよく知っている。 それが、最終決戦の間近で──目的だった、みんなでの脱出を目前にして、今まで、共に戦い積み重ねてきた日々は、脆く崩れ去った。 やっと出口が見えている迷宮で、桃園ラブは消えてしまったのだ。 「許せない……!」 強く拳を握るキュアベリー。 涙より先に出た、底知れぬ怒り──。 こんな感情が湧きでた相手は、この殺し合いの中でも石堀光彦だけだった──。 真正の外道。かの外道衆でさえ、門前払いするほどの凶悪だった。 憎悪というのが、ここまで体の底から湧きあがる物だとは、蒼乃美希も思っていなかった。 キュアベリーは、ほとんど衝動的に、ダークアクセルの前に駈け出していた。 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 そう言って、飄々と、悠々と、あまりにもあっさりと、キュアベリーの怒りの籠ったパンチを避ける。彼女の左側に身を躱した。 「……そうだ、その憎しみだっ! だが、その程度の力では俺には勝てない……っ!!」 そして、──キュアベリーを吹き飛ばす。 ベリーは全身の力で体勢を立てようとするが、何メートルも後方に向けて落ちていった。 圧倒的な力で地面に叩きつけられ、大事な事実に気づく。 ──そうだ、石堀はキュアピーチを一撃で倒すほどの力の持ち主だ。 プリキュアのままでは勝てないのだ……。 「うわあああああああああああああああああああああああああーーーーーーーッッッッ!!!!!!!」 男の叫び声が響いた。 涼村暁の、今までに発した事もないような声であった。 ガイアポロンもまた、駆けだすなり、振りかぶってダークアクセルを斬り殺そうとする。 そんな我武者羅な攻撃が効くはずもないのは当然であるが、それでも、冷静に考える力などどこにもなかった。 「テメェッ!!! 本当に殺しやがった!!!! こんな残虐な形で、女の子を一人──」 ガイアポロンの刃が振り下ろされようとする。 「でも前から気づいていただろう? 俺が桃園さんを狙っている事は……。それを守れなかったのは、誰の責任だ? ──涼村暁」 刃を振るおうとしていた剣が止まった。 はっとする。──理屈は正しいとも言えないのに、反論ができない。 そんな言葉が耳を通るなり、暁は──再び、雄叫びをあげた。 「うわああああああああああああああッッッッ!!!!!!」 それしか返答はなかった。 自分の責任も、彼は理解している。──あれだけ、ずっと守ろうとしてきたのに。 力の差は圧倒的だった。目を離した一瞬で、彼の計画は完了してしまった。 それでも。それでも結局は関係ない。暁は、また、同行してきた女の子を一人守れなかったのだ。その事実が暁から理性を奪う。 ──あの桃園ラブを、守れなかった。 それを認めたくない。 「テメがァァァァァァァァァッッッ!!!!!!!!!」 また、ガイアセイバーの刃が石堀の眼前に振るわれた。 だが、それを石堀は生の左手で受け止めると、もう血まみれの右手でガイアポロンの胸部に手をかざした。 その瞬間──ガイアポロンが不穏な予測をした。 ──負ける? そう、思ったのだ。 「やれやれ……ハァッ!」 ダークザギの持つ、“闇の波動”がその手から放たれる。 すると、ガイアポロンの体が、──吹き飛ばされる。 何メートルもの距離を一瞬でガイアポロンは、旅する事になった。何本かの灌木をなぎ倒して、ようやくガイアポロンが地面に辿り着く。 「くっ……!!」 大木に体が叩きつけられようとした直前、──空中から青い影が現れる。 クウレツキだ。 命令を受けずとも、激突する前にガイアポロンを捕まえ、空中へと避難させたのである。 超光騎士は、思いの外、優秀なサポートメカであった。 『大丈夫デスカ、ガイアポロン……!』 「……サンキュー、クウレツキ!」 地上を見下ろすと、石堀の元でリクシンキとホウジンキが戦っていた。 リクシンキがリクシンビームを放ち、ホウジンキはジェットドリルを換装して石堀を倒そうとする。 「超光騎士……、起動してやった恩を忘れたのかな?」 石堀は、それをそれぞれ片手で受け止めてしまった。 そして、ホウジンキのジェットドリルが直後にへし折られ、その回転を止める。 ホウジンキの腕がショートする。 『アナタハ、倒スベキ相手デス!』 『許セマセン……!』 ──しかし、その直後に、石堀の手から黒い衝撃波が放たれ、ホウジンキの首だけが、何メートルも後方に吹き飛んだ。 僅か一瞬の出来事で、リクシンキもAIで感知しきれなかったらしい。 『……!』 刹那──、今度は、リクシンキの眼前まで石堀は肉薄していた。驚異的なスピードであり、まるでワープのようにさえ見えた。 石堀は、リクシンキの胸に手をかざすと、そこで同じように闇の波動を発する。 「死ね……いや、壊れろッ!」 ──リクシンキの胸部から、爆音が聞こえた。 リクシンキのボディが大破する。ホウジンキと同じように首が飛んだが、それ以外にも手足がばらばらになり、内部機械が露出していた。 修復不能レベルまでに、完膚なきまでに ホウジンキが、首をなくし、胴体だけになりながらも、スーパーキャノンの砲撃を石堀に向けた。 「お前もだ、……消えろッ!」 そして、石堀は遠距離から、同じように黒い衝撃波を発した。 ホウジンキの胸の命中し、ホウジンキも胸部から爆ぜ、バラバラに砕け散った。 「……くそっ……! 何て事しやがる」 『リクシンキ……! ホウジンキ……!』 空中でそれを見ていたクウレツキは激しいショックを受けたようだった。 彼らはロボットだが、同じように目覚めた兄弟に違いない。 それを、起動した恩人である石堀光彦に攻撃され、破壊されてしまっている。 そんなクウレツキに、ガイアポロンは言った。 「おい、クウレツキ! お前らは俺たちの戦いには、関係ない! ……待機してろ。お前もリクシンキやホウジンキみたいにはなりたくないだろ!」 彼らしからぬ優しさに驚いたが、こういわれてしまうと、逆にクウレツキは使命感に燃えてしまうのだった。 『シカシ、アナタ達ヲ助ケルノガ我々ノ役目デス!』 「そんなの知らねえよ、俺の命令だ! ……あいつは俺がぶっ潰す!!」 次の瞬間、意を決して、ガイアポロンは叫んだ。 今、石堀光彦に誰より怒りを感じているのは、自分なのだと、ガイアポロンは思っている。 桃園ラブと一緒にいるのが好きだったのもある。 しかし、──石堀光彦と一緒にいたのは、たとえ敵だとしても、楽しいと……涼村暁は少しでも思ってしまっていたからだった。 「────シャイニングアタック!!」 ガイアポロンの胸からその胸像が現れる。 叫んだガイアポロンは、空中でクウレツキの腕を振り払って石堀に向けて突進していく。 シャイニングアタック──。 シャンゼリオンであった時からの必殺技である。 『……ガイアポロンッ! アナタトイウ人ハ……!』 全く、短時間しか共にいなかったとはいえ、クウレツキは、かなり聞きわけがない主人に見舞われてしまったらしい。──主人が石堀に向かっていくのを見下ろしながら、そう思った。 思えば、リクシンキも、ホウジンキも、クウレツキも、涼村暁という男が主だと知り、かなり失望した気分になったのだ。 ダークザイドであるゴハットの方が本当の主人なのではないかと思ったほどである。 今向かえば、やられるに決まっているというのに突き進んでしまう。 彼は、クウレツキに、「待機してろ」と言った。 「──フンッ」 石堀は障壁を張って、シャイニングアタックを防御する。 真っ黒なバリアが、シャイニングアタックを拒む。 ──クソッ……! 石堀の持つ闇の力は強大だった。 直後には、シャイニングアタックを弾き、ガイアポロンを地面に転がしてしまう。 石堀は、今日まで共に行動してきた涼村暁に向けても、冷徹に右手を翳し、あの衝撃波を放とうとしていた。 そして、それは次の瞬間、放たれる。 『──危ナイッ!!』 その時、ガイアポロンの目の前に、クウレツキが飛来する。 石堀とガイアポロンの間に立ったクウレツキは、その次の瞬間には、その衝撃波を一身に受ける事になった。 彼らの目の前で、彼の新品同様の青いボディが弾け飛び、大破した。 『────ッ!!!』 クウレツキのばらばらになった破片が、周囲に吹き飛んだ。 石堀の周囲は、三体のメカの内部メカが大量に散らばっている。 その内、──クウレツキの頭部だけが、ガイアポロンの前に転がって来た。 「くそっ……馬鹿野郎ォッ……! だから、待ってろって言ったのに……!」 ガイアポロンは、その頭部を拾い上げた。 ガイアポロンは、自分の攻撃が全くの無意味であり、それだけではなく、犠牲を出してしまった事を悔やみ、そう呟いた。 『──ガイアポロン』 クウレツキは、残っていた頭部の言語回路とAIだけで、ガイアポロンに声をかけた。 彼の目がチカチカと弱弱しく点滅し、ガイアポロンに最後の言葉を告げる。 『アナタノヨウナ人ノ為ニ作ラレ、少シノ間デモ、共ニ戦エタ事ハ、私タチノ、誇リ、デス………………』 三体の超光騎士は、この時を持って、全機能を停止した。 ガイアポロンは、自分に最後まで忠実だった三体の友の一人を、腕の中で強く抱きしめ、怒りに燃えた。 【リクシンキ@超光戦士シャンゼリオン 破壊】 【ホウジンキ@超光戦士シャンゼリオン 破壊】 【クウレツキ@超光戦士シャンゼリオン 破壊】 ◇ 「石堀、てめぇっ!! 許さねぇ!! 絶対殺してやる!!」 キュアパッション──杏子が前に出る。 ガイアポロンや超光騎士たちの奮闘の後も彼女の怒りは冷めやらなかった。 「おっと、魔法少女だった佐倉さん。少し目を離していたらプリキュアに、か……その服装、似合ってるじゃないか」 「その減らず口を二度と聞けなくしてやるッッ!!! 悪魔ッッ!!!」 そんな言葉を、悠々と聞く石堀。 そして、またどこか皮肉的に、こう告げる。 「……そうだな。ただ、前の方が似合ってたと言ったらどうする──?」 ──そう言われた瞬間、杏子は気づいた。自分自身のキュアパッションの変身が解け、彼女は魔法少女の姿になっていたのである。 杏子は、思わず、自らの腰部まで視線を落とした。 そこには、装着されていたはずのリンクルンがなく、その残骸と思しき物が地面に落ちていたのがちらりと見えた。 「何ッ──!?」 ──石堀は、変身アイテムだけを的確に破壊したのだ。 長い時間の経過とともに杏子が使用する事になったリンクルンは、僅か数分でその機能を終える。 アカルンは、その残骸の中で、弱弱しく、埋もれるようにして倒れていた。辛うじて無事だが、二度とリンクルンは使用できないだろう。 「てめぇ……っ……!」 しかし……敵が変身アイテムを破壊する戦法を取り、それを実行できるスピードとパワーを持っているすると、不味い事になる。 ──そう。杏子は、彼に知られている。 キュアパッションと違い、魔法少女というのは、変身アイテムそのものの破壊が──。 「──これが、命取り、だろ?」 石堀の手が、杏子の胸元のソウルジェムへと伸びた。 ──不味い。本当に。 跳ね返そうと、槍をそれより早く胸元の前に翳そうとするが、やはり敵の方が一枚上手だった。杏子より素早く動いた彼の腕は、その指先をソウルジェムに掠めた。槍は素通りする。 そして、気づけば、また──次の瞬間にはそれは彼の手にあった。 駄目だ。それが破壊されたら──。 (──ッッ!!) しかし、見逃す理由はどこにもない。──杏子は、死を覚悟する。 まともな意味もなく、杏子は目を瞑った。 死ぬ──。 だが、杏子の意識は、その先もまだあった。 眼前では、石堀が、杏子のソウルジェムを左手で弄んでいた。少し拍子抜けしたが、それも束の間だった。 助かった事を安心してはいない。 何か、それより恐ろしい事を企んだからこそ──彼は、それを手に構えているのだ。 そして、それは次の瞬間に、実行される事になる。 「安心しろ、壊しはしない。でも、このソウルジェムって奴には、ちょっと興味があるんだ……。──そう、たとえば、こんな風に、絶望の海に沈めてみたらどうかな?」 石堀は、そう言って、ソウルジェムを「忘却の海」へと放り捨てたのである。 それは全員の目の前で、人々の恐怖の記憶の海の中へと沈んでいく。──後悔してももう遅い。 それが杏子の「本体」だ。 「なっ……!」 杏子は、自らの魂が遠くへと沈んでいくのを前にしていた。広く深い忘却の海の中に投げ出され、膨大な情報の波に、一瞬で流されていくソウルジェム。 杏子は自分の意識が、掠れていくのを確かに感じた。 ──ああ、クソ…… 「あれは忘却の海レーテ。あの中は人間が立ち入れないほど根深い人間の心の闇に繋がっている。──人間があそこに迷い込めば、絶対に生きてここに戻る事はできない」 杏子の意識が、完全に薄れていく。 とうにソウルジェムは、肉体の意識を途絶する距離にまで達している。しかし、残滓というのか、シャットダウンされる直前、杏子は聞き、思った。 「そうだ、お前は死なない……! これから永久に、時空の中を一人ぼっちで彷徨うんだ、佐倉杏子……。寂しい寂しい一人ぼっちの旅を──永遠になッ!」 ──悪い、みんな……何もできなかったけど、コイツを、頼んだ…… 杏子の意識が、遂に途絶えた。 映像が消え、笑い声が最後に耳に反響した。 「……ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!!!!」 【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ 再起不能】 ◇ 「────」 ラブの死。超光騎士たちの再起不能。杏子のソウルジェムの廃棄。 それによって、怒りに火が付いた者もいる。──しかし、そんな最中で、キュアベリーは、妙に頭が落ち着いた気分で、ある物を取りだしていた。 実のところ、落ち着いた気分というのは勘違いも甚だしい錯覚である。 美希の心は、むしろ頭に血が上りすぎて、何も考えず、全ての外部情報を途絶し、石堀光彦を撃退する最も効率的な戦法だけを考え、実行するようになっていた。 少なくとも、その瞬間だけは──。 「ッ!? ──駄目だ、美希ちゃんっ! ここで変身しちゃ──」 孤門が何か不穏な物を感じて、美希を制止しようとしたが、手遅れだった。 ──ベリーの懐から取りだされた、光の巨人への変身アイテム。 真木舜一から姫矢准へ、姫矢准から佐倉杏子へ、佐倉杏子から──蒼乃美希へ、光を継ぐべき者に継がれ、ここまでつながったエボルトラスターである。 彼女は、この強大な敵に立ち向かう為の最後の武器として使おうとしていた。 石堀が、その瞬間、ニヤリと嗤った。 「────うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…………ッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 キュアベリーは──蒼乃美希は、その力を解放するべく、エボルトブラスターを強く引く。 憎しみの力を発しながら──それでも、ウルトラマンは美希と一つになる。 彼女の身体がウルトラマンネクサスへと変身する。 ──桃園ラブ。 ──佐倉杏子。 二人の事を頭に浮かべながら、──いや、あるいは、石堀とは関係なくこの殺し合いの中で死んだ他の仲間の事も頭の中に思い出しながら、今まで感じた事のない憎しみを、ウルトラマンの光の中に込めた。 この殺し合いを止め、ダークザギに立ち向かう為の力として──。 ──その時。 「────ッ!?」 何故か、ウルトラマンネクサスの身体は、忘却の海レーテから発された無数の黒煙のような触手によって引き寄せられたのだ。それは一瞬で四肢を絡め取り、ウルトラマンの自由を奪う。 抵抗する間もなく、ウルトラマンはレーテの前に引きずり込まれた。 「ウルトラマン……ッ!?」 巨大なレーテの異空間の中で、ウルトラマンの制限は解除され、孤門以外の誰も見た事のなかった身長49メートルいっぱいの巨体が磔にされる。 その場にいる誰もが、その光景に唖然とした。 「グッ……グァァァァ…………ッッ!!」 ウルトラマンは一瞬でそのレーテの力に合併される。 ──そして、なおも赤く光っていた胸部エナジーコアから、膨大なエネルギーがレーテの中へと流れ込んだのは、次の瞬間だった。 「──レーテに蓄積された恐怖のエネルギーが、お前の憎しみにシンクロした。結果……光は闇に変換される!」 石堀だけが知るその理論を口にした所で、誰もその意味を解す事はないだろう。 しかし、それが石堀にとって計画通りの出来事であるのは間違いなかった。彼の微笑みは何度も見たが、この瞬間ほどそれに戦慄した事はない。 ──やがて、変身者である美希が、意識を失う。 ウルトラマンの指先からすぐに力がなくなった。 英雄は、その瞳の輝きを失い、頭を垂れる。 その場にいる誰もが、その光景に唖然とした。美しささえ感じる、巨人の終焉に──。 「来い……っ! これで……っ!!」 石堀が待っていたのは、この瞬間だった。 エナジーコアの光は、「闇」となり、レーテを介して石堀の身体に向けて膨大なエネルギーを注ぎ込む。 ウルトラマンの光だけではなく、そこに、美希の持っていたプリキュアの光まで相乗される。それも石堀光彦が狙った通りだった。 完全にその表情を異形に包んだ彼は、まだわずかに残っている人間の表情で最後に笑った。 「─────────復活の時だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」 ──石堀光彦の身体に、ウルトラマンネクサスから発された膨大な闇のエネルギーが吸収され、彼はその真の姿を現世に再現する事に成功する。 周囲の大木が、その瞬間に爆発さえ起こした。あり余ったエネルギーを、周囲の破壊に利用したのだ。 「フハァーーーーーーハッハッハッハッハッハッハッハハッハハッハッハッハッハッ!!!!!!!!!!」 暗黒破壊神ダークザギ──。 ウルトラマンに酷似した──しかし、その全身を闇色に塗り替えたような姿の戦士。 血管のように全身を駆け巡る真っ赤なエナジーもまた特徴的であった。 まるで狂った獣のように爪を立て、全ての生物を「虚無」に変えようとする怪物。 それは、決して再びこの世に生を受けてはならない存在の姿だった。 しかし、この時、目覚めてしまった。彼自身の周到な計画によって──。 『なんてこった……こりゃあ、どんなホラーよりも凄まじい闇の力を感じるぜッ!!』 とうに制限時間が来て召喚を解除していた零の指で、魔導輪ザルバが言う。 だが、零はその言葉に、こう返した。 「ああ……言われなくても、わかってる」 他の誰もが、言葉を失って、それを“見上げていた”。 そこにいるのは、等身大の敵ではない。身長50メートルの怪物である。 彼が吸収したエネルギーは、あまりに強大すぎた。彼らの世界の人間たちだけでなく、あらゆる多重世界の恐怖のエネルギーを収集していたレーテと結合した闇の力である。 もはや、制限などは些末な問題でしかない。 ダークザギが猛威を振るえるシチュエーションは完全だった。 ────果たして、一体、この場にいる誰が、こんな敵を止められるのだろう。 【蒼乃美希@フレッシュプリキュア! 再起不能】 【ダークザギ@ウルトラマンネクサス 覚醒】 ◇ 誰もがダークザギの姿を見上げていた時、ただ一人だけ──。 そうこの時、ただ一人だけ、その巨大さに驚きながら、全く、別の行動を実行した者がいたのである。 彼が注視していたのは、ダークザギではなかった。 この闇の巨人への恐怖は、無論ある。誰よりもこの巨人への無力を実感している。──しかし、それを、ほんの些細な事であるかのように、彼はこの時に感じていた。 忘却の海レーテから、おびただしい闇が噴出し、ウルトラマンの姿を覆い隠していく。 レーテに閉じ込められた杏子のソウルジェムと、美希は闇の中に消えてしまった。 もう、遠いどこかへ行ってしまう……。 「美希ちゃん……っ!」 この巨大な忘却の海の中に囚われた蒼乃美希の事が、──孤門一輝は気がかりだった。 そして、気づけば、彼はその闇の中に飛び込もうとしていた。 ──僕は、こんな恐怖の中に閉じ込められた人を守るために、レスキュー隊に……。 ……そう。それは、遠い子供の時の記憶だった。 孤門は、どこか流れの早い川で溺れそうになった事があったのだ。 川で溺れて死んだ子供たちのニュースを何度か聞いていたのを思い出し、子供心にもその時は“死”を覚悟した。濁流は孤門の足を、川の深くへと体を沈めていく。沈んでしまえば、息もできない。もう二度と、友達や、父や母の顔を見る事ができない永久の闇の中に沈んでしまうのだ。 そしてその時、周りには誰もいなかった。誰も助けてくれる人はいない。 何の気なしに川で遊んでいた自分が、明日には大自然の犠牲者としてニュースになる──。 ……死ぬのが怖かった。 だが、どうする事もできず、彼は、一度、“生”を諦めた。 直後に、一人の男が孤門の手を取り、助けてくれたその時まで、自分は確実に死ぬ物だと諦めていた──。 (──諦めるな!!) そうだ……。 あの時、僕を助けてくれた人の声が聞こえる。 (───諦めるな!!) あの時、僕を導いてくれた人の声が聞こえる。 そうだ、諦めちゃだめだ。 どんな深く暗い海の底にも、希望は必ずある……。 ……諦めるな。 今度は──今度は、僕が、誰かに手を差し伸べる番だ!! 杏子ちゃんや美希ちゃんが、この深い海の中を彷徨っているのなら、僕が二人を助けなきゃ駄目なんだ!! 「──孤門さんっ!」 孤門一輝は、強い意志と共に、忘却の海レーテに飛び込んでいった。 その背中を目で追ったマミは、驚いて彼の名前を見た。周りが皆、一度そちらに目をやった。 忘却の海レーテ──は深く暗い闇の中で、そこを侵せば二度と出てこられなくなるであろう事は、誰の目にも明白だった。考えなしにここに飛び込もうとするなどいるはずもない。動物的本能が、そこに入るのを無意識的に拒絶するような場所だった。 しかし、彼らが目にする事ができたのは、孤門の足が、レーテの闇の中に飲み込まれていく瞬間であった。 【孤門一輝@ウルトラマンネクサス 再起不能】 ◇ 時系列順で読む Back 崩壊─ゲームオーバー─(8)Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) 投下順で読む Back 崩壊─ゲームオーバー─(8)Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 左翔太郎 Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 外道シンケンレッド Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 涼村暁 Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 石堀光彦 Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 桃園ラブ Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 蒼乃美希 Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 孤門一輝 Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 佐倉杏子 Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 巴マミ Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 花咲つぼみ Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 響良牙 Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 涼邑零 Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) レイジングハート Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 沖一也 Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 血祭ドウコク Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) ゴ・ガドル・バ Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 加頭順 Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) カイザーベリアル Next 崩壊─ゲームオーバー─(10) Back 崩壊─ゲームオーバー─(8) 高町ヴィヴィオ Next 崩壊─ゲームオーバー─(10)
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/609.html
崩壊─ゲームオーバー─(11) ◆gry038wOvE 『────みなさん、正午になりました。残った参加者は、7名。あなたたちの勝利です』 加頭順のホログラムが上空に現われ、音声がそこから発された。 ダークザギと戦う戦士たちの前に、その音が鳴り響く。 怪物が暴れ狂う音にかき消されるが、それが正午を超えた事によるメッセージだというのはすぐにわかった。 『勝利を祝し、あなたたちを────』 その時、──地上では、蒼乃美希と孤門一輝が、忘却の海レーテから帰還した。 そして、佐倉杏子のソウルジェムが彼女自身の身体へと帰り、彼女は目を覚ました。 しかし、そんな事にも気づかず、加頭は、その先の言葉を告げた。 『────強制送還します』 空が裂け、そこから、奇怪なブラックホールが誕生する。 地上で暴風が吹き荒れ、参加者たちを吸いこもうとしていた。 参加者たちを識別し、それを吸収しようとする奇怪なブラックホール。 それは外の異世界と繋がっている。遂に、あれだけ求めていた外の世界とのコネクトが始まったのだ。 ◇ 赤い光に導かれるまま、孤門一輝と蒼乃美希の前で、巨大化したダークザギが暴れていた。圧倒的に規格外に巨大であり、二人も威圧感を覚えていた。 彼らの周囲には、ブラックホールの影響による強風が渦巻いている。 「……」 孤門は、自らの手に、“それ”を握りしめた。 エボルトラスター。 姫矢准が、千樹憐が、佐倉杏子が、蒼乃美希が──、共に戦っていたウルトラマンの力が、今度は孤門のもとにあるという事だった。 彼らの戦いが──彼らの魂が、そのエボルトラスターの鼓動を感じて、孤門の胸の中に蘇った。 孤門は、美希の方を振り返った。 そんな孤門の様子を見て、美希は、何も言わずに頷いた。 ──孤門は、美希に任されたのだ。 ウルトラマンとして、このダークザギを倒す力を。 「絆……」 ならば……今、孤門一輝は戦う。 ダークザギを……石堀光彦を倒す為に。 「────ネクサス!!!!」 エボルトラスターが強く引き抜かれる。 空にエボルトラスターを掲げると、“赤”と“青”の光がその中に収束し、孤門の中でウルトラマンが覚醒する。 ────共に戦ってきたウルトラマンが、自分と共にある。 その初めての感覚に──、孤門は、不思議な暖かさを覚えていた。 「デュアアッ……!!」 Nexus……それは、受け継がれる光の絆。 ◇ 佐倉杏子が、目を覚ました。 そして、ふと、その瞬間、ダークザギと戦闘中であった仮面ライダージョーカーと、目が合った。 ダークザギに攻撃しながらも、杏子の肉体に傷がつかないよう、彼が常に気を配っていたらしい。 そんな状態で戦うなよ……と、杏子は思う。 「杏子……!」 ジョーカーは、思わずその事実に驚き、戦いを忘れて杏子のもとに駆け寄った。 それは嬉しいのだが、杏子はすぐに立ち上がった。 アカルンと、キュアパインのリンクルンが傍らに転がっている。 キュアパインのリンクルン──まるで、置手紙のように残されたそれを見て、杏子は一人の仲間の事を思い出した。 (マミは──) 彼女は、どこにもいなかった。 だが、彼女がどこにいるのか、杏子はもうわかっているような気がした……。 そうだ、彼女はもう……どこにもいない。 「良かった、杏子ぉっ! 目を覚まさないかと思っちまった……」 そんな切ない気分を味わっていた杏子であったが、目の前の黒い仮面ライダーは、思わず、杏子に抱きついていた。 孤門を信用していたとはいえ、いざ杏子がこうして目を覚ますとなると、嬉しくて仕方がないらしい。 心配してくれたのは嬉しかったが──、今は、杏子も大団円をしている場合じゃなかった。 「おい、こんな時にこんな所でくっつくなよ。それどころじゃないだろ……なんだよ、あのデカいのは」 わざと鬱陶しそうに突っぱねて、巨大なダークザギの方へと注意を向けた。 ジョーカーも、そこで、やっと我に返ったように、空を見上げた。巨人ダークザギと、仲間たちが戦っている真っ最中だった。ジョーカーもまたすぐに、あそこで仲間たちを助けなければならない。 「ああ……、あれは……ダークザギの、本当の姿だ……。俺たちの力をどう使っても敵わねえ……ガドルと沖さんはもうやられちまった」 「……そうか、あいつらが」 既にダークザギが犠牲者を出している事が杏子に伝えられる。 一也は勿論、ガドルの敗北も、杏子の中ではショックな事象に感じられた。 ダークザギは強い。それは、あの巨体を見ても明らかだが、仮にダークザギが同じ規格だったとして、誰がそのエネルギーに敵うだろうか。 「でもな、もう大丈夫だ」 まだ、彼が現れていない空を見上げながら、杏子は言った。ジョーカーはそんな杏子の姿を見て少し怪訝そうにした。彼女の横顔は、決して強がりじゃない自信に満ち溢れていた。 ──大丈夫だ。 ダークザギは確かに強い。──だが、確かに“光”は、繋がった。 杏子はソウルジェムを通じて、レーテの中でそれを感じていた。 「──銀色の巨人(ウルトラマン)は、負けない」 ◇ 「花よ輝け……ッ!!」 高く飛び上がったキュアブロッサムが、ダークザギの胸のエナジーコア目掛けて、攻撃を仕掛けようとしていた。 それでもまだ……石堀を救いたい──。そんな想いを胸にしながら、これで、ダークザギに対して通算三度目のピンクフォルテウェイブを放とうとしていた。 体力は限界で、花の力も既に、使い果たされようとしている。 (──石堀さん……っ!!) たとえ、拒む力が働いたとしても。 いつか、無限の力でダークザギに力を浄化してみせたいと。 だが、無情にも、そんなキュアブロッサムの姿が、ダークザギの手によって叩き落とされる。 ブロッサムの全身をダメージが駆け巡り、彼女の変身エネルギーを消耗し、キュアブロッサムの変身が解けた。花咲つぼみの姿が現れる。 ダメージも大きいが、体力の限界だったのだろう。 「つぼみぃ……っ!!!!!!」 思わず、彼女の本当の名を叫びながら、仮面ライダーエターナルが飛び上がる。 攻撃の為ではなく、キュアブロサムを空中で抱きとめる事で、地面に直接激突するのを避ける為であった。──変身が解けた状態の彼女が地面に激突すれば、確実に死んでしまう。 つぼみの身体は、上空でエターナルに包まれるが、勢いが強すぎたために、今度はエターナルの身体も纏めて地面に向けて突き飛ばされてしまった。 ──勿論、エターナルが下になれば助かるかもしれないが、二人が受けるダメージは大きい。それは、ほとんどこの戦いでの再起不能を意味する。 「くそっ……!!」 エターナルが叫び、激突の瞬間、目を瞑った。いくら良牙とはいえ、強いダメージが全身を襲うスピードである事は間違いないと悟ったのである。 歯を食いしばり、激突の衝撃に耐えようとする。 「くっ……──」 しかし……。 ──いつまで待っても、地面と激突する事はなかった。 「────…………」 それを奇妙に感じて、おそるおそる目を開けたエターナルが見たのは、──巨大な銀色の顔であった。 それは、こちらと目を合わせていた。──不思議な安心感が、響良牙の中に湧きあがってくる。 ここは、その顔を持つ巨人の掌の上だった。彼は、エターナルとつぼみをその手で優しく包んでいた。 二人は、その姿を、どこかで見た事がある。 「ウルトラマン──」 つぼみも、瞼を開いて、その顔に向けて呟いた。 そう、彼はウルトラマンだ……。杏子が変身していた戦士である。 だが、見た事があるというのは、決してウルトラマンの姿の話ではない。──そこにある、誰かの面影の事だった。 「孤門……なのか?」 エターナルは、こちらを見つめるウルトラマンの巨大な顔に、孤門一輝の面影を感じていた。 つぼみも同様に、それが孤門であると気づいていたが、驚きのあまり、閉口していたように見上げていた。 そして、次の瞬間、エターナルとキュアブロッサムの身体が浮き上がる。 「あっ……」 二人の身体は、ブラックホールによって吸い込まれようとしているのだ。 だが、二人を見て、ウルトラマンは頷いた。 後は任せろ、と。 ──響良牙と花咲つぼみが、この殺し合いを終えようとする中、孤門一輝の笑顔がそこに見つかった気がした。 「おいっ!」 良牙が、大きな声で孤門を呼びかけた。ネクサスが空を見上げる。 エターナルは、最後に、この場所で五代雄介や一条薫から教わった“サムズアップ”を見せて──空に消えていく。 良牙は、言葉ではなく、それを見せたかったのだ。 その想いは、ウルトラマンの──ウルトラマンネクサス、孤門一輝の胸で勇気へと変わる。 「デュアッ!!」 ウルトラマンネクサスは、目の前の敵──ダークザギと向き合い、構えた。 二人のサイズ差は大きくない。ようやく、同じ土俵に立って戦える相手同士になったというわけである。 そんなネクサスを見て、ダークザギは少なからず動揺していた。 「バカな……ッ! 奴は闇に沈んだはず……! あの闇の中から抜け出せるはずがない……! まして……人間ごときがッ!!!」 こうして、レーテを抜け出してくる者が現れるはずはない。 あの闇は人間は決して戻る事ができない絶望の淵にある。 その中で人は苦しみ、もがき、諦め、恐れ、絶望する。 そんな場所であるというのに──。 「────バーカ!! お前ごときが人間に勝とうなんざ、100万年早えんだよ!!!」 エターナルたちと共に空に浮きあがっていく、ガイアポロン──涼村暁が、ダークザギの横顔に向けて叫んだ。 その声は、確かにダークザギの耳にも聞こえた。 奴は、この状況でおどけようとはしていなかった。しかし、今は、それまでの暁の調子に戻ったようにも見える。 つまり、奴らは──勝利を、確信しているのだ。 「おのれ……っ!!」 ダークザギは、苛立ちを胸に秘め、駆けだす。そして、ネクサスめがけてパンチを放った。 アンファンスのネクサスなど、ダークザギどころかダークファウストですら葬れる相手だ。そう。まだ慌てる段階ではない。まだ、“奴”は復活していないのだ。 真の力を使っていないネクサスは、敵ではない。──ならば、真の力を使う前に撃ち倒すのみ。 「くっ……!」 ダークザギの一発のパンチで、ネクサスの身体は、大きく吹き飛ばされる。 ネクサスは、周囲の森を巻き込んで大きな尻もちをつき、大地を鳴動させる。 ──アンファンスの力は、確かに、ダークザギに立ち向かうには弱かった。 まだ、ウルトラマンの力を使い慣れていない孤門の変身であるせいもある。 だが── (────立て、孤門! お前は絶望の淵から何度も立ち上がった……だから俺も戦えた) その時、姫矢准の声が、ウルトラマンネクサスに呼びかけた。 姫矢がネクサスの中にいる……。姫矢が力をくれる……。 ネクサスは、痛みにも負けずに、地面を握りしめて立ち上がる。 (姫矢さん……!) そうだ……こんな所で倒れている場合じゃない。 諦めない……。 立って、奴と戦うんだ……。 「……聞こえたか? ザルバ……」 『ああ、あれは姫矢准って奴の声だ。──どうやら、あいつが奴に力を貸してるみたいだぜ』 空に昇っていく零とザルバは、そんな事を言い合った。 一見すると頼りのないウルトラマンであったが、彼は諦めない。 ここにいる誰もがそうであったが──、諦めずに立ち向かっていく勇気がある。 「フン……ッ!」 ────その瞬間。 ウルトラマンネクサスのエナジーコアが光り、姫矢准の想いが、はっきりとした形で力を貸した。 ──赤く熱い鼓動が、ネクサスをまさしく赤色に変える。 ネクサスは、ジュネッスの姿へと変身したのである。 ネクサスの力は確かに撮り戻っていく。 「……ッ!」 ダークザギも、立ち上がった彼の新しい姿に構えた。 ネクサスは、ジュネッスの命の色を全身で感じ、姫矢准が使っていた技を再現する。 大地に向けて、二つの腕を重ね、エネルギーをためて腕を十字に組む。 瞬間──、一瞬だけ、ネクサスの全身に、パッションレッドのラインが駆け巡る。 「ハァァァァ…………フゥッ!!!!!」 オーバレイシュトローム──、その光線が、ダークザギに向かっていった。 ダークザギは、それを両手で受け止めようとする。 ほんの一瞬だけ苦戦するが、ダークザギは、それをあっさりと打ち消した。 この程度では、まだ温い──! 「ハァッ……!」 「フンッ……!」 それでも、今度は肉弾戦でダークザギに立ち向かっていくネクサス。二人の距離は縮まり、ダークザギはネクサスに向けてパンチを放とうとしている。 ダークザギの拳を避け、脇腹に蹴りを叩きこんだネクサス。 だが、その直後、ダークザギの圧倒的な連撃を受け、ネクサスは、肩で息をするようになってしまう。やはり、肉弾戦には慣れていないのだ──。かと言って、光線はダークザギには通じない──。 「……チッ。嫌な姿を見せやがって」 ブラックホールに飲み込まれようとしている血祭ドウコクと外道シンケンレッドも、その姿を遠目で見ていた。 ドウコクが、それをどういう意味で言ったのかはわからない。 姫矢と同じジュネッスのネクサス、そして、一瞬だけ見せた杏子と同じジュネッスパッションのネクサスを嫌悪したのか、それとも、ダークザギに押されているネクサスに不快感を示したのか。 それはわからない。 ただ、生還という目的を前に、気を緩め、彼もいつも以上に思わぬ事を口にしてしまう状態であった事だけは、確かだった。 ◇ ベリアルたちによって“管理”された一つの世界──、孤門の故郷でもあったこの世界で、一人の青年・千樹憐がモニターを見上げていた。 街頭に設置された巨大モニターは殺し合いの様子を映していたが、それを率先して見ようとする者など、殆どいなかった。多くの人は、この世界の真実を知り、この殺し合いを目の当りにして、“管理”に屈し、死んだ目でされるがままの作業を行っている。 しかし、憐は、そんな中でも、管理者たちに屈せず、裏の世界で反乱するメンバーの一人として戦っていた。和倉英輔や平木詩織などのTLTの人間もこちらについている。 その日は、孤門たちの最後の戦いを目にするべく、隠れて町に出ていた。 そして、今、孤門がウルトラマンとなって戦っているのを、憐は今、見ている。 (そうだ、孤門……俺も孤門のお陰で……、こうして管理なんかに負けずに、運命にだって逆らって、俺は生きてる! だから……) 憐は今日、この世界で一人の少年に出会ったのだ。 まるで憐と同じような境遇である。彼も先天的に不治の疾患を患い、それによって病弱でありながらも、パイロットを目指しているらしい。 彼も諦めなかった。彼も管理には負けなかった。彼も前を見ている。 憐は、そんな彼の姿に勇気づけられている。支えられている。 「……あれは、パパと見た銀色の流星だ」 その少年──真木継夢は、今、憐の隣で言った。 管理されている人間たちも、呆然とモニターを見つめていた。 もしかしたら、勝てるかもしれない……。 誰もがそんな想いを少なからず持っていた。 風向きが変わっている気がする。 「────負けるなッ!! 孤門!!!! 俺も孤門のお陰で戦えた!!!! ウルトラマンとして!!!!」 憐の声が街頭で響いた。人々の目が、そこに注目した。 それは、町中に管理者の目がある中で、自らの正体を明かしてしまうような物だった。 孤門一輝が千樹憐の名前を出したのを見ている者もいる。──そして、憐は今、この世界ではお尋ね者なのだ。 しかし、その直後に、継夢が叫んだ。 「がんばれぇぇぇぇぇぇぇっ!!!! ウルトラマン!!!!!!!」 それは、二人による明確な反逆だった。 管理された世界の時が止まる──。彼らは何者だろう──、と、誰もが思った。 しかし、やがて、どよめいた周囲は、そんな事を気にしなくなり、彼らの想いがどんな物であるのかを胸の中に思った。 そして、彼らも次々と声を張り上げた。 「そうだ、負けるなっ!! ウルトラマン!!!」 「がんばれーっ、ウルトラマン!!!」 「行けぇっ!! ウルトラマン!!!」 今、この世界で、管理の力を越える人々の反乱が起こったのだ。 彼らの管理を任された財団Xたちは、それを鎮静化しようとするが、そんな邪魔は全く、人々には通らなかった。 ましてや、財団Xの中にさえ、別の組織による管理を快く思わない者が何人もいたようで、それを止めようともせず、無言の反逆をする者がいるという有様だ。 騒ぎの波紋はだんだんと大きくなっていく。 人々はだんだんと、ウルトラマンを大声で応援するような形で結託していった。 「……人間の力は、イッシーが──ダークザギが思っていたほど弱くないみたいですね」 「ああ。俺たち人間を敵に回した事こそが……奴の、そして、管理者たちの最大の誤算だ!」 憐や継夢と同じく町に出ていた平木詩織と和倉英輔も、その光景を見て、そう言った。 この世界の人間たちの希望が、時空を超えてウルトラマンに届いていく。 それはウルトラマンだけの力ではなく────人とウルトラマンとが支え合う事で、初めて生まれる力であった。 ◇ 孤門に憐の声が届いた。 時空さえも超えて、憐の“青”がウルトラマンネクサスに力を貸す。 ネクサスの身体が、光に包まれる。 「──ハァッ!!!」 姫矢の赤いジュネッスの姿だったネクサスは、時空を超えて届いた力を借りて、今度は憐のジュネッスブルーに変身する──。 新米ウルトラマンに、新しい力を貸す為に──。 それは、この場にいる者たちは初めて見る光だった。 「命の光……生きる者たち全てが違う、光の色……」 「ぶきっ!」 参加者ではなく、“支給品”であるレイジングハート・エクセリオンは、子豚を抱いて、空へと自力で飛んでいた。 彼らは、ブラックホールに自ら向かわなければ、元の世界に帰る事が出来ないのだ。 しかし、このまましばらく、彼の戦いを見ていたいと、その姿を空中に留まらせている。 「デュア……ッ!!」 孤門に力を貸すのは、姫矢准や千樹憐──そして、ここで生還している参加者たちだけではなかった。 かつて、ダークザギに操られていた溝呂木眞也も、その声を孤門に届かせる。 ────孤門、俺の過ちを正してくれ。 ────人の心は弱く、世界は闇で満ちている。 ────だから人はたやすくそれに呑まれてしまう。 ────だがな……。 溝呂木は、その先は何も言わなかった。 だが、──孤門は、恋人を殺した溝呂木眞也の罪を、許そうと思う。 孤門もまた、闇にその身を落とそうとした事がある。 人間は弱い。 だが……だが── 孤門がかつて尊敬した先輩──西条凪の声が、孤門を助ける。 ────ダークザギ、お前は私たちには勝てない!! ────私たちは決して諦めたりしないから……!! ────そして、 ────人と人との絆は、光そのものだから……!! 「シャァッ……!!」 ウルトラマンの光と共に吸収された、キュアベリーの光が駆け巡り、一瞬だけ、蒼乃美希だけが持つ色を──ネクサスは、現出した。 ネクサスの右腕のアローアームドネクサスにエナジーコアの光が投影され、アローが形成される。 光の弓──アローレイ・シュトロームに、美希の想いが現出した剣が重なり、今誕生した新たなる技がダークザギを狙う。 オーバーアローレイ・シュトローム。 不死鳥の矢が、ダークザギに迫っていた。 「ウウガァッ……!!」 だが、その一撃を、ダークザギは片手で跳ね返してしまう。 流れ弾となり、地面に1エリア分ほどの大きなクレーターが出来た。──それを見て、そこにいる者たちは、決してネクサスの攻撃が弱かったわけではない事を理解する。 遠くで、爆発音が遅れて聞こえた。 「全然効いてねえのか……!? でも……それなのに……負ける気がしねえ……ッ!!」 仮面ライダージョーカーがその姿を見て感服する。 彼は──左翔太郎は、以前にも、銀色の巨人に助けられた。 あの時、思わず「銀色の巨人」と言ってしまった翔太郎は間違っていなかったのだ。 そう、杏子が言った通り──ウルトラマンは負けない。 ウルトラマンは、仮面ライダーと同じくらいに強い。 「まだだっ! まだ……まだウルトラマンは戦える……ッ!! ウルトラマンは、私たちの絆がある限り、もっと強くなる……ッ!!」 「私たちも、孤門さんの優しさと、強さに何度も助けられてきた……だから、──」 佐倉杏子と蒼乃美希が、空へと登り、ブラックホールの中へ消えていった。 左翔太郎もまた、ブラックホールに吸い込まれていく。 ────がんばれぇぇぇぇぇぇぇっ!!!! ウルトラマン!!!!!!! だが、そんな声が、あのブラックホールが繋いでいる異世界から洩れてきた。 ウルトラマンを応援している歓声が外の世界から聞こえてくる。 その祈りが、その希望が、その声が、その力が──ウルトラマンを強くする。 絆が、光に変わっていく……。 「あれは……」 ジュネッスブルーのウルトラマンネクサスが、全身を光に包み、真の姿へと変身する。 彼の背中に羽が生える。 赤と青の力が重なり、やがて、その姿に銀色の光が灯される。 ダークザギが最も恐れた戦士が、今、人々の祈りを経て爆誕した。 「ハァァァァァァァァ……ッ!!!!!!! ハァッ!!!!!!!」 ──光の戦士の究極の姿、ウルトラマンノア 最強のウルトラマンの姿へと、今、孤門一輝が変身したのである。 ブラックホールの中で、血祭ドウコクも、外道シンケンレッドも、涼村暁も、涼邑零も、レイジングハートも、響良牙も、花咲つぼみも、鯖から生まれた子豚も、佐倉杏子も、左翔太郎も、蒼乃美希も、その輝きを目にする事になった。 その姿を前に、ダークザギは──強い興奮を覚えた。 奴が……奴が復活してしまった。 ダークザギが、最も恐れて、最も憎んでいた敵が。 「────ウグァァァァァッァァァァァァァァァァァォッッッッ!!!!!!!!!」 ダークザギは、気づけばウルトラマンノアへと駆け出していた。 実は、ダークザギは、ウルトラマンノアのコピーとして作られた巨人である。──あるいは、それはダークプリキュアや相羽シンヤと同様、彼もまた、「コピー」である事へのコンプレックスを、このノアに対して、常に感じ続けていたのだ。 その苦しみが、その苦悩が──ダークザギを、冷酷な破壊神にしたのである。そして、彼は、ダークプリキュアやシンヤのようにそれに打ち勝つ事はできなかったのだ。 「ハァッ!!」 ダークザギは、ウルトラマンノアに向かっていくが、伝説の神が現れた瞬間、二人の形成は完全に逆転していた。 ダークザギのパンチはノアに回避され、逆にノアがダークザギに蹴りの一撃を見舞う。 ウルトラマンノアのキックは、ダークザギを数十メートル後方まで吹き飛ばす。──これまでとは全く逆の、圧倒的な孤門の優勢。 「グァァ……ッ!!」 ダークザギが反撃しようとするが、ノアは悠然とそれを避けてしまう。 ノアは、まるでひらりと身をかわすように、ダークザギの攻撃を全て回避し続けた。 次の瞬間には、ノアのパンチやキックがザギの身体を傷つける。ネクサスの攻撃に比べて、なんと強い──。 そして────。 「シュッ…………ハァァァァァァァァァ…………」 ウルトラマンノアは、左腕にエナジーコアのエネルギーを蓄積した。 ダークザギは、ノアの攻撃を連続して受けた事で、反撃をする事ができなかった。 ノアは、一周回転して、ふらついているダークザギに、1兆度の炎を纏ったパンチ──ノア・インフェルノを叩きこんだ。 ノアの腕からダークザギの身体に向かって、火柱が上がる。 「オアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 ダークザギの身体は、火柱に押されて、島の向こうに吹っ飛んでいく。 ──やがて、雲を超える。 ────大気圏を超える。 ──────そして、遂にダークザギの身体は、果てしない宇宙空間まで吹き飛んでいった。 ノア・インフェルノの力がそこで消える。ザギもノアの攻撃に打ち勝ったのだ。 ダークザギは、真っ黒な宇宙から、その惑星にいるウルトラマンノアを見下ろしていた。 ウルトラマンノアも、宇宙にいる彼を睨んでいた。 「「──ハァァァァァァァァァァァァァァァァ」」 ──ウルトラマンノアが、エナジーコアからのエネルギーを受け、腕を組み、ライトニング・ノアを放つ。 ──ダークザギもまた、ノアに向け、最終必殺光線ライトニング・ザギを放つ。 二つの光線は、この数千キロの果てしない距離を超えて真っ直ぐに敵に向かっていき、その中点でぶつかった。 宇宙空間で、二つの光線が激突。 ザギのライトニング・ザギが一瞬だけライトニング・ノアを圧倒した。 だが── 「闇を恐れることなく、乗り越えていく力……それこそが────僕たちの強さだ!!」 ウルトラマンノアの力は、圧倒的であった。 ノアが更に力を込めると、ライトニング・ザギのパワーは、ライトニング・ノアの希望の力に押し負けていく。 そして──ダークザギの身体は、次の瞬間にライトニング・ノアに飲み込まれていった。 ◇ ライトニング・ノアの力に飲み込まれる最中──ザギの目には、殺し合いが行われたあの星が、遠くに輝いて見えた。 幾つもの星々が輝く宇宙の果てで、かつて、“来訪者”たちの希望として作られたダークザギは、思った事がある。 ──この宇宙に二度と苦しみが生まれない為には、何を成せばいいのだろう。 ──永遠の平和とは何だろう。 そうだった……。彼もまだ、その時は一人の平和を守る戦士として、宇宙の平和の事を真っ直ぐに考えていたはずだった。 M80星雲。──かつて、そのある星で、ダークザギは、人々の為に戦っていた。 ビーストの脅威に立ち向かう“来訪者”たちが、ビーストを倒したウルトラマンノアを作りだした人工生命ウルティノイド──その名が、「ザギ」。 ビーストと戦い、来訪者たちを助け、平和を守る──それが、ザギの使命だった。 彼らの命令を聞き、彼らの為に生きる事こそ、ザギの誇り。 彼は、来訪者たちの思う通りに生きてきた。 やがて、ウルティノイドの中に自我が芽生え、自分で考える事が出来るようになった。 すると、今度は、来訪者たちの為に戦うウルティノイド・ザギの中にも、ウルトラマンノアの模造品として作られた自分自身への苦悩が、どこからともなく湧き出た。 どれだけビーストを倒しても、人々が求めるのは、ザギではなくノアの力である事に、彼は気づいてしまったのだ。 自分は誰にも求められていない。「ノア」の代わりに作られ、「ノア」の代わりに生きる。 自分の命とは何だろう。 自分の存在意義とは何なのだろう。 自分は何の為に生まれ、何の為に生きるのだろう。 ザギはそれでも戦い続けた。しかし、ビーストと戦っていく中で、争い合う人々や、不安に駆られ、絶望に飲み込まれ、他者を傷つける者たちを何人も目にする事になった──。 そして、その戦いを超えていくうちに、彼は、結論した。 ──「永遠の平和」とは「虚無」!! ──心が存在しなくなれば、生命が存在しなくなれば、苦しみも悲しみも消え失せる……!! ゆえに、彼は、いつしか、来訪者たちの英雄から、宇宙の脅威へとなり下がり、落ちぶれていく事になった。ビーストを使役し、人間を利用し、あらゆる手段を使って宇宙の全てを滅ぼす悪の戦士となってしまった。 自分は、ノアの代わりにはならない。 ノアの“敵”となればいい。ノアの“逆”になればいい。 ノアが誰かを救うならば、ザギは何かを壊せばいい。 それによって、“虚無”の中で世界に平和を齎せばいい……。 そうすれば、争いもなくなる。殺し合いも、死も、死に至る生の存在もなくなるのだ。 だが。 宇宙を全て無に返し、全ての命を奪う事が──いかに、残酷な事なのか。 それは、平和と呼ぶには、生ける者たちにとって、最も無責任な行為であると、彼はまだ知らなかった。 永遠の命を持っているが為に、彼は、“虚無”が、彼には正確にはわからなかったのだ。 そして今。 遠く、宇宙の深淵に消え、この世界の外に弾かれ出され、「虚無」の世界に落ち込んでいく時────彼は思った。 (消えたくない……!! 俺は……、俺は、こんな所で……!!) 虚無になってしまえば、苦しみが消えるが、喜びも消える。 自分自身の何もかもが消えていく。 この想いも。この、“消えたくない”という気持ちも。 だが── 「グァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!!!!!!!」 俺の喜び……ふと思ったが、それは何だったのだろう。 そう、ダークザギの頭に何かが過った時── ──この宇宙ので、巨大な爆発が起きた。 ダークザギの身体が、ライトニング・ノアの光に包まれた瞬間だった。 彼の身体が崩壊していく。 体はばらばらになり、その中にあった意識も、ノアの光の中に消えてしまう。 「 」 ……何もない宇宙の果てで、ダークザギの意識は、虚無の世界に途絶えた。 虚無に飲み込まれた時、彼は、自分自身の存在意義を考え、答えに辿り着く喜びを得る事も──そして、それを感じさせてくれた何かに気づく事さえできなくなってしまったのだ。 いや、今、それに気づいたとしても、遅すぎたのだが──せめて、最後に一瞬でも気づく事が出来れば、彼自身は何かに救われる事ができたかもしれない。 しかし、それが出来なくなるのが、“虚無”。 暗黒の破壊神が、ずっと求めてきたものだった──。 【石堀光彦/ダークザギ@ウルトラマンネクサス 死亡】 【残り10人】 ◇ 遠いいつか、“彼女”が言ったのを、孤門一輝は思い出した……。 「────私、信じてる。孤門くんなら、きっと守ってくれるって……」 ◇ 時系列順で読む Back 崩壊─ゲームオーバー─(10)Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) 投下順で読む Back 崩壊─ゲームオーバー─(10)Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 左翔太郎 Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 外道シンケンレッド Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 涼村暁 Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 石堀光彦 Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 桃園ラブ Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 蒼乃美希 Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 孤門一輝 Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 佐倉杏子 Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 巴マミ Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 花咲つぼみ Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 響良牙 Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 涼邑零 Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) レイジングハート Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 沖一也 Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 血祭ドウコク Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) ゴ・ガドル・バ Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 加頭順 Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) カイザーベリアル Next 崩壊─ゲームオーバー─(12) Back 崩壊─ゲームオーバー─(10) 高町ヴィヴィオ Next 崩壊─ゲームオーバー─(12)
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/353.html
ピーチと二号! 生まれる救世の光!!(後編) ◆LuuKRM2PEg 【1日目/昼前】 【E-2/森】 【石堀光彦@ウルトラマンネクサス】 [状態]:健康、仮面ライダーアクセルに変身中、凪を抱えている。 [装備]:Kar98k(korrosion弾6/8)@仮面ライダーSPIRITS、アクセルドライバー@仮面ライダーW、ガイアメモリ(アクセル、トライアル)@仮面ライダーW、エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW [道具]:支給品一式、メモレイサー@ウルトラマンネクサス、110のシャンプー@らんま1/2 [思考] 基本:今は「石堀光彦」として行動する 0:凪を守りながら涼村暁と黒岩省吾を保護する。 1:周囲を利用し、加頭を倒し元の世界に戻る 2:今、凪に死なれると計画が狂う…… 3:凪と暁と黒岩と共に森を通って市街地に向かう 4:孤門、姫矢、つぼみの仲間を捜す 5:都合の悪い記憶はメモレイサーで消去する 6:加頭の「願いを叶える」という言葉が信用できるとわかった場合は…… [備考] ※参戦時期は姫矢編の後半ごろ。 ※今の彼にダークザギへの変身能力があるかは不明です(原作ではネクサスの光を変換する必要があります)。 ※ハトプリ勢、およびフレプリ勢についてプリキュア関連の秘密も含めて聞きました ※良牙が発した気柱を目撃しています。 ※つぼみからプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について聞きました ※殺し合いの技術提供にTLTが関わっている可能性を考えています 【西条凪@ウルトラマンネクサス】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、気絶中 [装備]:コルトパイソン+執行実包(2/6) [道具]:支給品一式、ガイアメモリ説明書、.357マグナム弾(執行実包×18、神経断裂弾@仮面ライダークウガ×8)、照井竜のランダム支給品1~3個、相羽ミユキのランダム支給品1~3個、テッククリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード [思考] 基本:人に害を成す人外の存在を全滅させる。 0:…………(気絶中) 1:一文字隼人と共に暗黒騎士キバを倒す。 2:状況に応じて、仮面ライダーアクセルに変身して戦う。 3:孤門、石堀と合流する。 4:相手が人間であろうと向かってくる相手には容赦しない。 5:五代雄介、美樹さやかの事を危険な存在と判断したら殺す。 [備考] ※参戦時期はEpisode.31の後で、Episode.32の前 ※さやかは完全に死んでいて、助けることはできないと思っています ※まどか、マミは溝呂木に殺害された可能性があると思っています 【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】 [状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、汗だく [装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン、スカルメモリ&ロストドライバー@仮面ライダーW [道具]:支給品一式(ペットボトル一本消費)、首輪(ほむら) [思考] 基本:願いを叶えるために優勝する………………(?) 1:石堀、黒岩と行動し、黒岩が変な事をしないよう見張る。 2:何故黒岩が自分のことを知っているのか疑問。 3:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。 4:ラブちゃん、大丈夫なのか……? [備考] ※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。 つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない) ※ほむら経由で魔法少女の事についてある程度聞きました。但し、まどかの名前等知り合いの事については全く聞いていません。 ※黒岩はダークザイドなのではないかと思っています。 【黒岩省吾@超光戦士シャンゼリオン】 [状態]:健康 [装備]:デリンジャー(2/2) [道具]:支給品一式、ランダム支給品0~2 [思考] 基本:周囲を利用して加頭を倒す 1:あくまで東京都知事として紳士的に行動する 2:涼村暁との決着をつける ……つもり、なのだが…… 3:人間でもダークザイドでもない存在を警戒 4:元の世界に帰って地盤を固めたら、ラビリンスやブラックホールの力を手に入れる 5:井坂とティアナが何を考えていようとも、最終的には自分が勝つ。 6:桃園ラブに関しては、再び自分の前に現れるのならまた利用する。 7:涼村暁が石堀光彦に妙なことを口走らないよう、警戒する。 [備考] ※参戦時期は東京都知事になってから東京国皇帝となるまでのどこか。 ※NEVER、砂漠の使徒、テッカマンはダークザイドと同等又はそれ以上の生命力の持主と推測しています。(ラブ達の戦いを見て確信を深めました) ※ラブからプリキュアやラビリンス、ブラックホール、魔法少女や魔女などについて話を聞きました 。 ※暁は何らかの理由で頭が完全におかしくなったのだと思っています。 ◆ 仮面ライダー二号は暗黒騎士キバの斬撃をかわし続けながら、ひたすら反撃の機会を窺っている。石堀光彦も彼の上官である西条凪も逃がした今、一人で戦わなければならない。 もっとも、それ自体は慣れているのだが相手が悪すぎた。がんがんじいの偽物な割には頑丈で素早く、しかも剣術の技量が異様なまでに高い。 認めるのは反吐が出るが、キバは自分より強かった。これまでの戦いでも、沖一也や石堀達の乱入が無ければ確実に負けている。加えて今は二度にも渡るキバとの戦いや、タイガーロイドの襲撃による疲労が完全に癒えてない状態だった。 無論、それに諦めて死を選ぶ二号ではない。石堀や一也達と再び出会うと約束したのだし、何よりも散ってしまった者達に報いることはできなかった。 (それにあいつらだって……特に本郷なら、どんなハンデを背負ったとしても負けなかった。俺がそのくらいのことをしなくて、どうする!) この島のどこかで、誰かを守るために死んでいったはずの本郷猛に約束を交わしたのだから、倒れるつもりは毛頭ない。キバによって与えられた刀傷が痛むも、死んでしまった者達に比べたら何てこともなかった。 キバが持つ漆黒の剣による太刀筋を、二号は横に跳んで避ける。それにより、名も知らぬ植物もろとも地面に傷が刻まれていった。こんな小さな命すらも奪われたことに、少しだけ良心の呵責を感じながらも赤い拳を振るう。 その顔面にクリーンヒットするが、やはりキバは揺るがない。続くように反対側の手で殴りつけるが、結果は同じだった。 埒が明かないと思いながら二号がバックステップを取るのと同時に、キバの斬撃が繰り出されて胸板にまたしても傷が刻まれる。ダメージ自体はそこまで酷くないが、かなり蓄積されているので、これ以上受けると流石に危険だった。 「中々粘るようだが……そろそろ終わらせて貰うぞ、仮面ライダー二号」 そして、そんな二号の焦りを見透かしたかのようにキバが嘲りの言葉をぶつけてくる。 猛獣を模した仮面の下で、黒装束を纏った名も知らぬ男は笑っているに違いない。それに怒りを覚えるも、明らかな挑発に惑わされる二号ではなかった。 猛る感情をすぐに抑えつけて、仮面の下から静かにキバを睨みつける。 「それはこっちの台詞だ……いい加減、しつこいんだよ」 「そうか」 二号は対抗するように煽るも、キバはただ頷くだけだった。 その反応を見た二号は、つまらねえ奴だなと心中で呟く。直後、キバは漆黒の刃に右手を添えてきた。 「ならば、終わらせてやろう」 殺意に満ちた宣言と共に、掌と刃を擦れ合わせる。すると灼熱が噴出するのを見て、二号は思わず身構えた。 それは先程、仮面ライダーアクセルに変身した凪を軽く吹き飛ばした一撃に用いられた炎。その威力は彼女を戦闘不能にまで追い込むほどだから、かなり高いはずだった。 しかしそれでも、最後まで諦めるわけにはいかない。例え勝てないとしても、石堀達を逃がすための時間稼ぎになるのなら、それで結構。 (一か八か、ライダーキックをやってみるか!) 相手が必殺技でかかってくるなら、こっちも必殺技で抵抗するだけ。キックと剣の激突で身体が吹き飛ぶ可能性もあるだろうが、それに怖がっていたら仮面ライダーをやってられない。 剣を構えるキバと睨み合いながら、二号は全身に力を込めながら腰を落とす。そして、キバが疾走するタイミングを見計らって飛び上がろうと考えた、その直後だった。 「プリキュア! ラブ・サンシャイィィィィィィンッ!」 少女の叫び声が二号の耳を打ち、眩い桃色の光が太陽と混じりながら周囲を照らす。 こちらを両断しようとしていたはずのキバは振り向くと同時に構えを解いて、背後に飛び退いた。それにより、キバの立っていた場所を桃色の光線が一瞬で横切っていく。 必殺技を受けずに済んだのは幸いだろうが、二号はその喜びを嚙み締めることはできなかった。 「プリキュア……だと?」 聞き覚えのある単語を反芻しながら、二号は光が発射された方に振り向く。見ると、ここから数メートル離れた先から、輝いて見えるような金色でツインテールを結んで、鮮やかな桃と白を基調にした衣服を着ている少女が近づいていた。 二号はその煌びやかな格好に、デジャブを抱いている。洋服や飾りの形状こそは違うが、雰囲気は何処となくキュアブロッサムを思い出させた。つまり彼女こそ、キュアブロッサムの仲間であるプリキュアの一人と考えて、間違いない。 そう推測した二号の隣に、現れた少女は隣に駆け寄ってくる。その真摯な表情からは敵意が感じられないので、やはり味方だと考えて間違いはなかった。 「大丈夫ですか、仮面ライダー二号!?」 「ああ……君はもしかして、キュアブロッサムと同じプリキュアなのか?」 「はい、あたしはキュアピーチです! 石堀さんから、あなたがあの一文字隼人さんだってことも聞いてます!」 「なるほど」 力強くて眩い笑顔を前に、二号は頷く。 記憶が正しければ、キュアピーチとは桃園ラブという少女が変身するプリキュアのはずだった。それに、つぼみ達よりも少し先輩らしい。 そんな彼女が助っ人に現れるのは嬉しいが、同時に少しだけ心苦しくなる。恐らく彼女は石堀の制止を振り切ってまでわざわざ駆けつけてくれたのだろうが、キバに勝てるかどうかは別だった。 無論、アクセルから与えられたダメージは残っているだろうが、それでも奴の戦意は微塵にも衰えない。 「色々と話はあるけどな、まずはあの野郎を何とかするか? キュアピーチ、奴はかなり強い……気を引き締めて行こうぜ」 だが、二号は怖気づくことなどしなかった。 ここで少しでも震えては石堀達の元に戻れないし、何よりもこうして現れたキュアピーチの想いを裏切るだけ。彼女は自分を信頼しているのだから、それに全力で答えなければならなかった。 キュアピーチと力を合わせてキバを倒し、石堀達に無事であるとこの身で証明する。そして、ラブとつぼみを再会させて殺し合いを止めるまでは絶対に死ねなかった。 「勿論です! あいつを倒してから、みんなの所に戻って……それからつぼみちゃん達と合流しましょう!」 「ああ!」 活力に満ちた言葉をぶつけあった後、二人は同時に暗黒騎士キバの方に振り向く。 その漆黒はおぞましさを感じさせるほどに濃く、太陽の光を容赦なく塗り潰さんとする雰囲気を醸し出していた。 「愚かな……例え何人増えようとも、我が暗闇の前では塵に等しい。あの男と共に逃げていれば、命が延びただろうに……」 そして当のキバは相変わらず気取ったような態度で、見下すような口を利いている。凄まじい殺気が感じられるが、二号はあまり脅威と感じない。 念の為、キュアピーチに目を呉れてみたが、キバの邪念を前にしても怯えてるようには見えなかった。やはり多くの修羅場を切り抜けてきたのだから、この程度で怖気づくこともないのだろう。 キュアピーチへの頼もしさを感じながら、二号はキバに向かって走り始めた。 当然ながらキバも疾走してきて、その剣を横に振るってくるが二号は少し屈んだことで回避し、そこから燃え上がる炎の如く赤い拳を漆黒の装甲に叩き込む。 打撃音が鈍く響いた瞬間、一瞬で腕を引いて反対側の拳で胴体を殴った。そこからマシンガンのように連打をするが、キバもただ黙って受けている訳ではなく、体制を少しずらしながら回避し、そこから得物を振るおうと腕を掲げてくるのを二号は見る。 「やああああああぁぁぁぁっ!」 直後、キバの一閃を避けることに神経を集中させた二号の鼓膜に、キュアピーチの叫び声が響いた。 視界の外から、飛び出てくるかのようにキュアピーチが姿を現して、そのまま勢いよくキバの肉体を殴りつける。その衝撃によって鳴った音は凄まじく、キバは微かによろめいた。 そこからキュアピーチは二号と入れ替わるかのように進撃して、しなやかな右足で蹴りを繰り出す。彼女の一撃は見事、キバの脇腹に命中した。 彼女が素早く足を引いた後、キバはその手に握る剣を斜め下に振るう。だがキュアピーチは迫り来る斬撃を、横に跳ぶことで軽々と回避した。 中学生程度の華奢な体形に似合わず、その身体能力はかなりの物かもしれない。きっと、BADANの怪人相手でも引けを取らないだろう。もしも彼女やキュアブロッサムが自分達の世界にいてくれたら、きっと後輩ライダーやSPIRITS部隊の大きな力となっていたかもしれない。 (っと、こんなことを考えても仕方がない……あいつらにはあいつらの世界で役目がある。俺達の世界の問題を、あいつらに押し付けてどうするんだ) そう自らを叱責しながら、二号はいつもの変身ポーズを構えてライダーベルトのパワースイッチを起動させる。 カチリ、と改造された肉体に埋め込まれたパーツが稼働する音が、耳に響いた。 「ライダー……パワー!」 そんな二号の叫びに答えるかのようにライダーベルトの風車が回転し、力が身体の奥底から溢れ出てくる。 これまでの戦いでは一対一を強いられていたので余裕がなかったが、今回はキュアピーチという名の強い味方がいた。戦えるからとはいえ、ただの女子中学生に任せるのは気が引ける。だがそんなのを気にしている場合ではないし、何よりも考えていたら彼女に失礼だ。 そんなキュアピーチは今、キバが振るう刃より放たれる漆黒のかまいたちを、左右に跳んで一生懸命に避けている。しかしその量と速度は凄まじく、僅かとはいえ肌が確実に切り裂かれていた。 しかも標的から避けられた衝撃波は周囲に激突した後、轟音と共に大爆発を起こす。そんな攻撃をまともに受けたら、いくら彼女でも危ないはずだ。 そう危機感を覚えた二号は急いで地面を蹴り、全身全霊を込めて疾走する。数歩進んだ後、キバがキュアピーチから振り向くのと同時に彼は飛び上がり、宙で前転をした。 「ライダー……キイィィィィィィィック!」 雄叫びと共に蹴りの体制に入った二号は、眼下に立つキバが掌で刃を滑らせるのを見る。キバが握る得物の刀身から漏れる灼熱は、そのまま暗黒色の鎧を巻き込んでいった。 どうやら、奴は確実にこちらを潰しにかかっているようだと、二号は思う。必殺技同士の勝負に出るというなら、望むところだ。 どの道、決着を付けなければいけないのだから、奴を完膚なきまでに叩きのめさなければ気が済まない。可能性は低いだろうが、今はキュアピーチという頼れる仲間がそばにいるのだから、負けられなかった。 やがてキバも対抗するように跳躍して、全ての存在を燃やし尽くしかねない灼熱を纏った刃を、勢いよく振るう。 そうして、仮面ライダー二号の蹴りと暗黒騎士キバの一閃は空中で衝突し、再び大爆発を起こした。 ◆ 「仮面ライダーッ!」 数メートル上空で燃え上がる爆炎の熱が肌に突き刺さる中、キュアピーチは頼れる先輩の名前を呼ぶ。 無差別に広がる爆風は大気をピリピリと振動させて、灼熱は地面に飛び散った。あんな爆発に巻き込まれたら、どんなに強い戦士だろうと無事でいられるとは到底思えない。 強い不安が胸中に広がっていった瞬間、爆発の中から仮面ライダー二号が飛び出してきて、そのまま落下した。 勢いよく地面を転がる彼の元にキュアピーチは駆けつけて、その身体を抱える。 「大丈夫ですか、仮面ライダー!?」 「何、大丈夫だ……わざわざ、悪いな」 仮面の下から聞こえてくる声は震えていて、まるで蚊が鳴いているようだった。 本人は大丈夫だなんていっているが、全然そんな風には見えない。どう考えたって、戦えるような状態ではなかった。 一刻も早く二号をここから逃がしたい。キュアピーチがそう思うのと同時に、背後から大地を踏み締める足音が聞こえてきた。また、凄まじい殺気が背筋に突き刺さるのを感じて、彼女は振り向く。 大輪の炎から生まれた熱によって陽炎が起きて、大気がゆらゆらと揺れる中で暗黒の騎士が近づいてくるのを見た。その狼を模した禍々しい仮面からは、射抜くような鋭い視線が感じられる。 キバの歩みは威風堂々としていて、未だに戦えるということを実に物語っていた。 「キ、キバ……!」 「震えることはない、すぐに永遠の闇へ送ってくれる」 冷酷無常な言葉をぶつけながら剣を構えるキバに、キュアピーチは戦慄しながらも睨み返す。 ほんの少しだけとはいえ戦闘を繰り広げたが、キバはとても強いとキュアピーチは察していた。その実力はあのテッカマンランスと同等、あるいは遥かに超えているかもしれない。仮に二号が戦える状態だとしても、勝てる可能性は低かった。 それでもここで戦わなければ多くの人が犠牲になるだろうから、キュアピーチは戦おうと決意する。どんな相手だろうと、諦めなければきっと負けないはずだから。 「テメェ……言ってくれるじゃねえか……」 だが、キュアピーチの耳に二号の震える声が響いたことで、その決意は一気に揺らぐ。 この腕の中にいる彼は、今すぐにでも休ませなければいけない。でも、彼一人だけでは何処かに移動するなんてできる訳がなかった。 今の二号を放置して戦いに出たら、キバの手にかかってもおかしくない。 『どうか、一文字のことを頼んだぞ。彼はこんな所で死んでいい男じゃないからな』 直後、石堀の願いがキュアピーチの脳裏に蘇る。 彼に無理を言ってまでここに来たのは、何のためか? こんな戦いを打ち破ってくれる仲間の一文字隼人を助けるためだ。それに石堀は、二人揃って戻ってくることを望んでいる。 ここで無理をしてまでキバと戦うのは、彼の願いではない。一文字の命を救えるのは、キュアピーチ一人だけしかいなかった。 だからキュアピーチはゆっくりと二号の身体を地面に下ろして、立ち上がる。そのタイミングを見計らったかのように、ピックルンが姿を現した。 「お、おい……」 「ちょっとだけ待ってください、すぐに終わらせますから」 一瞬だけ微笑んだ後、キュアピーチは再びキバに睨むような目を向けて、一気に走る。 同じようにキバも突貫してくるが、彼女はそれに構わずピックルンを手に取ってリンクルンに挿し込んだ。そこからリンクルンを横に回したことでピーチロッドが現れたので、キュアピーチはそれを掴む。 徐々に距離を詰めながら、彼女はピーチロッドのスイッチを指で流してメロディを奏でた。ハート形の宝石が輝きを放つと同時にキバは一閃するが、キュアピーチが少し屈んだことで、頭の上を通り過ぎるだけに終わる。 「プリキュア! ラブサンシャイン・フレーーッシュ!」 その直後、彼女はキバの胴体を目掛けて腕を真っ直ぐに伸ばして、強く叫んだ。 すると桃色の輝きがキバの巨体を飲み込み、轟音と共に突き飛ばしていく。宝石から開放された光は、一気にハートの形となった。 しかし、キュアピーチは決して油断してはいない。ピーチロッドを握る腕から、こちらを弾き飛ばすかのような凄まじい圧力が伝わってきたからだ。あの光を吹き飛ばそうとキバは足掻いていると、キュアピーチは推測する。 このままではその圧倒的な膂力によって、光が打ち破られてもおかしくない。だからこそキュアピーチは、エネルギーを増幅させることをせずに後ろを振り向いて、二号の元に駆け寄った。 「おいキュアピーチ、何をしてる!?」 「すみません仮面ライダー、しっかり掴まってください!」 投げかけられた疑問に答えることをせず、キュアピーチはデイバッグと二号の身体を抱えて全力疾走をする。普段なら持てる訳がないが、プリキュアの力さえあれば可能だった。 敵から逃げ出していけないのは、キュアピーチだって理解している。しかし、必殺技で動きが止まった隙を付いて逃げる以外、二号を助ける方法が思いつかなかった。 みんなを助けられるであろう、力強い戦士を救うためにも、キュアピーチは走り続ける。二号や、彼の仲間達が再び平和な日々を過ごせることを信じて。 ◆ この肉体を拘束する光はそこまで力強くないが、あまりにも不愉快な眩さで満ちていた。 魔戒騎士……それも、かつての師匠である冴島大河が選ばれた黄金騎士を思い出させてしまう。まるで、この期に及んで大河の亡霊が邪魔をしているかのようだと、暗黒騎士キバは思った。 だがそんな錯覚に囚われているわけにもいかない。 「……フンッ!」 キバは全身に力を込めて、ハートの光を一気に吹き飛ばした。 そのまま彼は戦いによって荒れ果てたエリアを見渡すが、既に誰もいない。石堀光彦達は勿論のこと、仮面ライダー二号とキュアピーチの姿も見えなかった。 恐らくキュアピーチは攻撃のためでなく、足止めを目的にしてあの光を放ったのだろう。仮面ライダーと同じ、別世界に存在する戦士も所詮はただの軟弱者ということか。 「僕ともあろう者が、ここまでしてやられるとはな……」 しかしそれでも、キバは屈辱を感じている。奴らの術中にまんまと嵌って、挙句の果てに見失ってしまった。戦いに勝ったとはいえ、この手で止めを刺せないなんてあってはならなかった。 尤も、逃げられたのならばいつまでも拘る訳にもいかない。再び相見える時が来れば殺せばいいし、そうでないのなら勝手に死ぬのを待てばいいだけ。 この戦場には、まだ大勢の参加者が残っている。だからいつまでも、特定の相手だけと戦っている訳にもいかない。一文字隼人を潰すことに尽力しすぎて、他を忘れては不測の事態が起こる可能性もあった。 とにかく今は数人相手の戦いで少し消耗したから、休んで体力を回復させなければならない。そう判断した彼は鎧を構成するデスメタルを解体して、バラゴの姿に戻る。 生身を晒して軽く息を吐いた彼は、一文字隼人が移動に使っていたビートチェイサー2000に手を触れた。奴らは皆、同行者の存在があったからこそ、この乗り物を見捨てて撤退している。そのせいか、鍵も残っていた。 魔導馬・雷剛に比べればその速度や性能は圧倒的に劣るが、この場では召喚ができない。だから、代用品が手に入ったのは有難かった。 (やはりこの場では力が抑えられている……首輪の影響か?) 主催者達によって、自らに架せられた首輪を撫でながらバラゴは思案に耽る。 二度に渡って烈火炎装を放ったが、仮面ライダーアクセルに変身した西条凪という女や、一文字の命を奪うことはできなかった。それにこれまでの戦いでも閻魔斬光剣を召喚しようとしたが何も起こらず、黒炎剣だけでの戦いを強いられている。 大方、加頭順やサラマンダー達が何らかの下らない仕掛けを施しているに違いない。そうでなければ、殺し合いの根底を崩される恐れがあるからだ。首輪の効果か、それともこの島全体に参加者全員の力を抑える結界でも張られているのか…… だが、ここで考えていても仕方がない。今は体力の回復を待ちながら、次の行動を考えることに集中すればいいだけだ。 不意に、バラゴはデイバッグから取り出した地図を広げる。その中央には、彼にとって非常に関心を引く建物が描かれていた。 冴島邸。かつて大河と共に暮らしていた、今のバラゴにとっては忘却の彼方に葬りさりたい記憶が眠る屋敷だ。 恐らくこれは、主催者が用意した偽者だろう。だから、カオルやゴンザもこの屋敷にはいない。何故、こんな偽の屋敷を作るのかという疑問が芽生えたが、すぐに振り払う。 どうせ、主催者達も皆殺しにするのだから、深く考えても意味はなかった。 「冴島鋼牙……」 そしてマップを仕舞い込んだ後、名簿の中に一際気になる名前があったのを、バラゴは思い出す。あの冴島大河の息子である、冴島鋼牙もこの殺し合いに巻き込まれていた。 風の噂によると、奴は大河の遺志を継いで黄金騎士となったらしい。ならば、この手で闇に葬る必要があった。 無論、それは実際に遭遇してからの話。放送で呼ばれなかったのでまだ生きているだろうが、この戦いで死ぬ可能性もある。そうなれば、メシア降臨の邪魔者は一人残らず消えるだろうが、過度な期待はしない。 いくらこの地に仮面ライダーやプリキュアのような戦士がいるからとはいえ、鋼牙とて魔戒騎士の一人。簡単に殺されることはないはずだ。 もしも冴島邸に行けば、鋼牙と戦うことになるのか? そう取りとめのないことを考えながら、バラゴはひたすら身体を休めていた。 【1日目/昼前】 【D-2/荒れ地】 ※戦いの影響によって荒れ地となっています。 【バラゴ@牙狼─GARO─】 [状態]:胸部に強打の痛み、ダメージ(中)、疲労(中)、顔は本来の十字傷の姿に [装備]:ペンダント、魔戒剣、ボーチャードピストル(0/8)@牙狼 [道具]:支給品一式×3、ランダム支給品0~2、冴子のランダム支給品1~3、顔を変容させる秘薬?、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、『ハートキャッチプリキュア!』の漫画@ハートキャッチプリキュア! 、ビートチェイサー2000@仮面ライダークウガ [思考] 基本:参加者全員と加頭を殺害し、元の世界で目的を遂行する 0:今は身体を休めて、その後にビートチェイサー2000を使って移動する。 1:冴島鋼牙と出会ったら、この手で葬る。 2:今のところ顔を変容させる予定はない 3:石堀に本能的な警戒(微々たるものです) 4:一文字隼人とキュアピーチは再び出会うことがあれば、この手で殺す。(ただし、深追いはしない) 5:冴島邸を目指すか……? [備考] ※参戦時期は第23話でカオルに正体を明かす前。 ※顔を変容させる秘薬を所持しているかは不明。 ※開始時の一件で一文字のことは認識しているので、本郷についても認識していると思われます。 ※冴子と速水の支給品はまだ確認していません。 ※つぼみ達の話を立ち聞きしていました そのためプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について知りました ※雷剛や閻魔斬光剣の召喚はできません。 バラゴはこれを制限の影響だと考えています。 ◆ 暗黒騎士キバに追い詰められたが、キュアピーチの手によって仮面ライダー二号は何とか戦場から離脱することに成功する。 既に変身を解いて一文字隼人の姿に戻った後、木に凭れかかる様に身体を休めていた。全身の至る所から激痛が走る中、彼は考える。 俺ばかりに救いの手が差し伸べられるのに、どうして本郷は死ななければならないのか? あいつのように地獄を見てきた男こそ、救いが必要なのに。 (……もしかしたら、本郷の奴が向こうから祈ってくれてるのかもな。俺達が生きてくれるようにって) とはいえ、運命を憎むつもりは毛頭なかった。 こうして生かされている以上、最後の最後まで戦い抜かなければならない。沖一也、石堀光彦、花咲つぼみ、西条凪、桃園ラブ……命を救ってくれた彼らのためにも、殺し合いを絶対に止めなければならなかった。 ぼんやりと考える一文字の頬に、冷たくて柔らかい感触が走る。振り向くと、そこにはキュアピーチの変身を解いた桃園ラブと言う少女が、白いタオルを当ててくる姿があった。 「大丈夫ですか、一文字さん?」 「悪いな、何から何まで……俺なら大丈夫だ」 心配そうな表情を浮かべる少女に、笑顔を返すことしかできない。できる限り力を込めるが、やはり戦いの疲労は誤魔化せなかった。 彼女に連れられて南を一直線に進んだが、仲間達の姿は見えない。石堀や凪、それにラブの同行者である涼村暁と黒岩省吾という男達とは再会できなかった。 だが、嘆いていても仕方がない。こうして生きていられたのだがら、市街地を目指せばいつかまた再会できるかもしれないと、信じるしかなかった。 「それとラブ、お前は無茶しすぎだ……俺を助けに来てくれたのは嬉しいけどよ、石堀の忠告を無視するなって」 「うっ……ごめんなさい」 「別に怒ってねえよ」 ほんの少しだけ咎めたことでばつの悪そうな表情で俯くラブの頭に、一文字は軽く手を乗せてそのまま撫でる。 「確かに俺達はその力を精一杯、使わなければいけない時が来る。けどな、俺達には帰りを待っている人達がいるってことも忘れるなよ……まあ、俺が言えた義理じゃないけどな」 そう、穏やかに告げた。 仮面ライダーもプリキュアも平和を守る戦士だが、後ろには自分達を心配する人がいる。ガモン共和国でBADANに襲われた真美や子どもたちだって、悪と戦っている自分の帰りを待っているはずだ。 平和を守ることだけを考えすぎて、彼らと二度と会えなくなるなんてあってはならない。 「わかりました……でも、一文字さんもどうか無理をしないでください」 「わかってるって」 そうやって軽く頷いた一文字は、隣にいるラブがようやく笑ってくれるのを見る。 やはり、子どもの笑顔は何物にも勝る最高の宝だなと、桃園ラブを前に一文字隼人は思った。 【1日目/昼前】 【F-2】 【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、精神的疲労(中)、罪悪感と自己嫌悪と悲しみ、決意 [装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア! [道具]:支給品一式×2、カオルちゃん特製のドーナツ(少し減っている)@フレッシュプリキュア!、毛布×2@現実、ペットボトルに入った紅茶@現実、巴マミの首輪、巴マミのランダム支給品1~2 基本:誰も犠牲にしたりしない、みんなの幸せを守る。 1:今は一文字さんを守りながら休む。 2:マミさんの遺志を継いで、みんなの明日を守るために戦う。 3:プリキュアのみんなと出来るだけ早く再会したい。 4:マミさんの知り合いを助けたい。もしも会えたらマミさんの事を伝えて謝る。 5:犠牲にされた人達(堂本剛三、フリッツ、クモジャキー、巴マミ、放送で呼ばれた参加者達)への罪悪感。 6:ダークプリキュアとテッカマンランス(本名は知らない)と暗黒騎士キバ(本名は知らない)には気をつける。 7:どうして、サラマンダー男爵が……? 8:石堀さん達、大丈夫かな……? [備考] ※本編終了後からの参戦です。 ※花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの存在を知っています。 ※クモジャキーとダークプリキュアに関しては詳しい所までは知りません。 ※加頭順の背後にフュージョン、ボトム、ブラックホールのような存在がいると考えています。 ※放送で現れたサラマンダー男爵は偽者だと考えています。 【一文字隼人@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、胸部に斬痕、左腕が全体的に麻痺 [装備]:なし [道具]:支給品一式、姫矢の戦場写真@ウルトラマンネクサス、ランダム支給品0~2(確認済み) [思考] 基本:仮面ライダーとして正義を果たす 0:今は身体を休める。 1:ラブと一緒に石堀達を探しながら市街地を目指す 2:他の仮面ライダーを捜す 3:暗黒騎士キバを倒す(但しキバは永くないと推測) 4:もしも村雨が記憶を求めてゲームに乗ってるなら止める 5:元の世界に帰ったらバダンを叩き潰す 6:この場において仮面ライダーの力は通用するのか……? [備考] ※参戦時期は第3部以降。 ※この場に参加している人物の多くが特殊な能力な持主だと推測しています。 ※加頭やドーパントに新たな悪の組織の予感を感じています(今のところ、バダンとは別と考えている)。 ※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました ※18時までに市街地エリアに向かう予定です。 ※村エリアから南の道を進む予定です。(途中、どのルートを進むかは後続の書き手さんにお任せします) ※つぼみからプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について聞きました フレプリ勢、ハトプリ勢の参加者の話も聞いています ※石堀の世界について、ウルトラマンやビーストも含めある程度聞きました(ザギとして知っている情報は一切聞いていません) 時系列順で読む Back ピーチと二号! 生まれる救世の光!!(前編)Next Predestination 投下順で読む Back ピーチと二号! 生まれる救世の光!!(前編)Next Predestination Back ピーチと二号! 生まれる救世の光!!(前編) 桃園ラブ Next 目指せ!ハッピーエンド Back ピーチと二号! 生まれる救世の光!!(前編) 涼村暁 Next あざ笑う闇 Back ピーチと二号! 生まれる救世の光!!(前編) 黒岩省吾 Next あざ笑う闇 Back ピーチと二号! 生まれる救世の光!!(前編) 石堀光彦 Next あざ笑う闇 Back ピーチと二号! 生まれる救世の光!!(前編) 西条凪 Next あざ笑う闇 Back ピーチと二号! 生まれる救世の光!!(前編) 一文字隼人 Next 目指せ!ハッピーエンド Back ピーチと二号! 生まれる救世の光!!(前編) バラゴ Next 牙狼~SAVIOR IN THE DARK~
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/594.html
らんまの心臓(後編) ◆gry038wOvE 天道あかねという少女の人生では、何故か小学校の時、クラスの出し物で「ロミオとジュリエット」を演じる事になっていた。 その度に男勝りな彼女が演じるのは常に男役──ロミオであった。 少女期のショートカットヘアも、男子顔負けの運動神経も、元来の美しい顔立ちも、全て王子のイメージに誰よりも合致していたからだ。 ロミオ役を奪われた男子生徒たちも、女と恋愛悲劇を演じる事になるジュリエット役も女子生徒も、何も不満は言わなかった。むしろ、これ以上ない配役とさえ思っていたようだ。 ただ一人、あかねだけは誰にも言えない文句があった。 あかねはふつうの女の子だ。 自分が演じたいのはロミオではなく、ジュリエット。 王子とのロマンチックな恋をして、最期にはあるすれ違いが生む悲劇とともに散るヒロインだった。 しかし、クラスメイトが寄せる期待と信頼と喜びを裏切れず、結局ロミオとして舞台に立ち、思いの外好評を受けてしまった。──その好評はずっと重荷だった。 乙女の憧れを持って何が悪い。 格闘家の家に生まれて、姉二人が継がない道場を継ごうとして、毎日稽古をしているけど、本当は、少しは純情可憐な女性としての魅力も見てほしいのだ。 ジュリエットになれば、それを発揮できる。 ジュリエットを、演じたかった。 ようやく、ジュリエット役に抜擢する事になったのは高校の時だ。 その時、ロミオの役どころを射止めたのは────。 ◇ キュアブロッサムは、あかねに向けて無数の突きを放った。 一秒間に何十発も繰り出されるパンチは、少なくとも一般的な人間のレベルでは到底可視できないだろう。 だが、伝説の道着は違った。五感を持たない物体とは思えなかった。 あかねの体を包括する伝説の道着は、「気」を読み、攻撃を回避する術を知っているのだ。あかねの体をキュアブロッサムの攻撃から守るべく、見事にそれらを紙一重でかわしていく。 「はあっ!!」 逆に、あかねからのローキックが入る。キュアブロッサムは跳んで回避しようとしたが、あまりの速さに間に合わない。 キュアブロッサムの膝にあかねの鋭いキックが炸裂し、空中から引き落とされる。あかねの両足は動ける状態ではなかったが、伝説の道着による強制力だった。 道着自体が意思を持ち、あかねの体を操作する事も可能である。 「くっ……!」 ガードを固めたキュアブロッサムの上半身に向けて次の回し蹴り。半円を描いた蹴りをまともに受けた左腕が綻んでガードが崩れた。虚空に投げ出された左腕を見逃さず、あかねはそれを掴む。 すると、キュアブロッサムの腕が微塵も動かない。 驚異的というしかない腕力であった。少し掴まれただけでも、もう痛みに声が出そうになる。──そして。 「はぁっ!!」 キュアブロッサムの体が空高く投げ飛ばされた。 ビルの九階ほどの高さ──地上数十メートル、全ての樹冠を上から見下ろせるほどの高度である。 そして、その高度から一気に重力に引っ張られる。 真下の地面は、切断された木々で足場が非常に悪い。運が悪ければ突き刺さり、運が良ければ木葉のクッションに包まれる。 いずれにせよ、プリキュアの身体能力では空中で体制を立て直して地上で衝撃もなく着地するのは容易だ。この滞空時間ならばまだ何とかなる。 むしろ好機だ。 相手には跳躍するほどの体力はない。空中落下とともに技を決めれば、逃げ場がない。 「──花よ輝け!」 遠距離型の攻撃は特に相手を狙いやすくなっている。 ブロッサムタクトが構えられた腕は、地上にいるあかねに狙いを定める。 空中にいる以上、定位置はないので、焦点は全く合わないが、指定範囲内に敵を包む「予測」に神経を研ぎ澄ませた。 明鏡止水。 空にいながら、目を瞑り、風を感じて敵の位置を補足する──。 三、二、一──。 おそらく技を放つ最後のチャンスがブロッサムの中に到来する。 そのタイミングを確信して、ブロッサムは両眼を開いた。 「プリキュア・ピンクフォルテウェイブ!!」 この場で何度となく放ったその技が地上めがけて発動する。 大道克己もダークプリキュアも人魚の魔女も……この技が少しでも心を鎮めてくれたのだ。 これは、人間本来の持つ善と悪とを、正しいバランスに引き戻す力である。 何らかの外敵要因が「悪」に塗り替えた人間の心を元に戻すセラピーにもなりえるのが彼女たちの技であった。 ……だが、今まで、つぼみは結局のところ、誰の命も救えていない。 たとえ心が救われたとしても、みんなもう死んでしまったではないか。 助けたい。 それ以外の終わりだってあるのだと教えたい。 安らかな気持ちで逝ければいいなんていうわけじゃない。 たとえ救われたとしても、それはまだスタートラインに立っただけなのだ。 「はああああああああああああっっっ!!!」 空中から降り注いだ花のエネルギーは、あかね目掛けて直撃する。 あかねは、ふと、ある一人の少女を思い出した。 キュアベリー。 この場で、確か──いつ出会ったのかさえも曖昧だが、──一度、会っている。 彼女の技を受けた時、身体的ダメージ以上の致命的大打撃を受けたのだった。 精神的汚染が緩和され、ある意味負担は小さくなるはずだが、それはあかねにとっては何の得にもならない。問題は、自らの力の一部である「ガイアメモリ」の変身も解除される事である。 戦う術を得なければ、この場では生き残れない。 「くっ!」 伝説の道着は、あかねの上半身を庇うように両腕を体の前で組んだ。 敵方の正体不明の攻撃は、高速で接近──。あかねの上半身から全身を包み、大地からその余波を小さく波立たせるまで一瞬だった。 ぼふっ、と風が圧縮されて爆ぜて消えたような音が鳴った。 あかねの体へと到達した花のパワーは、桜の香りを放ちながらあかねの体に纏わりつく。 鼻からではなく、全身から花の香りが入り込んでくるようだった。 「くっ……!!」 直撃を受けながらも、まるで見えない圧力を跳ね返すように両腕を開いていく。 ブロッサムがこちらに向けて落下するのが見える。 あかねは、伝説の道着の力を借りてより強く、この見えない何かを押し開けようとした。 力を込める。集中力を高め、より鋭敏に。 「ぐあっ……!!」 あかねの力がピークに達し、全身から抜けると同時に、ピンクフォルテウェイブは解除され、キュアブロッサムの方にその残滓が跳ね返された。 あかねの勝利である。 「!?」 それは、キュアブロッサムにとっては、大道克己との戦いの時に見た光景と同じだった。 キュアブロッサムは空中で唾を飲み込んだ。 邪でありながら当人は譲る事のできない強い意思──それが、プリキュアの浄化技さえも拒絶し、剛力で捻じ伏せてしまう。 あかねの想いは、まさしくそれだったというのか。 「──そんな!!」 「甘いのよっあんたは!! はあっ!!」 そして、キュアブロッサムが気づいた時には一歩遅かった。 あかねが上空に向けて突き上げた拳が、キュアブロッサムの腹部に激突する。 「くっ……」 まるで突き刺さるような一撃だ。 重力の力と、下から拳を突き上げたあかねと伝説の道着の力──それらに挟まれ、ブロッサムが一瞬、息をする事ができなくなる。 キュアブロッサムの口から、微量の唾と汗が飛んだ。拳の上を一度バウンドして、またその上に落ちた。 「げふっ……げふっ……」 あかねは、咽かえっているキュアブロッサムを乱雑に地面に下ろした。 下ろした、というよりも落としたという方が的を射ているかもしれない。 キュアブロッサムは、腹部を抑えながら、力なく倒れこむ。息が整うまで、しばらくの時間を要した。まともに喋る事も、痛みを絶叫で表現する事も少しできなかった。 苦渋に歪んだ顔で、己の力不足を呪った。 「……トドメを刺してあげるわ」 あかねは、ふと自らの近くにある人間の死体があるのに気が付いた。 美樹さやか──先ほど、あかねが不意を突いて殺せた彼らの仲間である。 ライジングタイタンソードへと物質変換したのは、「裏正」という刀であった。 二つに折れた刃の刃先が、まだこの木の影にいるさやかの遺体から見える。柄がどこに消えてしまったのかはわからないが、木々に紛れて見えないだけだろう。 あかねは、少し手を伸ばして、それを掴みとった。遺体から引き抜いて、つぼみを殺すのに使おうとした。そう、この刃先ならばまだ「機械」の「破壊」に使える。 刃を手で直接握っても、あかねは痛みなど感じなかった。 ここにあの刀が落ちているとは、都合が良い──これで殺しやすくなった、とあかねは思っただろう。 血が右手を真っ赤に染め上げるが、あかねはまるで気にせずに、目の前の獲物を見た。 「つぼみっ……!」 良牙がそこに駆け寄った。瓦礫の山とでも言うべきその木々の残骸の間を、潜り抜けてやっとつぼみの元に辿り着く。 キュアブロッサムの変身は解除され、つぼみは下着のような神秘的に光るワンピースに体を包んでいた。 良牙は、その傍らのあかねの方に目をやった。 「はぁ……はぁ……もう邪魔はさせないわよ……私は……私は……」 とはいえ、あかねも大分参っているようだった。 しかし、まずい。つぼみにトドメを指そうとしている。 あかねにとってはつぼみも厄介な邪魔者の一人に違いない。 邪魔だからと言って、つぼみを排除しかねない。 あかねはその体制に近づいている。裏正を振り上げ、寝転ぶつぼみに近寄っていく。 「……壊れろッッ!!」 死という言葉を使わないのはなにゆえか──それは良牙もつぼみも知る由もないが、あかねはまさしくつぼみに「死ね」と言おうとしていた。 それが願望だった。 今、目の前にいる参加者をどうするべきか。全て、一刻も早く殺し尽くし、あかねは願いを叶えて元の世界に帰らなければならない。 だから、首を刺し貫いたらすぐに、つぼみにはその生命活動を停止してもらいたかった。 時間がない。──昼までなのだ。 どんな敵がいたとしても、泳がせるなどという方法は使えない。 見つけ次第、どんな手を使ってでも最短で殺し、あかねは元の世界に願いを叶えてから帰る。日常に回帰し、大事な人とまた過ごす。 そのために。 そのために。 そのために。 (……でも、────) ────大事な人がわからない。 ◇ あかねは、確実につぼみを殺そうとしている。狙うのはおそらく頸動脈。このままいけば、良牙は親しい人の血しぶきを目の当りにする事になる。 良牙を襲う焦燥感。 目が敵を睨み、腕が型を作る。 「くっ……獅子咆哮──」 やめるんだ、の一言よりも攻撃による制止が出てしまった事は良牙自身も意外に思っただろう。 それは、良牙がこの一日、殺し合いの中で「誰かを守る」という事の為に力を使う意義を覚えたからだ。良牙はつぼみを守るために、あかねを攻撃しようとしていた。 そこに個人的な優先順位などもはや関係なかった。 弱く正しい者を守り、それを脅かす者を倒す──その公式が、良牙の中にもいつの間にか出来上がっていたのだ。 あかねを攻撃しようとした事を一瞬でも後悔するのは、ある出来事によって、獅子咆哮弾を使うのを躊躇してからの話である。 「──ぶきっ!!」 ──そう、発動しようとした直後にその声が聞こえたのが、良牙が動きを止めた理由であった。 それは人間の声ではなかった。高音で幼く、何かを訴えていても理解できない言葉で喚く小さな動物だった。 そう、かつて、鯖が変身したのと似通った外見の黒い鯖豚だ。黒い子豚に変身していた頃の良牙と瓜二つである(正直、豚なんてどれも同じだが)。一応、デイパックに仕舞い込んでいたはずが、戦闘中にいつの間にか抜け出してしまったらしい。 この惨状の中で、かの子豚は倒れ伏しているつぼみに寄り添おうとしている。 「な……っ」 あかねの動きが、一瞬止まった。 その光景はあまりにも不自然であった。まるで時間が止まったかのように、突然にあかねは引いた腕を止めたのである。 前に突き出してつぼみの頸動脈をかききろうとしていたあの腕が、よりにもよって、あの子豚によって突如止められたのである。 つぼみも、何故相手が止まっているのかわからないようだった。 「豚さん……っ。逃げて……」 声にならない声で必死にそう訴えるつぼみだが、その言葉は無邪気な鯖豚には届かない。 この鯖豚は、おそらくただ、デイパックから抜け出した後に一帯を迷って、近くにいた主の元に歩いていっただけである。 だから、そう……。 もはや、そこに来れば巻き添えで死んでしまう事などこの鯖豚は知る由もないという事である。 「くそっ……!」 あの子豚もつぼみも、このままでは危ないと良牙は咄嗟に思った。 あかねが止まっているうちに、良牙はそこに助け出なければならない。 この木の足場を飛び越えて、目の前を妨害する木の枝を手刀で切り裂いて、良牙は一心にそこに向かって走っていく。 「無事でいろ……っ!」 ──だが、そんな中で、ふと何かを思い出した。 響良牙が、天道あかねを好きになった時。──それは、初めて会った時の事ではない。 確か、雨の夜の話。あれを思い出すのはセンチメンタリズムだ。 子豚に変身した良牙を、あかねは抱きしめた。周囲に反発する良牙を抱きしめ、赤子のように可愛がったのだ。 あかねはペットとして、良牙が変身した黒い子豚に「Pちゃん」と名付けたのだ。 (待て……) あの時──。 そうだ、あの時──。 「そうか……! だから、あかねさんは……!!」 あかねは思い出しているのだ。 いや、思い出すとまではいかなくても、本能がその黒い子豚に反応を示している。 動きを止めたのは、彼女が小動物を殺そうという発想に至らないからに違いない。 きっと。 きっと、全て忘れていても、あかねは弱いものには優しいあかねのままなのだ。 「……Pちゃんだ、あかねさん!! その子豚はPちゃんだ!!」 あかねも、つぼみも、子豚も、良牙の方に一斉に視線を集中させた。 良牙が何の事を言っているのか、誰もわからなかったかもしれない。 ただ、あかねはその拙い言葉の響きに何かを感じた。 自分の手元にあるガイアメモリにも似通った名前がついているはずである。 しかし、「P」だ。その言葉に何かを感じる。P……Pig。 「P……ちゃん……?」 「そうだ、Pちゃんだ!! あかねさんが大事に育ててくれた、バカで間抜けで方向音痴な子豚の名前だよ!!」 「P……」 そう言われた時、あかねは今のままの体制を維持できなくなった。強烈な頭痛がするとともに、咄嗟に頭を抱え、倒れこんだ。伝説の道着も、この時は主の異変に焦った事だろう。 シャワールーム。大事な人。黒い子豚。────。 飛竜昇天破。獅子咆哮弾。呪泉郷。────。 あのバンダナの男。高速回転するブーメラン。ロミオとジュリエット。────。 「Pちゃん……」 連鎖するキーワードたち。ここまで、あかねに何か異変を齎してきた言葉たちであった。 一体、それがあかねにとって欠落している何を示しているのか、それがうっすらと浮かんでは、また消えていく。 何かが掴めそうで掴めないもどかしさが、いっそう頭痛の芽となって脳髄に根を張るような痛みを起こす。 「あああっ……あああっ…………!!!!!」 あかねがどれほど頭を抱えても、その記憶は探り当てられない。だからいっそう苦しいのだ。 記憶のどこかには存在するが、蓋を閉じられていたり、脳内のどこかを飛んでいたり、ずっとあやふやにあかねの中で跋扈している。それを掴みとろうとするが、一切掴みとれない。 時折出てきては消える何か。それが……。 「まだ思い出せないっていうなら、いくらでも大事な事を教えてやる!! 俺の名前は響良牙だ!! あかねさんの友達で、●●とは前の学校からのダチだ!! 何度も一緒に遊んだじゃないか!! 俺は何があっても忘れないぜ!!」 言葉があかねを刺激するなら、それを止ませる必要はない。 いくらでも浴びせる。あかねの苦しむ顔がその瞳に映っても。 瞳はそらさない。自分が最も見たくなかったあかねの苦しい姿を、目に焼き付け、それでももっと苦しませる。 きっと、これを語り続けなければならないのだ。 「ずっと前にあかねさんの髪を切ってしまった事はずっと後悔してるんだ!! 何度でも謝る、何度殴られたって構わない!! 思い出してくれよ、あかねさん!! 憎い俺を殴れよ!!」 だが、その言葉は決定的な一撃とは、ならなかった……。 あかねはうずくまって頭を押さえるだけで、どんな言葉も心に届かない。 しかし、黒い子豚を見た時のように強い衝撃を受けてくれない。良牙自身の事を何度教えても、あかねが強く反応してくれる事はなかった。 「Pちゃん……Pちゃん……」 あかねは必死で小刻みに首を横に振っている。 「くそ……駄目なのか……」 一瞬、挫けそうになる。 あかねは、まだ何かに怯えるように頭を抱え続けるだけなのだ。 それが、ただただ苦痛だった。良牙自身の事を一切覚えておらず、あろうことか乱馬さえも記憶の中から外れているのかもしれないと、良牙は感じた。 そんな話が良牙にとってショックでないはずがない。 そもそも、Pちゃんの話には反応したが、良牙の話は一切反応を示さないのだ。 何度聞いても、何度叫んでも、何度届かせようとしても。 良牙の言葉そのものが、まるであかねの耳をすり抜けていくようだった。 そして──── 「…………いや、わかった。わかっちまった。くそ…………」 ────良牙は、理解してしまった。 それは、一途に一人の女性を想い続けた男にとっては、残酷で、信じたくない現実だったかもしれない。 いや、何度もそれをあかねは言葉にしていたが、良牙は受け入れなかったのだ。 ふと、思ったのだ。 あかねがこれから何も思い出してくれないのは、もしかすると、 良牙の存在があかねの中で、良牙が思っているほど大きくないからかもしれない──と。 良牙が伝えようと思っている事は、あかねにとっては聞くほどの事ではないつまらない話題でしかないのではないか。 考えてみれば、これまでも、何度も何度も言われてきた。 お友達。お友達。お友達。────。 そう、あかねにとっては、良牙はきっと、「お友達」以上の何者でもない、人生の中の脇役たちの一人だ。即ち、取るに足らない存在なのだ。 良牙があかねを誰よりも大事に思っている一方で、あかねは良牙を大勢いるお友達の一人にしか思っていない。──乱馬が死んで殺し合いに乗る彼女だが、もし良牙が死んで彼女は殺し合いに乗っただろうか? あかねに良牙を殺したいほど憎む事ができるか。 あかねに良牙を抱きしめたいという感情はあるのか。 そう、最初から彼女が大事に思っていたのは、許嫁の乱馬ただ一人。良牙には、そこに付け入る隙など最初からなかったのだ。 良牙にとって、良牙としての思い出とPちゃんとしての思い出が同じ物でも、あかねにとっては全く別物だ。黒い子豚の方が、あかねとずっと一緒にいた。 そう、それが、一人の男に向けられた、青春の真実だった。 「…………そういう事、か」 男の目から、一筋の涙が垂れた。──それはごく個人的な愛情が、この場でもまだ胸の中に残っていたという証拠だ。 俯いた横顔で、良牙の前髪はその真っ赤な瞳を隠した。 つぼみは、その横顔を見て、何かを感じる事ができただろうか。 「────あかねさん、ごめん」 小さく、良牙は口元でそうかたどった。声には出なかった。 喉の奥で掠れて、まるで神にでも謝罪するかのようにそう呟いたのだ。 当人に訊かれてはならない謝罪の言葉だった。 この場であかねを説得するのに、何よりも効果的な一言があり、それがあかねに謝らなければならないような言葉なのだと、良牙は気づいたのだった。 すぐに、良牙は大きく息を吸いこんだ。──生涯、絶対にあかねに向けて口にするはずがないと思っていた口汚い言葉を、良牙は自分の記憶の中から探り当てた。 少し躊躇ったが、一気にその言葉を吐き出す事になった。 「────かわいくねえっ!!」 ──その言葉が、不意にあかねの動きを止めた。 あかねは、何かに気づいたように良牙の方に体を向けた。 つぼみが、驚いたように良牙を見つめた。良牙の目からは、涙などとうに枯れていた。大口を開けて、良牙はあかねに対して何度でも言葉をかける。 「色気がねえっ!!」 ふと、あかねの脳裏に、「痛み」ではない何かが過った。 それは、確かにその言葉によって、するすると記憶の蓋が溶解していく感覚だった。 「凶暴!! 不器用!! ずん胴!! まぬけっ!!」 あかねは、一つ一つの言葉を聞くたびに、別の人間の顔と声がオーバーラップするのを感じた。良牙の顔と声を塗り替えて、おさげ髪でもっと少年っぽい声の男が乱入する。 良牙は、全ての言葉を大声で叫ぶと、俯いて、拳を硬く握った。 やはり、だ。 この言葉が、あかねの記憶を呼び戻してしまった。 認めたくなかった。しかし、そんな小さなプライドを捨てて、良牙は叫んだ。 本当にその言葉を浴びせるべき男はもういない。だが、その男の代わりに。 「忘れたとは言わせない! あなたが……俺たちが好きだった……早乙女乱馬という男の言葉だ! あの下品で馬鹿な奴があなたに浴びせた最低の言葉たちだ!! だが、あかねさんと乱馬にとってはこの一つ一つの言葉が思い出なんだ!! 忘れちゃいけない!!」 早乙女乱馬。 聞き覚えのある名前──いや、ごく近くにいた、知っている人。 もう世界中を探してもどこにもいない。 天道道の食卓で居候の分際で大量の飯を食べて、学校ではサボリも遅刻も早退も当たり前の劣等生で、そのくせ戦いだけは強くてあかねがどうやっても敵わない、あの早乙女乱馬という男──。 「……!」 あかねの胸中に、そんな記憶の暖かさが戻ってくるのが感じられた。 不意に思い出すだけでも胸中が少し暖かくなってしまう。 不思議と涙が溢れた。 もう何も戻らない──そんな確信があかねの胸に再び過る。 「忘れないでくれ、あかねさん……俺の事は忘れても、乱馬の事だけは…………」 男の声は、涙まじりで、震えて聞き取りづらかった。 俯いている男の、震える拳を、あかねは確かに遠目に見た。おそらくは、泣かないと決意して、それを一瞬で破った男の涙だった。 良牙がずっと秘めていたあかねへの想いは、もう完全に叶う事はなくなってしまったのである。 「乱……馬……そう、か……」 早乙女乱馬の名前が、ようやく、天道あかねの口から出た。 乱馬の事を彼女が思い出し、心の靄が晴れたように消えていった。 伝説の道着も全てを察したのだろうか。 「──」 伝説の道着は、嫉妬深い性質の持ち主であるとされる。 主人と認めた武道家に深い愛情を注ぎ、それ以外の異性があかねに近寄るのを許さない。もし、それを見かけた場合、伝説の道着は解体されてしまうのである。 今がまさに、その時であった。 道着は、乱馬と──そして良牙への敗北を確かに認め、その時、確かに伝説の道着ははらりとその役割を終えてしまった。 幾人もの敵を苦しめてきた怪奇な鎧は、その時、他人の愛によって役割を停止した。 「くっ……」 ──良牙も、同じだった。その瞬間は嬉しかったが、悔しくて仕方がなかった。 どうやっても、あかねに思われ続ける乱馬には勝てない。たとえ格闘で勝っても、力で勝っても、勉強で勝っても、身長で勝っても……何で勝ったとしても、何よりも欲したその一点だけは。 だから、乱馬をもう認めるしかなくなってしまった。 内心では、まだ悔しい。 いつもずっと、あかねを手に入れる事を考えてきた。二人の仲に付け入る隙はまだきっとあると、どこかで信じていた。 しかし、そんなのは所詮気休めだった。良牙の思い込みで、もうどこにもチャンスなんていうものはなかったのだ。 「────」 もう、これっきりだろう。 良牙は、そう思いながら、つぼみと鯖豚のもとへと歩き出した。 あかねとは、かつてのような関係にはもう戻れない。 友達ですら、いられない。きっと……。 乱馬の事を思い出してくれたとしても、あれだけ呼びかけて反応しないほど取るに足らない自分の事などあかねが覚えているわけもないだろう。 「つぼみ……」 良牙はつぼみの近くに寄り、そっと手を貸した。 力強く、つぼみの腕を握るその手。引っ張り上げて、すぐにでもつぼみを背負ったその背中。まぎれもなく、大丈夫と呼んでも差し支えない男のものだった。──しかし、その男は泣いていた。 良牙は左腕に、鯖豚を抱えた。 「……あかねさん」 そっと、右手をあかねに向けて差し出した。 あかねは、戸惑ったようにその右腕を見つめた。 自分は何をしていたのだろう。こうまでして、何故……。 自分の為にここまでしてくれる男が近くにいたのに、そんな相手まで殺そうとして。 優しく、気高く、誰よりも傷つきやすい男を、あかねは容赦なく傷つけた。 おそらくは一生、残り続ける傷跡を彼に残しただろう。 胸に罪悪感が湧きでてきた。 「……」 あかねはその右腕を良牙に差し出そうとしたが、その直前にふと嫌な物が見えた。 自分の手には、真っ赤な血がついている。 裏正を握った時の血だ。 ……理解していた。だから、諦めたように自分の掌を見つめ続けていた。 「……」 そう、一文字隼人に美樹さやか──もう二人の人間を殺している。 あかねが出した犠牲はそれにとどまらないかもしれない。 目の前の男の心も傷つけ、目の前の女の体も傷つけ、計り知れない悪事を重ねた。 言い訳はない。 この一日、あかねは目的さえも忘れて無意味に人を傷つけ、襲い、殺し続けていた。 そう──それは、もうどうやっても日常に帰る事などできない証だった。 父にも、姉にも、友達にも、もう会えない。 大事な人の前に立つ事も、もう叶わない。 乱馬を守る、という目的は既に潰えたと言っていい。 ふと思った。 彼が差し出した右腕は、このあかねの手に汚れるのだろうか。 いや、そうもいくまい。 この右腕が罪の証ならば、あかねはそれを自分だけで背負っていくのみだ。 「……ううん」 大事な友達の指を、あかねの罪で穢してはならない。 あかねは、一息ついて、その右腕をひっこめた。 男は、そんなあかねの様子を見て、眉をしかめた。 そんな彼の表情を見て、あかねは息を大きく吐き出した。 「……ごめんね…………みんな……乱馬……」 そう呟くと、あかねの体はゆっくりと力を失い、上半身ごと倒れこんだ。 全身の力がもう、どこにもない。 いや、もはや生命を維持するだけの余力もないだろう。 「あかねさんっ!」 あらゆる変身能力があかねに手を貸したが、あかねの肉体が持つキャパシティを遥かに超える膨大な力があかねに取りついてしまった。幾つもの変身、幾つもの顔、幾つもの力──それが、あかねの体を蝕み、最後には何も残らない怪物に変えてしまった。 その悪魔の力は自分の命さえも吸った。肉体は崩壊しきっていると言っていい。 「大丈夫。忘れたりなんかしないよ……良牙くん。良牙くんは私の一番特別な友達だから……。────ありがとう」 ああ、せめて、……大事な親友・響良牙の名前を呼び、彼が意外そうな顔でこちらを見るだけの余力があったのは、ちょっとした救いになっただろうか。 ◇ あかねの亡骸の右腕を、良牙は黙って握り続けた。 空はもう晴れている。 一帯が潰れたこの激戦の痕も、随分と違った景色に見え始めていた。 長い時間が経ったように思われたが、時計はほんの数十分の出来事だったのだと告げている。 「……」 つぼみは良牙に声をかける事ができなかった。 良牙は何も言わず、ずっと黙っていた。 それは、まだ彼が涙を止められず、立ち上がってこちらに顔を向けられないという事だと、容易にわかった。 人は大事な人の死に目に悲しみを覚える。その時に自然に流れる涙であっても、他人に見せるのは情けないと教育されて生きているのが男たちである。 ましてや、彼のように頑固で誰よりも強い人間は、涙を易々と見せたいとは思わないだろう。 ──彼は我慢している。 本当は遠吠えのような声をあげて泣きたいのかもしれないが、つぼみがいる手前、それができないのだろう。 だから、何となく居心地の悪さを感じていたのだろうが、やはりつぼみは意を決して告げた。 「良牙さん……一緒に泣きましょう」 つぼみの提案は聞こえただろうか。 「私もずっと、我慢していました。……でも、やっぱり……無理をするのはきっと、体に毒です」 何も言わない良牙の背中に、つぼみは語り掛けた。 やはり頭が真っ白で、何も聞こえていない──聞こえたとしても理解できない──のかもしれない。 つぼみ自身、自分が何を言っているのか、すぐにわからなくなった。 考えて出た言葉というよりも、ただ感じた言葉だった。 今、自分がしたい事だろうか。 「……っ」 良牙はあかねの手をまた強く握った。 より強く。──しかし、握り返してもらえない心の痛み。 それが良牙の中からあふれ出る。 「あかねさああああああああああああああああああああああああああんっっっっ!!!!!!!!!!!!!」 良牙は、あかねに縋り付いて泣いていた。 そんな良牙の背中で、つぼみは大事な友達をまた喪った悲しみと、それからまた一人、心は救えても命までは救えなかった痛みに慟哭した。 ◇ 良牙は、倒れた木々が茂るその場所にあかねの遺体を隠した。 地面に埋める事ができなかったのは、まだどこかに未練があるからだろう。 五代雄介や美樹さやかもここにいて、罪の連鎖がここにある。 五代をさやかが殺し、さやかをあかねが殺し、あかねも死んでしまった。 「……つぼみ。ごめん」 また二人で冴島邸に向かう森の中を歩きながら、良牙は言った。 あかねの荷物を形見として回収したが、その中には殺人の為の武器ばかりである。 ガイアメモリも、おそらくそのために使われたのだろう。 「折角みんなで助けたのに、さやかは……」 どうにも良牙は居心地が悪そうだった。 身体的、精神的に疲労がたまって、ただ、何も考えられないままにつぼみにそう言ったのだ。涙が枯れても、まだ呆然として何も考えられなかった。 乱馬やシャンプーと違い、その死に目を直接見てしまったのがつらかったのだろう。 「なんで、良牙さんが謝るんですか」 「……」 「私は、さやかの命を奪った罪を憎みます。でも、……あかねさんは憎みません。それが私で、それが良牙さんですから」 誰かが犯した罪を憎み、罪を犯した人間を憎まない。 それは、つぼみの鉄の意志だった。そして、良牙自身も無自覚にそんなやさしさを心に秘めている人間だとつぼみは思っていた。 今回の場合、ある人を狂わせたのは確実に「外的要因」である。 それに、同じように、さやかは良牙と同行者である五代雄介を殺してしまっている。 つぼみが、あかねを責める気はなかった。 「……そうか」 良牙もそのつぼみの意見に概ね納得した。 これ以上、二人で話しても、結局、結論は同じだ。主催を倒す事で、その罪を消し去る。 それこそが、これから仮面ライダーとプリキュア──古今東西のあらゆる戦士たちがすべき事である。 大道克己もそうだ。いつの間にかあの男への恨みは晴れていった。 自分が憎んでいたのは、大道克己ではなく、彼の罪だとわかり始めていたのかもしれない。 仮面ライダーエターナルとしての力を得た良牙は、これからもまた、仮面ライダーの力を自分が信じる正しい使い方で使っていくだろう。 「そうだ、良牙さん。さっきからずっと不思議だった事があるんです」 ふとつぼみが口を開いた。 先ほどからどうしても疑問だったことが一つあるのだ。 「…………あかねさんが私にトドメを刺そうとした時、どこからか声がしたんです。『早くこの娘を助けてあげて』、って。女の人の声でした。一体……誰の声だったんでしょうね」 それは、回想して見ると、夢や幻のような声であったようにも思えるが、確かにあの時は耳を通って聞こえた声だった。 距離感覚的にも、果たして良牙に聞こえたのかどうかはわからない。 ただ、ここで子豚が「ぶきっ、ぶきっ」と、まるで賛同するかのように声をあげていた。 「……俺も不思議に思っていた事がある。あかねさんが息を引き取った後、あかねさんが持っていたあの折れた刀の刃先がどこにもなくなっていた……もしかしたら」 あらゆる呪いの道具を目の当りにしてきた良牙である。 物の中に「意思」があるかもしれないと言われても、すぐに呑み込めるだろう。 もしかすれば、あの刀──裏正が、一人の少女の心を救えたと知って、満足気にその怨念を絶やして消えていったかもしれない。 彼らは知る由もないが、裏正という刀は、ある女性の魂が宿されている。 腑破十臓という男の妻の魂だった。人斬りだった夫を止める為に、何度も何度も説得して、それでも結局止められなかった怨念である。 しかし、その刀はある物を見届けるとともに、その恨みを消した。 二つに折れた刀の柄は、美樹さやかが友に認められるのを見た時に、そして刃は、天道あかねが友によって止められた時に。 ……もう、自分が世にいる必要はなくなった、と確信したのだろう。 (なるほど──) 良牙の中に、確信ともいえるべき何かがあった。 それを胸に秘めながら、手元にあるエターナルのメモリを、良牙はじっと見つめた。 (俺もいずれ、お前の声を聴かせてもらうぜ、エターナル) エターナル。 かつて、風都を死人の街にしようと目論んだ悪の仮面ライダー──。 その力が一人の少年の手に渡り、いつの間にか、全く別の道に向けて風が送られていた。 【2日目 昼】 【E-5 森】 【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア!】 [状態]:ダメージ(中)、加頭に怒りと恐怖、強い悲しみと決意、首輪解除 [装備]:プリキュアの種&ココロパフューム、プリキュアの種&ココロパフューム(えりか)@ハートキャッチプリキュア!、プリキュアの種&シャイニーパフューム@ハートキャッチプリキュア!、プリキュアの種&ココロポット(ゆり)@ハートキャッチプリキュア!、こころの種(赤、青、マゼンダ)@ハートキャッチプリキュア!、ハートキャッチミラージュ+スーパープリキュアの種@ハートキャッチプリキュア! [道具]:支給品一式×5(食料一食分消費、(つぼみ、えりか、三影、さやか、ドウコク))、スティンガー×6@魔法少女リリカルなのは、破邪の剣@牙浪―GARO―、まどかのノート@魔法少女まどか☆マギカ、大貝形手盾@侍戦隊シンケンジャー、反ディスク@侍戦隊シンケンジャー、デストロン戦闘員スーツ×2(スーツ+マスク)@仮面ライダーSPIRITS、『ハートキャッチプリキュア!』の漫画@ハートキャッチプリキュア! [思考] 基本:殺し合いはさせない! 0:冴島邸へ。 1:この殺し合いに巻き込まれた人間を守り、悪人であろうと救える限り心を救う 2:……そんなにフェイトさんと声が似ていますか? [備考] ※参戦時期は本編後半(ゆりが仲間になった後)。少なくとも43話後。DX2および劇場版『花の都でファッションショー…ですか!? 』経験済み そのためフレプリ勢と面識があります ※溝呂木眞也の名前を聞きましたが、悪人であることは聞いていません。鋼牙達との情報交換で悪人だと知りました。 ※良牙が発した気柱を目撃しています。 ※プリキュアとしての正体を明かすことに迷いは無くなりました。 ※サラマンダー男爵が主催側にいるのはオリヴィエが人質に取られているからだと考えています。 ※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました。 ※この殺し合いにおいて『変身』あるいは『変わる事』が重要な意味を持っているのではないのかと考えています。 ※放送が嘘である可能性も少なからず考えていますが、殺し合いそのものは着実に進んでいると理解しています。 ※ゆりが死んだこと、ゆりとダークプリキュアが姉妹であることを知りました。 ※大道克己により、「ゆりはゲームに乗った」、「えりかはゆりが殺した」などの情報を得ましたが、半信半疑です。 ※所持しているランダム支給品とデイパックがえりかのものであることは知りません。 ※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。 ※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。 ※良牙、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。 ※全員の変身アイテムとハートキャッチミラージュが揃った時、他のハートキャッチプリキュアたちからの力を受けて、スーパーキュアブロッサムに強化変身する事ができます。 ※ダークプリキュア(なのは)にこれまでのいきさつを全部聞きました。 ※魔法少女の真実について教えられました。 【響良牙@らんま1/2】 [状態]:ダメージ(中)、五代・乱馬・村雨・あかねの死に対する悲しみと後悔と決意、男溺泉によって体質改善、首輪解除 [装備]:ロストドライバー+エターナルメモリ@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(ゾーン、ヒート、ウェザー、パペティアー、ルナ、メタル、バイオレンス、ナスカ)@仮面ライダーW、 [道具]:支給品一式×18(食料二食分消費、(良牙、克己、五代、十臓、京水、タカヤ、シンヤ、丈瑠、パンスト、冴子、シャンプー、ノーザ、ゴオマ、バラゴ、あかね、溝呂木、一条、速水))、首輪×7(シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、ノーザ)、水とお湯の入ったポット1つずつ×3、子豚(鯖@超光戦士シャンゼリオン?)、志葉家のモヂカラディスク@侍戦隊シンケンジャー、ムースの眼鏡@らんま1/2 、細胞維持酵素×6@仮面ライダーW、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、歳の数茸×2(7cm、7cm)@らんま1/2、デストロン戦闘員マスク@仮面ライダーSPIRITS、プラカード+サインペン&クリーナー@らんま1/2、呪泉郷の水(娘溺泉、男溺泉、数は不明)@らんま1/2、呪泉郷顧客名簿、呪泉郷地図、克己のハーモニカ@仮面ライダーW、テッククリスタル(シンヤ)@宇宙の騎士テッカマンブレード、『戦争と平和』@仮面ライダークウガ、双眼鏡@現実×2、女嫌香アップリケ@らんま1/2、斎田リコの絵(グシャグシャに丸められてます)@ウルトラマンネクサス、拡声器、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、『長いお別れ』@仮面ライダーW、ランダム支給品0~8(ゴオマ0~1、バラゴ0~2、冴子0~2、溝呂木0~2)、バグンダダ@仮面ライダークウガ、警察手帳、特殊i-pod(破損)@オリジナル [思考] 基本:自分の仲間を守る 0:冴島邸へ。 1:誰かにメフィストの力を与えた存在と主催者について相談する。 2:いざというときは仮面ライダーとして戦う。 [備考] ※参戦時期は原作36巻PART.2『カミング・スーン』(高原での雲竜あかりとのデート)以降です。 ※ゾーンメモリとの適合率は非常に悪いです。対し、エターナルとの適合率自体は良く、ブルーフレアに変身可能です。但し、迷いや後悔からレッドフレアになる事があります。 ※エターナルでゾーンのマキシマムドライブを発動しても、本人が知覚していない位置からメモリを集めるのは不可能になっています。 (マップ中から集めたり、エターナルが知らない隠されているメモリを集めたりは不可能です) ※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。 ※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。 ※つぼみ、一条、鋼牙と125話までの情報を交換し合いました。 ※男溺泉に浸かったので、体質は改善され、普通の男の子に戻りました。 ※あかねが殺し合いに乗った事を知りました。 ※溝呂木及び闇黒皇帝(黒岩)に力を与えた存在が参加者にいると考えています。また、主催者はその存在よりも上だと考えています。 ※バルディッシュと情報交換しました。バルディッシュは良牙をそれなりに信用しています。 ※鯖は呪泉郷の「黒豚溺泉」を浴びた事で良牙のような黒い子豚になりました。 ※魔女の真実を知りました。 ◇ 【天道あかね@らんま1/2 死亡】 【残り15名】 時系列順で読む Back らんまの心臓(前編)Next 騎士Ⅱ 投下順で読む Back らんまの心臓(前編)Next 騎士Ⅱ Back らんまの心臓(前編) 花咲つぼみ Next 騎士Ⅱ Back らんまの心臓(前編) 響良牙 Next 騎士Ⅱ Back らんまの心臓(前編) 天道あかね GAME OVER
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/450.html
赤く熱い鼓動(前編) ◆gry038wOvE 「……寄せ集めが二人。この俺に勝てると思ってるのか?」 血祭ドウコクは、眼前の仮面ライダーダブルとウルトラマンネクサスへと言い放った。 「だから三人だって言ってんだろ!! ……ったく」 二人しかいないように見えるが、仮面ライダーダブルは左翔太郎とフィリップの二人の意識を内在する戦士である。一方のウルトラマンネクサスは佐倉杏子が変身しており、彼女自身も、ダブルの登場にはまだ驚愕しているようであった。 だが、ドウコクを倒す仲間としては、やはりダブルの存在は心強い。心強い一方で、折角逃げたのだから逃げ切ってほしいという複雑な心境でもあった。ここに来てしまった以上、引き返せというのもナンセンスな話だが。 「どうするか、フィリップ。逃げ場は完全になくなっちまったみたいだぜ」 『どうするもこうするも……これで倒す以外の選択肢、あるかい?』 フィリップは呆れたように、しかし頬を浮かしながら答えた。 翔太郎が無茶をする事にフィリップは慣れていた。 「そうだな、それが唯一にして……」 『そう、完璧な答えだね』 「『ハァッ!!』」 仮面ライダーダブル・ルナトリガーは声を合わせ、再び何発もの弾丸をドウコクに向けて放つ。 一発一発が不思議な軌道を描き、ドウコクの身体の表面で爆ぜる。ドウコクはそれを全て全身で受ける。 避ける隙がなかったわけではない。避ける“意味”がなかったのだ。 その弾丸を受けながらも、ドウコクは平然としながら前進する。走るような素振りは見せず、威風堂々、全身を揺らしながらゆっくりと歩いている。 そのあまりの豪快さと身体の硬さに、やはり強敵の貫禄を感じ、ダブルは息を飲んだ。 (……ただ、その完璧な答えを通用させるには、少し難しい相手かもな) 二人は鳴海壮吉の死から数えて三年戦い続けたとはいえ、翔太郎はまだまだハーフボイルドだ。 しかし、目の前の敵は違う。どれだけの時を戦い続けているのかわからない。生まれた時から戦ってきたかのようにさえ見える。──果たして、日常生活というものを経験した事がある相手だろうか? 昼夜を問わず依頼人のために働く体力のいる仕事・探偵を選んだ翔太郎も、所詮は人間のスペシャリスト並みの体力でしかなく、それを仮面ライダーとしての戦闘力と戦闘経験で補っているに過ぎない。 ──だが、ダブルに向かって駆けてくる、このドウコクなる者は、そんな程度の力ではない。 ヒトですらなく、ヒトらしい心さえ持たない外道衆。しかも、その総大将だ。縛る力の存在がその所以とはいえ、単純な戦闘力においても外道衆では最強と言える。これまで仮面ライダーダブルが戦ってきた相手は殆ど人間が変身した敵であったが、それらとはまた違った次元の敵であった。 それが歩いてくるとなれば、それはやはり────恐怖を増幅させる能力の持ち主であるテラー・ドーパントの時に匹敵する恐怖が翔太郎の中にあったかもしれない。 それでも、仮面ライダーである以上、ダブルは当然それに立ち向かわなければならなかった。 その意思をより強くするため、再びメモリを変える。 このまま遠距離攻撃をしていても、おそらくは何も効かないままに距離を詰められる。それより前にメモリをチェンジせねばなるまい。 まず、防御の力も引き出しておいた方がいいだろうか。 取り出したのはメタルメモリだった。 ──Metal !!── ──Lunna × Metal !!── ルナメタルへとハーフチェンジしたダブルは、メタルシャフトの先端を鞭のように伸ばし、ドウコクの身体へと届く。この攻撃はこの殺し合いに来て以来、誰にも使った事はない。つまり、ドウコクもこの戦い方を知らない。 それが一瞬の翻弄へと繋がる。 イレギュラーな攻撃に、ドウコクは一瞬対応に困ったようだが、対応はごくごく簡単な話──右手の剣を振るい、それを身体の手前に翳して攻撃を弾く。降竜蓋世刀の刃渡りは微かに少なく、それを受け切る角度としてはやや物足りないものだったが、仮に身体にメタルシャフトが届いたとして、小さな火花を散らす程度だ。ドウコクには効かない。 「ハァッ!」 そんな攻撃の隙間に、近くにいたネクサスは高く跳び、ドウコクの頭を目がけて足を突き出しての落下を開始していた。ネクサスは、遠距離戦以上に肉弾戦を一つの武器としている。アンファンスキックである。 ネクサスの攻撃に気づいたダブルが、メタルシャフトを引っ込め、ネクサスの身体にメタルシャフトが当たらないようにする。 直後、ネクサスのキックは確かにドウコクの頭に命中した。それはある程度ドウコクに効いたようで、ドウコクの身体は自然と数歩後ろに下がった。 「ああ……?」 だが、大きなダメージには至らなかった。むしろ、着地したネクサスの身体こそ、攻撃を受けた直後のドウコク以上に隙がある存在だったがゆえ、降竜蓋世刀がネクサスの身体を横凪に襲う。 「デュアッ!」 辛うじてネクサスは身を翻す。それを避けたつもりだったが、胸元に微かに刃が命中した。 胸元から小さな火花が散り、ネクサスの目が反射的にそちらに向いた。この火花は、ヒトならば真っ赤で膨大な血液だっただろう。避けきったつもりだったのに攻撃が届いていた。そのため、ダメージの程度がわからなかったのである。身体にどんな痕ができてしまったか──その確認のようなものを、本能が求めた結果かもしれない。 しかし、そうして自分の傷跡を見た瞬間、更にドウコクの左拳がネクサスの頭部へと放たれる。 これは避ける事さえもできない。見事に命中し、ネクサスは下半身が前に向きながらも上半身が殴られた方向に捻られる形になった。 そこからドウコクは再び、降竜蓋世刀で左下から右上へと豪快に斬り捨てる。それは具体的にネクサスの身体の何処を狙ったわけでもない。ただ、その斬撃がどのくらい派手にネクサスの身体を仕留めてくれるかという楽しみがドウコクの中にあった。 「調子に乗るなよ?」 大雑把な攻撃でありながら、効果は絶大だ。 ネクサスの腹部から胸にかけて、今度こそ巨大な傷が残る。 黒く焦げ、抉られたような傷が、アンファンスの銀色の身体では非常に目立つ。これこそ、ヒトならば骨まで見える大怪我……相当な致命傷だろう。 「デュァァァァァ……!」 その呻き声は、痛みを訴えながらも堪えようという努めが見られた。 ネクサスは地面に膝をついて、胸を抑える。 二度目の変身とはいえ、初めて使う力には違いないのだ。突然その力を与えられ、まだ使い勝手に苦しんでいる杏子である。 だが、ネクサスは顔をあげ、ドウコクを見上げる。 距離、ゼロ。 降竜蓋世刀は、真上からナタでも突き刺すかのように振り下ろされる。しかし、それに気づいたネクサスは、己の力の限りを尽くし、すんでのところで真横に転がって回避する事に成功した。 「フィリップ、俺達もチャンスだ……!」 『ああ……!』 次の瞬間、ダブルとドウコクの間にいたネクサスが消えた事で、ダブルにも攻撃の隙が出来た。二人が攻防を行っているうちにダブルはサイクロンメタルへとハーフチェンジしており、メタルシャフトから旋風が放たれる。何度も何度もメタルシャフトを回転させながら、風を巻いた一撃がドウコクへとぶち当たる。 しかし、俊敏であるように見えて愚鈍なその風は、あっさりと見切られ、降竜蓋世刀が跳ね返した。 「弱ぇな」 ドウコクが呟く。 やはり、弱い。手ごたえがない。 シンケンジャーの方がよほど戦い慣れをしていただろうか。そんな思いが巡る。 モヂカラを持つ者たちが世襲していくシンケンジャーは日々の修行を欠かさず、シンケンレッドなどは非常に長い期間戦ってきた。 だが、彼らはどうか。モヂカラも持たず、戦い慣れもない。多少は慣れているとは言っても、せいぜい戦っていた期間はダブルが四~五年、ネクサスに至っては一年程度に見える。それはドウコクの中では戦い慣れとは呼ばれない。 そんな敵に、人の一生より長い期間を戦い続けたドウコクが負けるわけがないではないか。……しかし、もはや手ごたえなど、ドウコクは求めていなかった。 「ハァッ!!」 不意に、真横からドウコクに向かって、鋭い刃が向けられる。それは剣の形をしていない。ネクサスの腕の側部を覆うアームドネクサス──そのエルボーカッターであった。 アームドネクサスは低い位置からエルボーカッターを使い、ドウコクの首筋を狙う。 おそらく身体構造は同じ。ならば、急所も同じだと考えたのだろう。 だが、降竜蓋世刀はそれを平然と防ぐ。今度は刃渡りも角度もドンピシャである。ドウコクの身体には刃が当たる事さえもなかった。 これだけの姿になりながらも、余程の勇気をもっての一撃と見える。 「グァァァァァァッッ!!!」 ドウコクは咆哮する。 それは身体の痛みから来るものでも何でもない。ドウコクの攻撃の一つであった。 咆哮は衝撃波となって、ネクサスの身体を遠く吹き飛ばす。ある程度の距離をキープしていたはずのダブルでさえ、左足が下がり、両手を体の前で組み耐えているほどである。 再び、近距離にあったはずのネクサスとドウコクの間が広まった。 ネクサスは後方に倒れ、本人の意思を無視して衝撃に転げた。 その様子を見て、ダブルが呟く。 「……クソッ。なんて奴だ」 てっきり近距離攻撃のみを武器とするのかと思っていたが、衝撃波を操るなど、もはや反則だろう。ダブルほど多彩ではないものの、ダブルが持つ全ての姿の力を超える圧倒的な力をドウコクは持っている。 近距離の斬撃。遠距離の咆哮。 かなり難しいところだ。翔太郎は考えていたが…… 『……翔太郎。さっきから気になってるんだけど』 不意にフィリップが突然に口を挟んだ。 「おい、なんだフィリップ。まさかこんな時に桜餡子について調べたいとかいうんじゃねえだろうな」 『それもいいかもね。……だけど、翔太郎は杏子ちゃんの姿に疑問に思わないのかい?』 ──疑問。 一口にそう言われても、翔太郎には、思い当たる節が多すぎて一体、どの疑問なのかわからない。 だいたい、戦闘中には仮にどんな疑問が出たとしても、それは全てフィリップに任せる方針だった。この身体が翔太郎のものである以上、ダブルの今の戦いは翔太郎の命がかかった戦いでもあるのだ。 「なんの疑問だよオイ。いろいろありすぎてわかんねーよ」 『あの銀色の巨人の姿、前に戦った時は確か、別の色になってガドルたちを圧倒した……』 「ああ、そうだな」 『じゃあ、今の彼女の姿を見てごらんよ』 ダブルはネクサスの方へと目を移す。 確かに、考えてみれば、以前姫矢が変身するウルトラマンネクサスと共闘した際、ネクサスは肩に装甲を拵え、全く別の体色の姿へと変わった。 赤を基調とするボディラインへと変化した事はよく覚えている。ヒートメタルとは配色こそ異なるものの、基調となる二つのカラーは同じだったはずだ。 「今の杏子は……全身銀色だ」 『そう。本当は別の色に変身する力があるはずなんだ』 「……そうか、俺達のハーフチェンジみたいに……」 『ああ。おそらくそれは、あの戦士の力を引き出す鍵なんだ。でも、杏子ちゃんはそれに気づいてない』 「……なんだって?」 そう、以前フィリップが言ったとおり、あの力が引き継がれていくものだとすれば、彼女が力を引き継いだのはつい数時間前。まだ彼女が使い方を知らない可能性だってあるはずだ。 いや、可能性なんかじゃない。ほぼ確実にそうだろう。先ほどから、ネクサスは非常に単調な攻撃しかできていない。魔法少女の姿の方がトリッキーで様々な攻撃ができていた。 それは彼女がネクサスの力の使い方をよく知らない所為もあろう。 「そうか。ならとにかく、それを杏子に教えてやらねえと……」 ……と、翔太郎が言った瞬間である。 「……何を教えるって?」 ドウコクはダブルの近距離に迫ってきていた。 翔太郎とフィリップは普段、会話しながらも周囲に気を配るくらいはできた。だが、ドウコクの咆哮が耳鳴りを起こさせており、何より会話のために聴力をフル稼働させる必要があったのだ。 そのため、視覚に気を配るのを一瞬でも忘れさせていたのである。その一瞬が、ドウコクを近距離まで歩かせていた。ドウコクのマスクは喜怒哀楽の怒の表情のみを拵えたような恐ろしい外形である。 やはり、近距離で見れば鼓動が高鳴り、翔太郎の中で一瞬、時が止まるほど恐怖に満ちていた。 「くそっ!!」 ドウコクは降竜蓋世刀を振り下ろす。幸いにもサイクロンメタルの姿をしていたがゆえに、左半身に力を込めてそれを防いだ。硬質化したメタルの左半身は敵の攻撃を簡単には受けないほど硬い筋肉に覆われている。確かに、多少は衝撃を感じたものの、防御に関してはサイクロンメタルは卓越している。 ダブルは左手で攻撃を防ぎつつ、右手でサイクロンメモリをヒートメモリに入れ替えようとしていた。 しかし── 「しゃらくせえ!」 「何っ!?」 そんな右手とベルトのやり取りは、ドウコクの蹴りによって防がれる。 ドウコクの蹴りはダブルの右手へと命中し、その手に持っていたメモリを弾いた。腹部にこの蹴りがぶち当たれば、かなり膨大なダメージを与えたかもしれないが、ドウコクの目的はダメージを与える事ではない。 ただ、ダブルの小細工を防ぎたかっただけである。 「あっ……くそっ……ヒートメモリが……!!」 ヒートメモリが宙を舞い、ダブルからは数メートル離れた地面にぽとりと落ち、少し跳ねた後、動かなくなった。たかが数メートルの距離とはいえ、そこまでの間にはドウコクがいる。こうしてハーフチェンジを防がれるのでは、ルナメモリも使えない。 ヒートメモリはソウルサイドのメモリだ。仮面ライダーダブルに変身した事でこちら側に実体化していたメモリなので、おそらく壊されない限り、変身を解けばフィリップの元へと帰るだろう。しかし、今はそんな暇がない。変身を解くなど自殺行為だろう。 ドウコクには特に有効であるヒートメモリがダブルの手を離れてしまったのは痛手であった。 それに、現状変身しているサイクロンメタルというのは、ダブルが持つ九つの形態の中でも、二つのメモリの相性が特に悪い最悪の組み合わせなのである。戦えない事もないが、使用はだいたいの場合一瞬の翻弄に終るのである。 ドウコクは、サイクロンの側からメタルの側を斬りつけるように横凪ぎに刀を振るう。 「ぐああああああっっ!!!」 ダブルの身体にもまた、深い傷跡が刻み込まれた。 防御力が高いメタルの身体を持ちながらも、やはりドウコクの魂のこもった一撃は違う。真の闘士はドウコクであった。 同じ闘士であっても、彼は数百年来の闘士なのである。 『大丈夫かい!? 翔太郎!』 痛む翔太郎の身体の身を、フィリップが案じる。 そのフィリップの弱弱しい心配の声を聞き、ドウコクはニヤリと笑った。 「一人の体に二人の頭。煩わしいだけだと思ったが……最高じゃねえか、一人で二人分の悲鳴を挙げてくれるんだろ?」 そう、もう一人の人格はこの状況下では戦えないらしい。ダブルに変身して戦っている限り、彼はもう片方の男が死ぬのを見続けるに違いないのである。 前々から翔太郎もドウコクを悪趣味だとは思っていたが、尚更それが憎く感じる。彼に対する反発心は充分だった。 ともかく、もとより死ぬ予定はないとはいえ、死ねない理由は更にもう一つ出来たというところだろうか。自分が死んでフィリップが悲鳴をあげるのなら、それは相棒として事前に食い止めていくべき話だろう。 「違うね……そんな悲鳴をあげるのはお前の方さ……」 ダブルは、ドウコクの真後ろを見てそう言う。 立ち上がったネクサスが、ドウコクの両肩を後ろから掴み、自分の方へと寄せた。ダブルには、ネクサスがドウコクに向かって駆けてくるのが見えていたのである。 次の瞬間、ドウコクの胸へとネクサスのアンファンスパンチが繰り出される。 「……バカな野郎だ」 しかし、それは予測済だったのだろうか。それと同時にネクサスの体を剣が凪ぐ。タイミングは見事なほどに合っていた。ネクサス自体が、半ば捨て身で向かってきた所為もある。 「危険が迫ってるのをわざわざ教えてくれてありがとよ……!」 「くそっ……!」 翔太郎の台詞こそが、ドウコクに直前でもネクサスの攻撃を予測させる原因になったのだ。 (ちくしょう……すまねえ、杏子) 我ながら余計な事を言った、迂闊だった、と後悔し、杏子に申し訳なく思う。 戦略的に無意味な恰好付けにしかならなかったのだ。いつもの癖で言ってしまったが、そんな余裕のある相手ではなかったらしい。 「グァァァッ!!」 直後に聞こえるのはネクサスの雄叫び。 再び体に深い傷を負ったネクサスは遂に膝をつき、肩で息をしていた。肩で息をする姿というのがこれほどまでにわかりやすいものだとは誰も思わないだろう。呼吸をしているかもわからないネクサスだったが、明らかにゼェゼェと息をしているようである。 ピコン…ピコン…ピコン…ピコン…ピコン…… そして、そうして大きく息を吸い、大きく吐いていると、奇妙な音が鳴り始めた。 まるでタイマーの点滅のような変な音であった。 どこから鳴っているのかと思えば、それはネクサスの胸にあるY字型のエナジーコアからである。 「おい、杏子。なんかヤバいみたいだぜ……!」 ザルバが言う。 ネクサスは己の胸元で点滅を始めた光にぎょっとしたように目をやった。 エネルギーの限界とダメージの蓄積が来ている事の証明である。それを教わったわけではないが、自分の状態が限界に近いのは理解していたため、何となくそれがウルトラマンとしての限界を表しているのだろうと理解できた。 ウルトラマンネクサスの活動時間に特に制限はない。メタフィールドを展開した場合、メタフィールド内での活動時間は3分に限られるが、この場所では枷となるものはなかった。しかし、エネルギーの消費が激しい場合や、身体的に膨大なダメージを受けた場合の話は別である。 続けて、ドウコクは先ほど向いていた方向へと向き直り、ダブルの体へと斬りかかる。 頭の上で真一文字に斬りかかろうと言う姿勢だった。 「その身体……真ん中から真っ二つに引き裂きたくなるのが情って奴だよなァ」 笑ったような声とともに、サイクロンとメタルの狭間の線をなぞるように、ドウコクの剣はダブルの身体を斬る。稲妻か業火か、ダブルの身体に光が迸る。 無論、ここから翔太郎の悲鳴が聞こえないはずがなかった。 「ぐあああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!」 『翔太郎ぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!』 ぷすぷすと身体の狭間から仄暗い色の煙が昇る。 ドウコクの目的とする悲鳴の連鎖は、まだまだ終わらない。これだけ敵が巨大なダメージを負っている今、その隙は一秒前より確かに大きいものとなる。 痛みに倒れるダブルの身体に、二度三度とドウコクの刃は通る。 火花はあまりにも巨大だ。 翔太郎とフィリップの悲鳴は止まない。 ドウコクは笑いもせず、極めて冷徹にその悲鳴を耳に通した。高笑いなどはしない。冷徹に追い詰めながらも、当人はその慟哭の中に悦びを感じている。 翔太郎が憧れるハードボイルドから優しさを消せば、これと似ているかもしれない。無論、優しさのないハードボイルドはハードボイルドに非ず……ハードボイルドの定義からも外れる。翔太郎は、この宿敵を認めないだろう。 数度の攻撃の後、ドウコクはその場に倒れる二人の戦士に攻撃を加えるのをやめた。 「……ぐっ! ………………あがっ………」 ダブルは立ち上がろうとするも、全身の力が出し切れず、そのまま地面に身体を打ちつける。ドウコクは憮然と立っていた。 ネクサスは立ち上がり、数歩よろよろと歩いて近づこうとして、また倒れた。ドウコクはそれを冷淡な目で見つめていた。 「さあ、どっちが先に死ぬ? 先に死にてえのは、どっちだ?」 しかし、冷淡に見つめながらも、ドウコクは敵を散々痛めつける快楽の中にあった。 これほどまでに長い時間を殺しながら楽しむ悦びなど、これまであっただろうか? ドウコクをはじめとする外道衆は、三途の川の水を身体に残さなければ、水切れを起こして三途の川へと帰らなければならない宿命を持っていた。 そう、ついこの間まではドウコクは少しでも人間界に出れば、すぐに水切れを起こしてしまう厄介な体質だったはずだ。 しかし、今は違う。 薄皮太夫の身体をその身に宿したドウコクは、完全無欠の外道衆と成った。人間界でどこまでも暴れられる。敵を殺し、人の苦しみを聞く事で三途の川の水も増える。 いや、それだけではない。 三途の川を増水させて人間界に向かわせるよりも、ドウコクはこの戦いを愉しんでいた。 今は、怒りを感じれば何処まででも敵を殺せるのだ。 「……いや、もう声も出せねえか」 ダブルは小さな声を上げたが、それでもドウコクには聞こえなかった。ネクサスの言葉はドウコクには伝わらないため、ドウコクが向かったのはそちらになるのは必然だ。 ネクサスは自分のいる場所から遠ざかっていくドウコクに近づこうとしたが、無意味に少し這うだけだった。 エナジーコアはだんだんと点滅を早めている。 もうすぐネクサスの変身が解けてしまいそうであった。耳触りなアラームは、更に音を加速させ、ネクサスの胸元で鳴りつづける。 「おらっ!!」 ドウコクはダブルのメタルシャフトを取り上げ、ダブルの身体を蹴飛ばし、仰向けの体形に転がす。翔太郎の小さなうめき声がそこから漏れたが、ドウコクはそれに耳も貸さない。 ドウコクはダブルの身体を両足でまたぐようにして立った。 次の瞬間、垂直に突き立てられたメタルシャフトは、何度も何度もダブルの胸を、腹を、叩きつけるように振り下ろされる。身体を潰し、突き破るような一撃が真上からダブルの身体へと何度も繰り出された。 ドウコクとしては、さながら餅つきでもするような感覚だっただろうか。 「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!!!!」 翔太郎の身体の皮膚を、骨を、内臓を、突き破る気なのだろうか。 ドウコクは、精一杯の力と体重を込め、メタルシャフトでダブルの身体を突く。突くたびに、地震でも起きたかのような小さな轟音がネクサスの耳にまで入ってきた。 「うらっ!! おらっ!!」 「ぐあああああああああああああああああああああああああああああッッ………!!」 「でかい声が出せるじゃねえか……!」 先ほど、小さなうめき声しか出せなかったダブルとは思えないほど、その声は大きかった。どんなに口を閉ざそうとしても、痛覚がある限り絶対にその声を止ませる事はなかったかもしれない。あるいは、声が枯れない限り……永遠に。 ドウコクはもはや、先ほどの問いの答えを知る気さえなかったかもしれない。 ダブルの悲鳴は、三途の川へとどれほど響くだろう。 『やめろ……やめてくれ!!』 魂のみが宿っているフィリップは、その時、翔太郎の叫び声と重ねながら、彼より大きい声で必死に訴えかけた。 相棒を失いかけているフィリップの声は涙さえ混じっているように聞こえる。結局、ダブルの状態では彼が泣いているか否かなど、わかるはずもないが。 『やめてくれえええええええええッッッ!!!!』 ドウコクの身体がメタルシャフトを振り下ろす直前に、フィリップは絶叫した。 翔太郎が大声で叫ぶのが、一瞬でも止んだ隙に、ドウコクの耳に入るよう訴えたかったのだ。 ドウコクは、その声を合図に、メタルシャフトを振り下ろすのを突然やめる。メタルシャフトがダブルの身体の上で少し跳ねた。 「……やめろ? それはどういう意味だろうな」 実際、攻撃を止めてはいるものの、すぐにでもまた攻撃を仕掛けようと言う姿だった。 一時的に止めただけで、フィリップの言葉を素直に聞き入れたわけではないらしい。 かえって嫌な予感がしたので、二人はその静寂に冷や汗を流す。 「それは『殺すならあっちの小娘にしろ』って意味か、それとも『今すぐコイツを殺して息の根を止めてくれ』って意味か……二つに一つしかねえだろ? ……決めてみろよ。はっきり叫べば、俺はその通りにしてやる」 ドウコクの提案──それは翔太郎たちにとって、最悪の二択だった。予想はしていたが、やはりドウコクの残虐性は翔太郎たちの次元からは遠く離れたものである。 どちらであっても、ドウコクにとっては嬉しい言葉に違いない。 ドウコクは殺し合いに乗っているが、無暗に殺しまくるというより、その悲鳴を聞き、人間の底の浅さに満足したかったのである。 (さあ、どうする……。さっさと見せろよ、人間の本性って奴を……) ドウコクがこれまで戦ってきたシンケンジャーは、自分の命を他人のために平然と捨てる連中だった。他人のために道衆と殺し合い、自分たちが命を落とす可能性があるとしても、それを頭の片隅にさえ入れず、誰かを守ろうなどと考える愚か者だった。 ドウコクの仲間である骨のシタリはその姿を「外道衆よりも命を粗末にしている」と形容する事になったが、それは事実だろうとドウコクも思っていた。 ドウコクたち外道衆は仲間の死にさえ冷淡で、感情らしいものは欠如していると言えるかもしれない。元々人であった太夫などを除けば、ドウコクのように真正の外道となる者が大半だ。 しかし、どういうわけかシンケンジャーは、人の死にいちいち反応する。自分の命より他人の命を大切にする不可解な存在だった。 それがドウコクを苛立たせる。 他人の命は自分の命を賭してでも助ける価値がある? ──そうじゃないはずだ。そんなはずがない。 自分の命のために他人を捨てられる──それだけ大切な命を消し去ってこそ、ドウコクは満足なのだ。 その人間にとって何より尊い命を奪ってこそ、悲鳴は上がり、不幸は生まれる。 だが、シンケンジャーたちはどれだけ痛めつけても何故か、絶対に他人を捨てようとはしなかった。そんな人間を殺しても絶望などは生まれないし、幸せそうに……満足そうに、非生産的に死ぬだけだ。 ここにはそんな人間が何人もいる。 それが、ドウコクには許せないのだ。 ドウコクは認めない。 それは絶対にありえないはずだ。ドウコクにだって命は大切なものだ。他人の命を犠牲にしてでも生きたい。 本性はそうであるはずなのだ。 それを確かめたい。そうであると信じているドウコクの思想を、絶対に塗り替えてはならない。 『翔太郎、僕は──』 「やめろ……フィリップ…………こんな奴に…………俺達は…………」 ──俺達は負けない。 そう言おうとした瞬間に、翔太郎の右胸をメタルシャフトが打つ。 その一撃は、装甲の上からでも翔太郎の体の骨を折るほどではないだろうか。 ドウコクは、とにかく何か口を挟む相手の妨害をしたかった。 「ぐあああああああああああああああああッッッ!!!」 これでもそんな事が言えるか? と、まるでそんな事を言っているようだ。ドウコクは、彼が勝つ希望など無いというアピールをしている。 それがまた、フィリップの迷いを強めさせる。実際、フィリップはいま一瞬、翔太郎に答えを乞おうとした。それは、彼が少しでも迷っている証だ。 ここでドウコクが強いている答えは、時が経つにつれ重くなっていった。 「……答えが出ているみてえだな」 しかし、その一方、ドウコクは彼は迷いなく、自分の意に沿った決断をしているだろうと思っていた。 このフィリップという男は、ドウコクがどれだけダブルを痛めつけても痛みを感じてはいないようなのである。ならば、ここで悲鳴をあげる仲間を取り、ネクサスの死を望むに決まっているだろうと思っていた。 ここで殺せというのは、相棒の苦痛を知り、安楽死を望んでいるという事だろうが、それはどちらかといえば可能性としては低い。 他者を蹴落とし、自分の身を取るのが当然の局面だとドウコクは思っていただろう。 『…………』 フィリップは、少し悩んだように黙った後、答えた。 『血祭ドウコク……すまないが、君の望む答えは、僕達からは出せないようだ』 「……何だと?」 答えを出さない。それは即ち、苦しみから逃れる決断も、他人を蹴落とす決断も下さないという事。それは、ドウコクにとっては有りえない筈の決断だ。 ドウコクの眉間に皺が寄る。 『……僕と翔太郎は、お前のような悪を討つ仮面ライダーだ! 僕たちは命を簡単には捨てないし、他人も犠牲にしない!』 「フィリップ……!」 実はフィリップは一秒も悩まずにこの決断を下していたのだった。 悩んでいるように見えたのは、少しでも翔太郎が痛めつけられる時間を伸ばそうと、悩んでいるフリをしていただけに過ぎない。 苦しいが、フィリップは残念ながらそれしかできなかった。 この決断は、翔太郎の意思でもあるだろうとフィリップにはわかる。これまで仮面ライダーとして戦ってきた彼が杏子を犠牲にして生き残るわけはない。 たとえフィリップがその判断を望んだとしても、それを口に出したら、二人は永久に相棒でなくなるだろう。かといって、翔太郎を殺させる事もできない。 二人は、二人で一人の仮面ライダーなのだ。 どうあっても、犠牲は作らない。もし、犠牲が出来てしまう決断を選ぶ時があるとしても、今はその時ではないはずだ。 「……なるほど。てめえらも本当に不愉快な大馬鹿野郎だ……!!」 目の前の敵もまた、シンケンジャーや姫矢と同じだった。 彼らはこの状況でもまだ、命が助かるかもしれないとか、きっと何とかなるとか、そんな幻想を抱いているのだろうか。他人の命が自分の命より大事だと考えているのだろうか。だとすれば、それはまさしくドウコクを不愉快にさせる考え方だった。 ドウコクはメタルシャフトを辺りに捨て、降竜蓋世刀を右手に握る。その刃を左手で一度なぞり、刃こぼれがないのを確かめる。 強く、強く握った。 まだチャンスはある。 直前になればもっと巨大な悲鳴で喚き、「俺達じゃない、あいつを殺せ」と騒ぐはずに決まっている。 ドウコクはそれを信じて、刀を真上に掲げる。 次の瞬間、その刃はダブルの身体に向けて振り下ろされる事になった。 △ ウルトラマンネクサスは、這いつくばったまま右手を前に伸ばした。必死に地面を掴み、右手に力を込め、少しだけ前に進む。うつ伏せに倒れたネクサスは、己の身体にある僅かな力を前へ前へと少しずつ出すしかなかった。 顔を上げて見てみれば、ドウコクは倒れた仮面ライダーダブルの身体に、何度も何度もメタルシャフトを振り下ろし、体を突いている。────それは、彼女の身体から数十メートル離れた位置の出来事だった。 歩くよりも遅く這って、そこまで辿り着く筈がない。日を浴びたアスファルトは、ネクサスの身体を少しずつ焼いている。 「……オイ、あんたも……あんたの仲間も……ヤバいんじゃないか?」 指に嵌められたザルバは、少し焦りを見せながら言った。 ヤバい──そんな状況なのは、一目瞭然だろう。翔太郎の絶叫はここまで聞こえている。 結局、ほとんど赤の他人で状況すらよく掴めていないザルバにはわからないだろうが、ネクサスはかなりの焦りと絶望を感じながら、必死に身体を前へと出しているのだ。 自分が死んでしまうからではない。 このままでは、何もできずに死んでしまうからだ。何かを成し遂げて死ねるならいい。でも、このままでは、何もできない。 翔太郎を助けられない。 これから幾つもの命を救って行けるかもしれない翔太郎が痛めつけられているのに、彼を助けられないのだ。 せめて、その命くらいは助けたい。 ネクサスの身体はボロボロだ。 ピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコン…… エナジーコアの点滅はだんだんと早くなる。 このまま這っていては、やはりあそこへたどり着く前にネクサスとしての活動は停止されてしまうだろう。 (ちくしょう……なんで……なんで助けられないんだよ……) 杏子は思った。 自分が死ぬわけではないが、その瞬間、まるで自分が死ぬ瞬間のような感覚に陥る。景色の全てがスローモーションで無音に感じ始める。 そして、全身の疲労のせいもあってか、走馬灯というものが流れ始めてきた。 まるで自分自身が死んでしまったかのような、長い映画が始まる。 本当は助けるつもりだったのに、崩壊させてしまった自分の家族。 父を、母を、妹を、救うための行動が、逆に自分の家族の命を奪ったあの時のことも。 殺し合いに乗るつもりで一緒に行動し、時に敵と戦った仲間。 フェイトやユーノを騙すつもりだったのに、いつの間にか二人の死が胸を刺したあの時のことも。 杏子が魔法少女となって間もない頃に出会った友達。 別れた後で、巴マミの死を聞かされたあの時のことも。 それから翔太郎を運んで、出会った同じくらいの年齢の少女。 杏子を諭し、許してくれたせつなが死んだあの時のことも。 己の罪と向き合い、敵と戦う事を誓ったあの放送の男。 杏子が駆けつけた時にはその男は敵に倒され、灰となり消えてしまったあの時のことも。 それから先、杏子と少しだけ会話を交わして、不思議な共感を抱いた男。 この力を明け渡し、杏子たちを守ってくれた姫矢の死を知ったあの時のことも。 全てが罪悪感を伴った悲しい記憶として思い出された。 こういう時、普通ならば自分の人生を呪うだろうが、彼女は少し違った。 (なんで、あたしはいつも……こう人を巻き込んじまうんだ……) 杏子の家族は、きっと杏子が何も願わなければ死ななかった。 マミは、杏子があのまま友達として傍に居続けていれば死ななかった。 フェイトは、杏子が共闘を提案しなければ死ななかった。 ユーノは、杏子が殺し合いに乗るために利用しなければ死ななかった。 せつなは、杏子があの時逃げ出さなければ死ななかった。 姫矢は、杏子が勝手に放送の男のもとへと駆けつけなければ死ななかった。 そして、翔太郎は杏子がここでドウコクと戦おうとしなければ、こうして死の危険を受ける事もなかった。 杏子の行動は常に裏目に出て、誰かを傷つけつけてしまう。 自分の人生の理不尽ではなく、自分自身の存在の理不尽を呪った。自分の人生がどれほど荒んだ物なのかはいいのだ。ただ、自分が存在するだけで他人の人生が失われていく恐怖が増幅する。 (……なあ、神様…………たまには、あたしの願い通り、誰かを助けさせてくれよ……助けようとするたびに人が死ぬなら、償う事もできないじゃねえか……こんな酷い事ってあるのかよ……) 誰かを助ける心が、世界に一度でも受け入れられた事があっただろうか。 全て裏目に出て、杏子や周りを不幸にしてしまう。 誰かを助けたいと思ってしまう心が罪なら、その罪を償う方法など最初からあるはずもない。誰かを助けようとするたびに誰かが死に、誰かが傷つく。 誰かを救おうとする心が、必ずしも誰かを救う結果にたどり着くわけではないが、彼女の場合は状況を悪化させてしまうのだ。 (……やっぱり、あたしがあの兄ちゃんを助けようっていうのが間違いなのかもな) ────そう思った瞬間、ネクサスは這うのをやめた。全身の力が抜けたのである。月並みな言い方なら、一本の糸が切れたような瞬間だった。 翔太郎には申し訳ないが、このまま助けようとする事こそが、また新しい罪を生む。 杏子にできるのは、そうならないために「助けない」事であるように思えたのだ。 そうすれば、きっとドウコクは翔太郎を殺した後、杏子を殺す。 それでいいじゃないか。 それで……全ては丸く収まるじゃないか。 それで、あたしも楽になるじゃないか。 エナジーコアが点滅を早めていく。今にも消えそうなほどに、その光は闇へと近づいていく。光の力が弱まり、ネクサスとして変身できる力がだんだんと失われつつあった。 このまま眠ってしまうのも、悪くないかもしれない。 いや、悪くないというより、それが最良の判断なのかもしれない。 「……オイ、アンコ。何で向かうのをやめるんだ?」 指輪が、杏子にそう言った。 そういえば、ザルバを嵌めていたのを忘れかけていた。こいつにも謝らなければならないだろうか。ドウコクについでとして破壊させるかもしれないザルバに謝罪の言葉をかけたいところだったが、そんな気力さえわかなかった。 もうこのまま、何も聞かず、何もせず、何も考えないのが丁度良いと思えたのだ。 それこそ、何もかもが裏目に出る人間の最期に相応しいではないか。 「……諦めるのか? お前にもあの悲鳴が聞こえるんだろ? お前には戦う力があるんだぜ? それなら、あの悲鳴を止める事だってできるはずだ」 ザルバはそう言う。 確かに、どんなに聴覚をシャットダウンしようとしても、簡単に消せる感覚ではなかった。杏子の耳には、いまだはっきりと翔太郎の悲鳴が聞こえる。エナジーコアの点滅音や、ザルバの言葉とともに、ひたすら生々しく翔太郎の声が届いた。 だんだんとガラガラ声を交えているのは、声が枯れている証拠だろうか。 それがまた、杏子の罪悪感を掻き立てる。 お菓子でも食べて食欲を満たさなければ苛立ちで心がパンクしそうになる。 「……なあ、俺はあんたとはほとんど初対面だが、あんまり見ていられないんで、この際はっきり言わせてもらうぜ。──アンコ、お前は弱すぎる」 どんな怒号が飛び込んでくるかと思えば、かなりバッサリと斬り捨てられた。 怒号を期待していたせいもあってか、少し気が抜けてしまった。 (うるさい指輪だとは思ってたけど…………………やっぱり本当にうるさいな) 杏子は苦笑する。 このまま生きるのを諦めたというのに、ザルバはやたらと冷静だった。 杏子が生きるのを諦めれば、ザルバも死んでしまう。だが、それにしてはザルバは冷静に杏子に語りかけていた。 「……でもな、どんなになっても、どんなに自分が弱くても、どんなに強い敵が相手でもな……誰かを救おうっていう意志がないと、誰も守れない。……俺はそんな強い意志で、自分より強い敵と戦った男を何人も知ってる。あいつらに比べて、今のあんたにはあの兄ちゃんを救う意志ってのが感じられないぜ」 そこはやはり、冴島大河や冴島鋼牙など、あらゆる魔戒騎士──その最高位たる黄金騎士の相棒をやってきたザルバである。 多くの戦士たちと出会い、ザルバは彼らがどうあってもホラーから人を守ろうとしている姿を見てきた。 それに対して、こうしてすぐ諦めようとする杏子には、憤りも感じている。だが、それを口に出したところでどうにもならない。冷静に、なだめるようにそれを言う。 そもそも、杏子は先ほどまで、ネクサスとして立派に誰かを救おうとして戦い、倒れてもなお這っていたではないか。あんなに必死で這って、誰かを助けようと進める彼女を、ザルバは応援したくなった。 それを、何故諦めてしまうのか。それがザルバには理解できなかったのである。 (……確かに、助けようと思わなかったら、兄ちゃんは死んじまうだけかもしれない……) このまま放っておけば翔太郎は死ぬ。 助けようとして死んでしまう事があるかもしれないが、仮に助けなかったとしても、翔太郎は死んでしまう。 「……まっ、まともに戦ったところで勝算はゼロだと思うがな。あのドウコクって奴、なかなか強い……鋼牙でも勝てるかどうかってところだ。だから戦うのはやめといたほうがいいな。助けてやるなら、それ以外の方法で助けるといい」 実はザルバの知る鋼牙は、ここに来ている鋼牙より少し前の鋼牙である。 本来、バラゴを倒した後のザルバならばバラゴの事など知る由もない。戦闘で破壊され、記憶を失って修復された新しいザルバなのだから。 しかし、実際問題、ドウコクは十臓などと渡り合える剣の達人であり、場合によれば鋼牙とも充分に渡り合える相手に違いなかった。 (戦って勝つ以外……? 一緒に逃げるってのか?) そういえば、杏子は先ほどまで、ドウコクがどこまでも追ってくる相手であると思っていた。 だから、戦うしかないと思っていたが、戦ったら確実に負ける。 そもそも、逃げきれる可能性を切り捨ててはならなかったのではないか。 戦って勝つ可能性なんかよりも、逃げ切る可能性の方が何倍も高いのではないか。 杏子は考える。 そうだ。確かに、戦って勝つ以外にも、逃げるという方法はある。 だが、この距離があるし、たどり着けるだけの力もない。 しかし、まずは立ち上がらなければならないだろう。 どうする。 立ち上がらないでこのまま倒れるか、あるいは、力を出し惜しみして這いつくばるか。 立てるくらいの力があるかもしれないと考えて、全身の力を体に込めるか。 そのまま走ろうとできるのか。 すぐに答えは出た。 全身の力を両腕に込める。 起き上がろうと立ち上がる。 身体はふらふらだが、両腕に力がみなぎり、足にも力を送る。 前にふらっと揺れたが、何とかネクサスは立ち上がった。 エナジーコアが音を加速し、更なるエネルギーの消耗を示している。 時間はない。 (──走れるか?) 見れば、ネクサスの目の前で、ダブルに向けて剣が向けられ、振り下ろされようとしていた。ダブルは動けないようで、その攻撃に抵抗もできずに仰向けに倒れていた。 やっぱり、ドウコクをあのまま放っておけない。 ドウコクがダブルを殺すのを、ネクサスは止めなければならない。 (────いや、走るんだ!!) ネクサスは、身体の全エネルギーをかけて、走り出す。 間に合うかはわからない。 いや、間に合う確率は絶望的だ。この距離が空いていて、既にネクサスはよろよろと走るしかできない。ドウコクの腕はもうダブルに向けて振り下ろされようとしている。 間に合え。 間に合え……。 必死に前へ前へと身体をふらつかせるように、手を振る事さえもできずにネクサスは走る。走るたびに、ネクサスは加速する。 ゴールは近い。 あの一撃をネクサスは防げるのか? それとも、防ぐ事もできず、ただ疲れたうえにドウコクとの距離を縮め、少し死期を早めて死んでしまうのか。 (……間に合え!!) 時系列順で読む Back 金の心を持つ男Next 赤く熱い鼓動(中編) 投下順で読む Back 金の心を持つ男Next 赤く熱い鼓動(中編) Back 街角軍記 佐倉杏子 Next 赤く熱い鼓動(中編) Back 街角軍記 左翔太郎 Next 赤く熱い鼓動(中編) Back 街角軍記 血祭ドウコク Next 赤く熱い鼓動(中編)
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/370.html
かがやく空ときみの声(前編) ◆gry038wOvE 昼も近づいてきた頃、一匹の猫が、殺し合いの現実さえ忘れてはしゃいでいた。 眼は見開いているのかさえわからないほど一直線で、笑顔を見せているように見える。 人ごみのある街ならば、その身軽な動きに心を奪われるものがいたかもしれない。 この猫は、ただの猫ではないのである。だから、人目につく。 赤い服を着ていて、おさげ髪で、その体格は人とほぼ同じ。 と、その特徴を脳内で反芻してから、初めて気づく。 これは猫ではない。人だ。 人のように巨大な猫ではない。猫のように身軽な人なのだ。 その脳内も、猫の思考に染まっている。思考の遥か奥までも、ほぼ完全に猫化しているのだ。 「にゃーん♪」 鳴いている。 猫のように丸めた指先──蛇さえも敵としない、猫の爪。 それは彼の武器だった。 そして、その猫は、偶然にも最悪のクワガタ虫と遭遇してしまった。 本当の猫とクワガタならば、易々退治できるであろう相手だが──それがどちらも、人であり、それらの要素を受け継いだ戦士であるのなら、結果はわからない。 いや、猫が圧倒的に不利だった。 所詮は、彼は人間の枠の中でもがいた人間だった。 だが、敵は違う。 人間を超える力を得た、最低最悪の人間だった。 「……君は僕を笑顔にできるかな?」 闘争を求める悪鬼。 クワガタの戦士──ン・ダグバ・ゼバ。 その足元に、何も知らない猫はぶつかった。その瞬間、猫の顔から笑顔が消えた。 それがじゃれあえる相手でないのは、猫の生物的直感が告げたのだ。 猫拳の使い手──早乙女乱馬。 ここまで接触して、初めて戦いが始まる。 「……にゃーご…………ニ゙ャ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァァッ!!!」 喧嘩をする猫の、うなるような鳴き声が街に響く。 ダグバさえ感知しない一瞬に、ダグバの着ていた白い服が胸元から三本の爪痕とともに裂けていた。美少年の華奢な体がその中から見えている。 近くを女性が通ったら、騒ぎ出す声が聞えるかもしれない。ここが乱馬の通っている高校の敷地内ならば、間違いなく黄色い雄たけびが聞えたことだろう。 「へえ、意外と強いんだね」 ダグバは、もはや服など必要のない姿に変身する。 白い体を幾つもの金色の装飾品で飾った、偉大なるグロンギの王の姿に。 それを見て、乱馬は飛び上がり、何歩か引いた。四つんばいのまま、その姿を警戒していた。 全身の身の毛を上がらせて、彼はダグバの様子を伺う。 「……変身はできるかな? まあいいや」 ダグバは乱馬を殺すために、前へと走り出した。 今回は、火は使わない。人間は、火を使ったら、ごく簡単に燃え尽きてしまうような、あっけない存在だからだ。 少なくとも、彼は生身。 生身の人間にしては強いという程度。ダグバが殺したグロンギの下級戦士よりも、おそらくは強い。だが、火では死んでしまう。 ダグバは知らないが、ラ・バルバ・デは人間の戦士──一条薫を興味対象にしていたし、グロンギでさえ認められる人間というのは確かにいた。 乱馬のように特殊な修行を受けた人間が、グロンギの興味を引くのは必然だったかもしれない。ましてや、猫拳を使う乱馬は、人間の時よりも理性が効かず、強い。 そいつを、あっさり火で殺してしまってはつまらないからだ。 「にゃぉっ!」 乱馬は、助走をつけたダグバのパンチを避けるために右方に避けた。 アスファルトの地面が、深く陥没する。その衝撃は、乱馬にも伝った。 猫は少し震えた。 勝てない存在を知ったのか。──この恐ろしい生物を前に、どう立ち向かうか迷った。 「乱馬さん!」 そこに、特殊武装に身を包んだ女性が通りかかる。乱馬を追ってきた、アインハルト・ストラトスという少女である。ただし、今の姿は少女のものではなかった。 覇王形態。 乱馬を追うのに都合がいいゆえ、彼女は既に変身した状態だった。 ダグバと乱馬の視線は、そちらに注がれる。 アインハルトは、目の前で起こっている出来事がどういう状況なのかわからず、少し思考を停止してしまった。 だが、そこから乱馬の警戒と、ダグバの殺気を感じて顔をこわばらせる。 また、自分に関わった人が巻き込まれている。──自分を助けてくれた人が、強敵に立ち向かっている。 無論、助けなければならない。 乱馬さんに、絶対お礼を言うんだ。 「君も僕を笑顔にしてくれるの?」 ダグバは問う。 その武装した外形から、彼女が戦闘の準備を果たしていることを察したのである。 だが、その問いにアインハルトは答えない。息を呑んだ後、乱馬に聞いた。 「……逃げてください、乱馬さん。助けてくれたお返しをします」 息を呑んだせいか、少しテンポの悪い言い方になってしまった。 魔力消費、大。 ダメージ、大。 疲労、極大。 勝率、およそ0パーセント。 それらのデータが、アインハルトにもはっきりとわかる。だが、死ぬのが怖いとしても、無責任な行動はしたくない。 だが、乱馬への恩義を果たさねばならない。この「死への恐怖」が存続されるのなら、あそこで死ぬのも悪くなかったかもしれない……そんな考えも頭を過ぎる。 少し、考えていることが矛盾している。 「二人がかりで構わないよ?」 ダグバは自信に満ちた言葉をかける。 先ほど、一人参加者を殺害した。その時点で、ダグバは殺傷のリズムを崩したくなかったのだ。このまま、軌道に乗って敵を殺し続けるためにも。 ダグバの力は、プリキュア一人の命を簡単に、完全に奪った。 ────そういえば「乱馬君」と、あのプリキュアは口にしたか。 ダグバはそんなことを思い出す。それが、彼だったのだ。 だが、乱馬はこの強敵が、祈里、霧彦、ヴィヴィオの三名と交戦済みであることを知らない。 「……にゃー……」 その実、どこか乱馬はダグバの風貌から、仲間の匂いを感じていたのかもしれない。誰か親しい人──きっと祈里──と関連した悪い気配がする。 ただ、猫である彼にはその気配が何なのか具体的にはわからなかった。 乱馬は、悲しそうに鳴くだけだった。──怒りは無い。それは、猫としての野生の本能が流し込む恐怖の感情が、怒りを押しているからだろう。 普段の乱馬では、まずこんなことにはならない。 乱馬らしい「意地っ張り」精神が消えているのが、猫拳のデメリットだろうか。 「……覇王」 アインハルトが前に向かって走る。 ダグバは、乱馬から注意を完全に逸らした。凄まじい速さで駆け巡るアインハルトの方を眺めたのである。 しかし、アインハルトの殺気を感じながらも、ダグバの行動は比較的スローモーションだった。彼は、ゆっくりとそちらを眺めるだけで、激しいアクションを一切しない。 「────断空拳!!」 ドンッ! アインハルトの速度は一瞬で、ダグバとの距離を詰める。重い一撃が、ダグバのベルトのバックルに当たると、流石にダグバの体も後方に吹き飛んだ。 いや、端から彼はその攻撃を受けてみようと思っていたのだろう。 (やっぱり、この人は、あの人の仲間……!) アインハルトは、ダグバが吹き飛んでいる瞬間に、最初に会ったコウモリの怪人のことを思い出した。 あの怪物のベルトのバックル部と同様のものを、ダグバは装着していたのである。 それにしては、日本語が上手な気がするが、所在している国そのものが違うのかもしれない。 仲間、というよりは同属だろうか。彼ら同士が、互いを認識していたかどうかもわからない。 しかし、アインハルトにはわかった。 その種族が、間違いなく人間の脅威であることが── 「今度は僕の番だね」 あっさりと、ダグバは起き上がった。 地面にたたきつけられても、逆に地面の方に致命的なダメージを残して立ち上がる。それがダグバだった。 一方、アインハルトは、今の一撃でも消耗するほどの体力だった。 反撃が来ることがわかっているのに、動けそうにない。 「……ふふ」 ダグバは、その刹那、地面を強く蹴った。 一瞬で、ダグバの豪腕が、アインハルトに近づいてくる。 だが、アインハルトには、その想定外の速さに回避の術がなかった。 ただでさえ、ギリギリ避けられるかの体力だったのだ。その体力を駆使し、ダグバの拳が飛んでくる瞬間に右か左に避ける予定だったが、意外な速さを前に、飛ばなければならないタイミングを逃した。 まずい────。 「にゃぁぁぁっ!!」 しかし、その真横から身軽な猫がダグバへとタックルをかます。 ダグバの体が横に吹き飛び、ダグバの拳がアインハルトの顔に衝突する前に、攻撃は中断された。 だが、ダグバもこれまたあっさり立ち上がる。 乱馬は、また発情期の猫のように唸った。 この静かな街に、猫による雑音が流れる。 乱馬の鳴き声は、アインハルトの耳も打つ。本当の猫のようだった。 一体、今の乱馬がどういう状態なのか、アインハルトは知る由もない。 「────乱馬さん」 すぐに、アインハルトはそんな乱馬の横に寄った。 また乱馬に助けられてしまった。いや、もう助けられることしかできないのかもしれない。 はっきり言って、もうアインハルトには乱馬を助けられるだけの力はない。それでも乱馬を助けようとしたのは、こうした敵と遭遇する前に孤門たちのところに戻すためだった。 だが、結局敵と遭遇してしまったのだ。己の不幸を呪うしかない。 「やっぱり、強いのはそっちだけみたいだね」 乱馬を見て、ダグバは言う。アインハルトの胸に、その言葉は突き刺さった。 女である、子供である、現在疲労し切っている──そうした不利な要素があるとはいえ、こう言われることでアインハルトはコンプレックスを刺激された。 足手まとい、という言葉が頭の中で組み立てられていく。ダグバは一言もそう言ってはいないが、まるで直接そう言われたような気分だった。 「……でも、リントにしては少し強いくらいかな」 変身もしない相手が、ダグバを押し倒すなど、滅多なことではない。 乱馬が、人間離れした身体能力の持ち主である証だった。 仮に猫拳を使っていなかったとしても、押し倒すくらいはギリギリ可能だったかもしれない。 「────乱馬!」 また、戦いの緊張感を裂く女性の声が街に響いた。高い声だったので、どうしても耳に入りやすい。 それは、猫化した乱馬にも認識できる唯一の女性であった。 天道あかね。 どうやら、彼女もこの場所にたどり着いたらしい。 そして、乱馬の様子を見て初めて、彼が猫拳を発動していることと、アインハルトの体が急に成長したこと、怪物がいることに気づいた。 「おい、ちょっと待ってくれよ姉ちゃん……はぁ……はぁ、なんでそんなに早く走れんだよ、陸上部か何かやってたのか?」 「源太さん、ホラ、見て! あいつら……」 「あっ! あいつはまさか外道衆か!? ……いや、なんかまた違うみてえだが」 続いて現れた梅盛源太も、その異様な光景に立ち止まる。 全身の疲労さえ忘れさせる、異形の怪物の睨み。──悪しき大気に包まれた、不気味な怪人。 源太は、その顔を見て、眉を顰めた。 おそらく、自分が侍として相対すべき悪なのだと、源太は知ったのだ。 ダグバは、彼ら二人を見るのをやめ、乱馬たちに視線を戻した。 「一貫献上!」 シンケンゴールドへと変身した彼は、サカナマルを両手に構えながら走る。 ダグバが何か、実害を及ぼしているのを見たわけではない。 しかし、乱馬と、その隣の女性の怯えた表情だけはわかった。 走りながら、彼は名乗る。 「……シンケンゴールド、梅盛源太、参る!」 だが、その煌きは一瞬で吹き飛ばされた。 ダグバが、裏拳でシンケンゴールドのマスクを叩いたのだ。サカナマルがダグバの体に到達する前に、あっさりとダグバはその攻撃を回避する。 それも、相手にダメージを与える形で。 「くそぉっ……なんだよいきなり……っていうか、こいつマジで強え」 シンケンゴールドは、サカナマルをクロスして構えながら、じりじりと乱馬たちの方へ寄った。ダグバの正面に立って、表情を見て戦いたいと思ったのだ。 だが、そうしているうちに恐ろしくなる。 彼の前に立った瞬間、この程度では済まなくなるような気がしたのだ。 「……おいっ、兄ちゃん、姉ちゃん、逃げろ。こいつは俺が食い止めるからな!」 それでも、威勢だけは忘れない。 どんな窮地に立たされたとしても、ここで逃げたり、女性を死なせてしまったりしたら、それこそ丈瑠に合わせる顔がないというもの。 この場に、うまい具合にシンケンレッドの助けが来ないか、などと期待しながら、ダグバを見つめた。 気づけば、自分の立ち位置は完全にダグバの真正面だった。 「……源太さん、ごめんなさい! 少しだけ時間を稼いで!」 「合点承知!」 あかねの高らかな声を合図に、ダグバへと再び攻撃を仕掛ける。 ダグバの両手が、サカナマルを構えながら、ダグバの体へと伸ばされる。 しかし、そんな両手は、気づけばダグバの両手に締め付けられていた。 「乱馬、こっちよ」 あかねは、源太に再び心の中で謝りながら乱馬を呼ぶ。 乱馬を元の乱馬に戻さなければならない。 猫拳がいくら敗北を知らぬ最強の拳法だとしても、殺し合いの場であんな精神状態の乱馬をほうっておくわけにはいかない。 乱馬をなだめられるのは、あかねだけなのだ。 あかねは、戦いが飛び火しないことを祈りながら、その場で正座した。 乱馬は、あかねの様子を見て嬉しそうに駆け、その膝に、これまた嬉しそうに座った。 「よーし、よーし」 「っておい、何だよオイ! 何してんだ、姉ちゃん」 「うるさいわねっ!」 あかねは、源太が言ってきたことを怒鳴ってかわす。 事情を知らない人間には当然の反応だが、彼女だって今、遊んでいるわけではなかった。 だいたい、仕方がない状況だからこうしているわけで、恥ずかしいから、こんなことしたくないのだ。 シンケンゴールドが、そうしてダグバに封じられている隙に、再びアインハルトがダグバのわき腹に一撃を叩き込んだ。 本当はバックルの部分を狙おうとしたが、正面にシンケンゴールドがいたために、それは叶わなかった。 ダグバは、今度はアインハルトに注意を向けた。 アインハルトは、きりっと決めた表情でにらんだつもりだったが、ダグバの目にはその恐怖の表情がはっきりと映っていた。 だから、少し笑った。 怖がっているのに、自ら攻撃してくるとは。 ダグバは、シンケンゴールドの両手を離し、思わず足を引きずりながら退いていくアインハルトに、またゆっくりと近づいた。 シンケンゴールドは、サカナマルを反射的に手放す。両手首が、かつてないほど強く痛んだのだ。 サカナマルを握って敵を倒せるだけの力が無さそうだった。 「猫ぉーーーーっ!!」 と、今度は乱馬の絶叫で、またしても全員の注意がそちらに注がれる。 あかねによって、乱馬が元に戻ったのである。 その最後の記憶は、アスティオンが顔に引っ付いた恐怖の記憶だったがゆえ、彼はそう叫んだ。 そんな乱馬の後頭部を、あかねがポンと叩いた。……と表現すれば聞えはいいが、ぶっちゃけグーで殴っていた。 「……おい、一体どうしたんだよあかね……あいつは、」 「なんだかわからないけど、とにかく敵が出たみたいなのよ。あんたは猫拳でバカになってたわけ」 「……そんなことはどうでもいいんだよ。あいつは、霧彦とヴィヴィオが言ってたヤツじゃねえか……」 乱馬の中で、闘志が燃えてくる。 また、乱馬の理解を超える強敵が現れた。それも、何の脈絡もなく。 霧彦とヴィヴィオが言っていたあの怪人の特徴と一致した、ダグバの外形。先ほどからずっとダグバを前にしていたのだが、乱馬がそれに気がついたのは今この瞬間だった。 だが、おそらくその特徴を知らなかったとしても、乱馬はダグバを敵と認識したのではないかと思う。ダグバから放たれる殺気は、乱馬の全身に鳥肌を立たせるほどとてつもないものだったからだ。 乱馬は、少し体をポキポキと鳴らしてから、ダグバに語りかける。 「おい、そこのバケモン。うちのヴィヴィオがずいぶん世話になったそうじゃねえか」 「やっとリントの言葉で話したね」 「チャラチャラした格好しやがって。女ばっかり相手にしてねえで、俺と一対一で勝負しようぜ」 女性が弱いことを前提にした発言だが、女性の体にコンプレックスのある乱馬は、男性と比較したときの女性の弱さを誰よりも知っている。 「えっと、アイハルトか……?」 アインハルトが苦しそうな表情をしつつも、頷く。 「ヴィヴィオにアインハルト……女ばっかり相手にしやがって」 乱馬は、そう言った後に、はっと気づく。 厭な予感がした。女性の死亡者が多数出ていたことを思い出した。なのは、フェイト、シャンプーなどの名前も知っている。 彼が、霧彦やヴィヴィオ、アインハルトに源太などと戦っているのはわかっているが、他にも交戦している可能性はある。あくまで、乱馬は、ダグバと戦って生存した人間の情報しか持っていないのだ。 乱馬は恐る恐る聞いてみた。 こいつが死人を出している可能性が浮かんだのである。 「……まさか、一人も殺してねえだろうな、バケモン」 「教えてあげようか? ……そうだね、教えたら、もっと強くなってくれそうだし」 ダグバはニヤリと笑った。 乱馬は、厭な予感が当たってしまったことで眉を顰め、固唾を呑んだ。 人殺し。許されてはならない大罪人である。それが、あかねや自分の前にいるのだ。 「プリキュアっていうリントを、一人殺したよ。ダークプリキュア、かな? 君のことも知ってたよ」 乱馬は、プリキュアという言葉で思い当たる少女がいた。 プリキュアも乱馬のことを知っているというのなら、それは、間違いない。 山吹祈里──キュアパインだ。 「…………………あかね、下がってろ」 殺した張本人は、笑っていた。 あかねに近づけさせまいと、まずあかねにそう言った。 だが、ダグバは当然遠ざかったりしない。あかねの方を遠ざけるよう、乱馬はそう呼びかけたのである。 「お前らもだ、源太、アインハルト……」 乱馬は、ダグバを真っ直ぐ見つめたまま、わなわなと震えていた。 怖いわけでもない。武者震いでもない。 ただ、静かだがメラメラと燃える炎で揺れているだけだった。 怒り。 乱馬が、これまで感じたどんな怒りよりも強い怒りだった。なぜなら、人一人の命がそこに関わっているからだった。 「テメーは俺が絶対ブッ殺す!!!!!」 山吹祈里。 ダグバが殺したのはダークプリキュアではない。彼女だ。 乱馬よりもずっと幼い少女だ。 何らかの理由で霧彦と離れたのか、あるいは霧彦も、下手をすれば、後からそこに向かった美希やいつきや沖も……しかし、乱馬はそれについて聞きたくなかった。 その先を聞くと、乱馬の中で死人の名前が増えてしまう気がしたのだ。 今、乱馬がコイツに感じるべき怒りはひとつでいい。 コイツが、祈里の命を奪ったという事実。 それが、乱馬には許せない。──乱馬の心ひとつはちきれそうなほどに、怒りが胸から湧き上がっている。 いや、乱馬以外の誰であっても、知り合いの死を簡単に受け入れることはできないだろう。知り合いを殺した人間を許すこともできないし、そんな相手をブチのめさずにいられるわけがない。 「ねえ、もっと僕を笑顔にしてくれるよね?」 「笑顔? ざけんじゃねえ!!! 俺はテメエがどれだけ謝っても許してやらねえし、テメエがどれだけ泣いても殴るのをやめねえ……祈里を殺したってのが、冗談だったとしても、死ぬまで絶対許さねえ!!」 冗談ではないのはわかっていた。 冗談を言うべき場面ではないし、ここは人の死をネタにした冗談を言っていい場所じゃない。 乱馬は、おそらく初めて、本気で人を殺す気で拳を握っていた。 「乱馬!」 「下がってろっつってんだろ、あかね! コイツは只者じゃねえ……それはわかるだろ?」 あかねも、ダグバの強い殺気を感じていた。 ダグバが何の恨みも持たず、ただ純粋に殺しを楽しんでいるゆえか──何とも不安定な殺気だったが、それが全てを飲み込むに等しい殺気であるのがわかる。 十臓を除くこれまでの死亡者──シャンプーさえも──が、全てこの一人の怪物から生み出されたとしても、あかねは疑わないだろう。 ダークプリキュアや仮面ライダーエターナル以上なのはおそらく間違いない。 「お前が出てきて勝てる相手じゃねえ……さっさと逃げてもらわないと困んだよ!!」 「でも、乱馬……!」 だが、あかねは、ダグバがおそらく、乱馬さえ凌駕する強さの持ち主だとにらんでいた。 乱馬も知っているはずだ。きっと、怒りに気を取られているから、わからないのだ。 「忘れんな、あかね。俺は負けねえ。俺は格闘と名のつく物で負けたことは、無え!! 俺を信じて待ってろ。……源太とかいう寿司屋、お前があかねとアインハルト連れて、ヴィヴィオたちのところへ行け」 源太は、その一言では乱馬の言いなりにはならなかった。 「いや、俺も戦う!!」 「ふざけんな!! 誰かが連れてかねえと、この凶暴女はまたこっちに帰ってくんだよ……!! あかねをコイツとの戦いに巻き込むことだけは、俺が許さねえ。俺は大丈夫だ」 乱馬は、ある構えをした。 以前、キュアパインに防がれた技。本来、封印すべき技。 だが、その強さは、今だけは強靭だった。 今ならば、この技を乱馬に放った張本人・良牙を超えるほどの技を撃てる。 「獅子咆哮弾!!」 黒炎が龍のように、ダグバの体へと放たれた。 アインハルトとシンケンゴールドは絶句する。人間の手から放たれた、不思議な炎に目をぱちくりさせる。 それは、祈里を失った怒り、そして乱馬自身もこれから人の道を踏外さなければならないという悲しみ──そうした不幸に塗られた、悲しい獅子の咆哮だった。 「……見ろよ、これでも俺が心配か?」 ダグバも少し驚いたようだが、獅子咆哮弾に呑まれながら笑っていた。 リントの限界を超えたリントの姿に、初めて出会ったのだ。 リントの姿のまま、こんなことをやってのける相手は乱馬が初めてだった。 しかし、ダメージそのものは弱い。 「……さっさと行きやがれ。ほうっておいたら、あのバケモンは誰にも容赦しねえだろ。あかねとアインハルトをよろしく頼む」 「……おい、俺はもう御免だぜ。あの十臓って客みたいに、俺たちのために誰かが死ぬなんて」 「そいつが誰だか知らねえが、安心しろよ。俺は死なねえ」 乱馬の手のひらから血が滴っていた。 どれだけ強く拳を握っているのだろうか。爪が立てられているから、手のひらが血を流しているのである。 「……信じるぜ、兄ちゃん。だから、裏切るなよ」 シンケンゴールドが、そう言ってアインハルトの手を握り走り出す。 アインハルトは浮かない表情だった。だが、恐怖から解放されたような安堵感を感じている。 それで、アインハルトはまたはっとした。 乱馬が身代わりにこの男と戦っていることで、自分が傷つかない──それで安心している自分に気がついたのだ。 「乱馬さん」 シンケンゴールドが、あかねを連れる過程で乱馬に近づいたとき、アインハルトは乱馬の耳元で一言名前を呼んだ。 「ベルトのバックルを狙ってください」 乱馬はダグバの腹のベルトに目をやる。バックルは、奇抜な形をしていた。 普段なら厭でも目立つが、ダグバの体はさまざまな装飾で飾られていたので、そんなところには目が行きにくい。 「あれを狙えば、変身ができなくなる……かもしれません」 ゴオマの時を思い出す。 あの時も、バックルを殴った結果、ゴオマは変身できなくなった。 「ありがとよ。……そうだ。ヴィヴィオには、祈里が死んだことを絶対に言わないでくれよ……まあ、放送で知っちまうかもしれないけど、それでもそんな事は知らなくて、いい」 「…………わかりました」 「にゃー!」 「それから、その猫こっちに向けんな」 乱馬は、アスティオンを前にしても、今は動揺しなかった。 怒りが、感覚を麻痺させている証だ。 猫を前にしたのに、感覚的には、「少し苦手」というだけ。あの猫拳の修行のトラウマさえ、乱馬の脳裏には浮かばなかった。 それだけ、ダグバに対する怒りは強かった。 そんな中でも、乱馬はあかねを巻き込みたくない気持ちを最優先した。 乱馬という男が、あかねという女との出会いの中で変わった証だった。 「……乱馬」 「あかね、さっさと逃げろ。俺は一秒でも早くアイツをブン殴りたくてウズウズしてるんだ。お前らが逃げれば、俺は何も気にせずアイツをブチのめせる。だから、さっさと行け」 「……乱馬。絶対、戻ってきてよね」 「あたりめえだろ。俺がいなかったら、誰がお前のクソマズい飯を食ってやるんだ。豚だって喰わねえぞ、あんな飯」 乱馬の頭が、あかねのグーで軽く殴られた。あまり痛くなかった。きっと、痛みを感じないよう優しくしてくれたのだろう。 あかねは、これだけのことを言われても、イラッとはこなかった。 ただ、これが乱馬に触れられる最後のチャンスであるような、そんな悪い予感がしたから、少し不器用なスキンシップのつもりだった。 「早く行けよ。何回言わせんだ!」 「そうだ、行くぜ、二人とも!」 シンケンゴールドが、二人の少女の手を引いて去っていく。 その姿を、乱馬は見ようとしなかった。 今から、この世に一人のつもりで、戦うのだ。 自分が死んでも、この世に何も影響がないように……。 それでも、あかねともう一度会いたい気持ちは振り払えない。頭の片隅に、戦い以外の存在がいた。 負けるつもりは、もちろんない。 けれど、死ぬかもしれない。 もし、乱馬は勝ったとしても────天道あかねにはもう会えない。 ここで、人を殺すのだから。 好きな人を、人殺しの許婚になんてさせられるわけがないのだ。 「おい、テメーも邪魔者が消えたみたいな顔して、随分嬉しそうじゃねえか」 「そうだね」 「じゃあ教えてやる。この地上で一番邪魔なのは、────テメーなんだよ!!!!」 乱馬は、駆け出した。 拳を、すばやくダグバの体へと向けて突き出す。 百本近い腕が数秒に繰り出された。 注意しておくが、乱馬の腕はたった二本しかない。その二つの腕が、その数秒に五十回突き出されただけである。 「────!」 あいも変わらず、この怪物は笑っている。 殴られる事さえも、ゲームの楽しみだったのだ。 人間の筋肉構造とは思えないほど、活発に活動する乱馬の腕に驚きながらも、彼なら可能かもしれないとダグバは思った。 「うらっ!」 乱馬は打撃をやめ、長い足を利用してダグバの股を狙ったキックを放つ。 いわゆる金的だが、ダグバはそれを物ともせずに、パンチの嵐を止めた乱馬の顔面に一撃、叩き込む。 乱馬のこれまでの常識を超えた一撃だった。 「……ぐぁっ!!!」 鼻でも折れたか。 これまでの修行では珍しいことではない。今や、アスファルトに叩きつけられたとしても折れないような強靭な骨が、こんなにもあっさりと折られるのはまた意外だったが……。 「チッ。顔を殴るんじゃねえ!! 色男が台無しになるだろーがっ!!」 「ふふ……」 「……チッ」 冗談を言ったのは、乱馬のやせ我慢だ。 こうしていないと、相手に屈してしまう。それくらいの威圧感だったから、こうして気分を高揚させて恐怖の感覚を麻痺させようとしていた。 こんな冗談めいた言葉を言う唇が、いつになく震えていた。 (……猛虎高飛車は使えそうにねえ) 強気でなければ放てない技は、この状況下使えそうにない。 乱馬がいかに無神経で、常に自信過剰な性格であっても、ダグバはそれを押し潰すほどの強靭な存在だった。 (そのうえ、これだけ強いくせに闘気も不安定で、飛竜昇天破も使えねえ) また、相手の闘気を利用した技も使えない。 ダグバは、攻撃を待って突っ立っているようなものだ。 殺気は強い。だが、それはまた奇妙な殺気で、怒りやら悲しみやらを力に変えるそぶりが無い。最初から渦を巻いたような、不気味な闘気だった。うかつに障るべきでない部分だ。 それに、むしろ今は乱馬が言い知れぬ怒りに任せて戦っている。 ダグバがあの技を使えるかはわからないが、何にせよ警戒すべきだろう。 では、他にどんな技があるのか──乱馬は考える。 猛虎落地勢、魔犬慟哭破、敵前大逆走。乱馬の頭を過ぎるのは、そんなスチャラカな奥義ばかりだった。 無差別格闘早乙女流のあまりの使いようの無さを、乱馬は呪った。 (やっぱりあれが一番か) 何度でも使うしかない。 あの呪われた技、獅子咆哮弾を。 この技だけは、今の乱馬をどこまでも強くする。 乱馬は、ある程度の距離を置いてから叫んだ。 「獅子咆哮弾!」 この時、乱馬が考えたのは、シャンプーのことだった。 彼女はおそらく、もういないだろう。 中国にいた時、彼女は何度も女乱馬の命を狙ってきた。これまでに何度か、「いなくなれ」と思ったこともある。 だが、────彼女は、ある日から男乱馬を愛するようになり、やがて女乱馬さえも愛するようになった。 あかねの命を狙っているが、いつの間にか彼女は喧騒ばかりを残して、命の取り合いなど忘れさせた。 もう、いない。 仮に乱馬が天道道場に帰ったとしても、それを壊しに来るチャイナ娘はいないし、ラーメン屋の妖怪ババアや近眼男がシャンプーを探すのを、後ろめたい気持ちで見つめる毎日が待つだけだ。 「────あはは」 ダグバは、この一撃に呑まれても笑っている。 「獅子咆哮弾!!」 この時、乱馬が考えたのは、パンスト太郎のことだった。 彼が一人の少女の死に関わっている──それを知った乱馬は、パンスト太郎への見方を変えた。 たとえ、何度乱馬たちを襲っても、あんな少女の命を奪うことなんて、絶対にないと思っていたのに。 もう、パンスト太郎のことをライバルとして見られない。友人とも、見られない……。 このゲームが無ければ、もっとマシな関係のままでいられたのではないだろうか。 「────ははははは」 「獅子、咆哮弾!!!」 乱馬は、良牙のことを考えた。 この先、もし乱馬が死んだら、彼は悲しむだろうか。────逆に、良牙が死んだら、乱馬だって、きっと悲しいと思うだろう。 あるいは、もし乱馬が──たとえ相手がこんな怪物であっても──人を殺したら、彼は乱馬をどう思うだろうか。あの目で、軽蔑するんじゃないか。 それは厭だ。なんだかんだで男子校時代からの友人だったのだから。 あの男子校にいた時のパン屋でのいさかいから、三日も待ったのに果たされなかった決闘、それから、何度ぶつかることになったか数え切れない。 だが、それが日常だった。 普通の人が見れば、一見、物騒に見えるかもしれないが、楽しい日常……。 「────あっははははははは」 「獅、子、咆哮弾!!!」 ヴィヴィオとアインハルトのことを考えた。 大切な人が死ぬって、どれだけ悲しいことだろう。 クソ親父がいつどこでくたばったって、何も思わないんじゃないかって、思ってた。 母親がいるって知って、親の温かみを知った。 母親にその姿を見せてやりたくて、乱馬は何度も悩んだ。 高町なのは、フェイト・テスタロッサ。 だから、大事な母親を同時に二人も失ったヴィヴィオを見た時、乱馬は……。 「獅、子、咆、哮弾!!!!!」 祈里のことを思い出す。 祈里は死んでしまった。乱馬よりずっと幼く、しかし乱馬を慕った良き仲間。 霧彦のピンチに駆け出して、散々乱馬に心配をかけて、戻ってきて、あまりにも素直に謝った……どこまでも純粋な少女。 彼女も、もういない。 それが悲しくてムカつく。 短い付き合いだったが、乱馬はあのひと時が楽しかったのだ。 「獅、子、咆、哮、ダァァァァン!!!!!!!!!!」 あかね……。 この勝負が終わったら、俺はもう……。 「あははははははははは」 煙の中で、笑い声は止まらない。 だが、その笑みの裏に、僅かでも、きっと────確かな怒りが見えてきた。 ダグバは、少なからず闘気を放っている。 それが、この獅子咆哮弾の乱れ打ちの中で、見えてきた一つの希望だった。 「────僕の番だね」 ダグバは、乱馬のいた場所に向けて手を翳した。 発火のポーズである。生身であるにも関わらずしばらく楽しめそうな相手──乱馬。彼に対して、発火を行って勝負を強制終了するというのは、彼らしからぬ怒りの現われだった。 獅子咆哮弾による煙が晴れたら、この右手が火を放つ。 「……どこ向いてんだ? タコスケ」 はっと、ダグバが煙の中のどこからかその声を聞いた。 しかし、煙が運んだ声は、上空に向かって流れてしまうため、どこから聞えるのかはわからない……気配も無い。 ダグバは反射的に背後を向いた。相手の不意を突くならば、背後に回るだろうと考えたのだ。 最もベタなやり方だった。だから、ダグバはそのベタなやり方である可能性が最も高いと思って、後ろを向いた。 そこには誰もいない……。 ────いや、 「俺はここだ!」 獅子咆哮弾を放った後、乱馬はダグバの後ろについた。おそるべき速さと、巧妙な存在感のコントロールだった。 しかし、ダグバが振り向いたところで視界には入らない。 乱馬は、低い位置にしゃがみこんでいたのだ。ダグバの腰に、ようやく頭がある。 かがむようにして敵が振り返るのを待った彼。 その目的は簡単だった。 アインハルトに言われたとおりの弱点を潰すためだ。 「おらぁっ!!」 乱馬は、ダグバの所持品であり、──一人の命を奪い、血で汚れたがゆえに使い物にはならないため──その辺りに放棄されていた、クモジャキーの剣でダグバのベルトのバックルを突いた。 どうして、乱馬がこれを持っているのか、そして、どうしてこんな場所にいるのか、ダグバは疑問だったらしい。 海千拳。 それが、乱馬の使った技だった。 気配を消して、金目の物を盗んでいく『コソ泥』の拳。 今回盗んだのは、あまりにも堂々とその辺の道路に置かれていたダグバの所持品だった。 不幸なのは、乱馬が手に取った時点で、その剣はあまりにも汚れすぎていたことだろうか。 ダグバのベルトを砕くには、あまりに錆びに汚れすぎた。 「─────」 ダグバは、正真正銘何も言わなかった。笑ってさえ、いなかった。 だが、大事なベルトの装飾品を狙われたことで、反射的にその手を乱馬の方に翳した。 乱馬は、しゃがんだ状態から後方に飛んで避けたつもりだったが、乱馬の体よりも一歩遅れた「おさげ髪」に火が燃え移り、靡いた髪が今度はチャイナ服に燃え移った。 一瞬で、乱馬の体を火が包んだ。 「熱っ!!」 乱馬は燃え立ての瞬間こそ、そんな情けない声をあげたが、すぐにやせ我慢を始める。 「……………………ま、ちょっとは熱いけど、こんなもん……大したことはねえよな」 それは、ダグバに向けられた言葉ではなく、自分の意地に向けて、必死に語らう乱馬自身の乱馬自身への言葉だった。 負けそうな自分。 負けたくない自分。 母親の一件の時に、切腹が怖くて逃げ回ったような、弱い1/2の乱馬が、もう1/2の乱馬に支えられて、泣き言を忘れる。 「火中天津甘栗拳の修行に比べれば、熱くも何ともねえってんだよ!!」 乱馬の、燃えていく服の中から、切れ端と一緒に幾つかの『盗品』が零れていく。 リンクルン、ヒートメモリ、ナスカメモリ。 盗ったとき、はっとした。やはり見覚えがあったのだ。 リンクルン……これは、間違いなく祈里のものだし、ナスカメモリは霧彦のものだった。 祈里だけじゃなかった。 霧彦も、もういない……その証だった。 「もう一発だ、獅子咆哮弾!!!!!!!!!!」 その気圧が、乱馬の体の炎までも吹き飛ばした。 今回は、ダグバに向けられたものではない。良牙がかつて使おうとした、気柱を放つ「完全型」の獅子咆哮弾である。 乱馬が使うのは初めてだった。 ダグバも、体の軸をゆがめる。 初めて、その両手を顔の前で組んで、これから来る技への警戒を見せていた。 「────消えやがれ!!!!」 大量の気が、地面に向けて降ってくる。 本来、獅子咆哮弾を使うとき、使用者は「気」を抜かなければならないのだが…… ────乱馬にはできなかった。 悲しみや不幸だけでなく、怒りにまでも呑まれた乱馬の心は、簡単に気を抜いたりできる状況ではなかったのだ。気のコントロールは出来ない。 しかし、あまりに重過ぎる気は、ダグバにも確かにダメージを与えていた。 周囲の建物までも、次々に潰れていく。それだけの威力だった。 人の形をした、あまりに脆すぎる存在には、この理不尽な重荷に、どれだけ抵抗することが可能なのだろう。 雨や嵐、と言うにはあまりにも大雑把な、その落下物を浴びながら、乱馬の意識が途切れそうになった。 (あ、…………) 気づけば、乱馬の前に冷たい壁があった。 ダグバの前にも、壁があった。 地獄の門ではない。 地面だった。 しかしまた、少しずつ意識が朦朧としてきた。 乱馬の視界は真っ白になった。 ★ ★ ★ ★ ★ 「あれは……!!」 その気柱に、あかねたちが、気づかないはずがない。 あまりに巨大な気柱が、轟音を上げていたのだ。この近辺のエリアの人間ならば気づくだろう。 それが乱馬の放った獅子咆哮弾によるものだというのは、誰に説明されなくとも、あかねにはわかった。良牙か乱馬しかいないのだが、おそらく今戦っている乱馬だろう。位置もその辺りなので、よくわかった。 「……乱馬!」 乱馬が死ぬかもしれない。そんな気持ちに流されてそちらに向かおうとしたあかねの手首を、シンケンゴールドの手が掴む。 シンケンゴールドは、何も言わずに首を振った。 その横でアスティオンが、悲しそうに鳴く。 だが、アスティオンの猫のような鳴き声は、乱馬を彷彿とさせて、あかねには逆効果だった。乱馬は猫が大の苦手だった。 「離して! あれはきっと乱馬の技よ! 獅子咆哮弾の完成型……でも」 乱馬はその技を使ったことがない。 あの技を使ったのは、良牙である。 それに、あの技を使えば不幸に自分を落としていくだけだというのに、乱馬は使おうとしている。ただ、敵に勝つためだけに。 「だからって、なぁ姉ちゃん。あの兄ちゃんのことも信じてやろうぜ。俺たちはできる限り遠くに逃げるしかねえ……!」 「……源太さん。ここまで来れば、もうあの怪人は追ってこないと思います」 アインハルトが、いつになく凛々しくそう口にした。 彼女は、きっと、このまま背を向けられなかったのだろう。 だから、せめて、こうして少し離れた場所で、乱馬が命をかけ、激しく戦っているということだけ胸に焼き付けておきたかったのだ。 せめて、見届けようとアインハルトはここで立ち止まったのだ。 そして、ひとつ気になったことがあったので、あかねに少し質問をする。 「あかねさん。乱馬さんには、おそらくあの怪人にも弱点がある……ということを教えました」 「弱点!?」 「ベルトのバックルです。ここに来たとき、あの怪人と同種と思われる──コウモリの怪人と交戦しました。その際に腹部と背中を同時に攻撃したところ、怪人は変身が解除され、変身能力を失いました」 ズ・ゴオマ・グとの交戦を思い出すと、やはりあの攻撃がゴオマの変身能力を奪ったのではないかと推測できる。 あの時は、ほんの偶然──ただ最も目に入った箇所を殴っただけだったが、今になって思えば、あれが彼の弱点だったのではないだろうか。 そう、仮面ライダー1号こと本郷猛も、ベルトで変身していたではないか。 「あかねさん。あの技は、そうした特定の……ごく小さな的を攻撃できるような技なんでしょうか?」 「違う……あれは、もっと大雑把な攻撃よ」 「じゃあ、何か策があってあんな技を放っているんでしょうか?」 「……きっと、それも違うわ」 あかねは少し悲しげに言った。 「あいつ、ホンッッッッットに人の話を聞かないのよ。いっつも、大事な事を忘れてたり、大事な事を聞いてなかったり……いい加減な性格! 私たちとの約束だって、本当に聞いてたか…………本当に帰ってきてくれるか……………」 あかねは、怒りながら泣き出してしまった。 残る二人には、かける言葉もない。 乱馬がどうして、バックルを狙わないのかはわからない。 ただ、この戦いにおいては、乱馬には持久戦が不利であることと、既に二人の間では持久戦が始まってしまっていること……それだけがわかった。 あかねは、乱馬が約束を果たしてくれそうにない────そう思ったのだ。 アインハルトにも、そんな予感が少しあった。 乱馬は『魔力』のようなものをひたすら消費していくだけで、このままダグバのバックルを破壊できないのではないか。 このままでは乱馬は犬死してしまう。 乱馬はアインハルトに何をしてくれた? アインハルトの友達であるヴィヴィオの支えになってくれて、アインハルトの命を救ってくれた。 そんな乱馬を見殺しにしていいのか? アインハルトは、決心を固めた。 「……乱馬さんは、そういう人だったんですか」 「そうよ。私たちの言う事なんか、絶対聞いてくれないのよ!」 「……わかりました。なら、私も乱馬さんの話は聞かなかったことにします」 「え?」 「逃げろなんて言葉、もう忘れることにします。……私もう、逃げません」 アインハルトは、シンケンゴールドが止めるよりも先に、あまりにも素早く走り出した。 魔力消費、大。 ダメージ、大。 疲労、極大。 勝率、およそ0パーセント。 しかし、乱馬を助けたい気持ち、ダグバを許せない気持ち、共に極大。 ★ ★ ★ ★ ★ 時系列順で読む Back Warrior~闇を駆けるキバ~Next かがやく空ときみの声(後編) 投下順で読む Back Warrior~闇を駆けるキバ~Next かがやく空ときみの声(後編) Back 警察署の空に(後編) 早乙女乱馬 Next かがやく空ときみの声(後編) Back 警察署の空に(後編) 天道あかね Next かがやく空ときみの声(後編) Back 警察署の空に(後編) 梅盛源太 Next かがやく空ときみの声(後編) Back 警察署の空に(後編) アインハルト・ストラトス Next かがやく空ときみの声(後編) Back Nのステージ/罪─ギルティ─ ン・ダグバ・ゼバ Next かがやく空ときみの声(後編)
https://w.atwiki.jp/sonicy_memo/pages/3134.html
銃弾は解を撃ち抜いて 日向美ビタースイーツ♪ ADVANCED Level 6 BPM 171 Notes 509 1 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 2 口⑤口④ |①--②| 口①口口 |--③-| 口口口② |--④-| 口③口口 |⑤---| 3 ④口⑤口 |①--②| 口口①口 |--③-| ②口口口 |--④-| 口口③口 |⑤---| 4 口⑤口④ |①--②| 口①口口 |--③-| 口口口② |--④-| 口③口口 |⑤---| 5 ④口⑤口 |①--②| 口口①口 |--③-| ②口口口 |--④-| 口口③口 |⑤---| 6 口⑤口④ |①--②| 口①口口 |--③-| 口口口② |--④-| 口③口口 |⑤---| 7 ④口⑤口 |①--②| 口口①口 |--③-| ②口口口 |--④-| 口口③口 |⑤---| 8 口⑤口④ |①--②| 口①口口 |--③-| 口口口② |--④-| 口③口口 |⑤---| 9 ④口⑤口 |①--②| 口口①口 |--③-| ②口口口 |--④-| 口口③口 |⑤---| 10 口⑥⑤④ |①--②| 口①口口 |--③-| 口口口② |--④-| 口③口口 |⑤-⑥-| 11 ④⑤⑥口 |①--②| 口口①口 |--③-| ②口口口 |--④-| 口口③口 |⑤-⑥-| 12 口⑥⑤④ |①--②| 口①口口 |--③-| 口口口② |--④-| 口③口口 |⑤-⑥-| 13 ④⑤⑥口 |①--②| 口口①口 |--③-| ②口口口 |--④-| 口口③口 |⑤-⑥-| 14 口⑥⑤④ |①--②| 口①口口 |--③-| 口口口② |--④-| 口③口口 |⑤-⑥-| 15 ④⑤⑥口 |①--②| 口口①口 |--③-| ②口口口 |--④-| 口口③口 |⑤-⑥-| 16 口⑥⑤④ |①--②| 口①口口 |--③-| 口口口② |--④-| 口③口口 |⑤-⑥-| 17 ④⑤⑥口 |①--②| 口口①口 |--③-| ②口口口 |--④-| 口口③口 |⑤-⑥-| 18 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①①口 口口口口 口口口口 口口口口 口口②口 |----| 口口口口 |②---| 19 口口③口 |①---| ④口口② |②-③-| ⑤①口口 |--④-| ⑥口口口 |⑤-⑥-| 20 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①①口 口口口口 口口口口 口口口口 口②口口 |----| 口口口口 |②---| 21 口③口⑥ |①---| ②口口⑤ |②-③-| 口口①④ |--④-| 口口口口 |⑤-⑥-| 22 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①①口 口口口口 口口口口 口口口口 口口②口 |----| 口口口口 |②---| 23 ⑥口③口 |①---| ⑤口口② |②-③-| ④①口口 |--④-| 口口口口 |⑤-⑥-| 24 口口口口 |①---| ③口口③ |--②-| 口①①口 |----| 口②②口 |③---| 25 口口口口 |--①-| 口口口口 |----| 口①口口 |②---| 口③②口 |③---| 26 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①①口 口口口口 口口口口 口口口口 口口②口 |----| 口口口口 |②---| 27 口口③口 |①---| ④口口② |②-③-| ⑤①口口 |--④-| ⑥口口口 |⑤-⑥-| 28 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①①口 口口口口 口口口口 口口口口 口②口口 |----| 口口口口 |②---| 29 口③口⑥ |①---| ②口口⑤ |②-③-| 口口①④ |--④-| 口口口口 |⑤-⑥-| 30 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口①①口 口口口口 口口口口 口口口口 口口②口 |----| 口口口口 |②---| 31 ⑥口③口 |①---| ⑤口口② |②-③-| ④①口口 |--④-| 口口口口 |⑤-⑥-| 32 口口口口 |①---| ③口口③ |--②-| 口①①口 |----| 口②②口 |③---| 33 口口口口 |----| ②口口① |----| ②口口① |①---| 口口口口 |②---| 34 ②口口② |①---| 口口口口 |--②-| 口③④口 |--③-| 口①①口 |④---| 35 口口口① |----| 口口①② |①---| 口口②③ |②---| 口口③口 |③---| 36 ②②②② |①---| 口口口口 |--②-| 口口口口 |----| ①口口① |----| 37 口口口口 |①--②| ③①②④ |----| ③②①④ |③---| 口口口口 |④---| 38 ③口口③ |①---| 口②②口 |②-③-| 口⑤④口 |--④-| 口①①口 |⑤---| 39 ①口口口 |----| ②①口口 |①---| ③②口口 |②---| 口③口口 |③---| 40 ②②②② |①---| 口口口口 |--②-| 口口口口 |----| ①口口① |----| 41 口口口口 |①--②| ④②①③ |----| ④①②③ |③---| 口口口口 |④---| 42 ③⑤⑤③ |①---| 口口口口 |②-③-| ④②②④ |--④-| 口①①口 |⑤---| 43 口口口口 |----| ②口口① |----| ②口口① |①---| 口口口口 |②---| 44 ③⑤⑤③ |①---| 口口口口 |②-③-| ④②②④ |--④-| 口①①口 |⑤---| 45 口口口口 |----| ②口口① |----| ②口口① |①---| 口口口口 |②---| 46 ③⑤⑤③ |①---| 口口口口 |②-③-| ④②②④ |--④-| 口①①口 |⑤---| 47 口口口口 |----| ①口口① |①---| ②④④② |②---| ③口口③ |③-④-| 48 ①①①① |①---| ②②②② |--②-| ③③③③ |----| 口口口口 |③---| 49 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |----| 50 口口口口 |①--②| 口口①口 |--③-| 口②④口 |----| 口口③口 |④---| 51 口口③口 |①---| ④口口② |②-③-| ⑤①口口 |--④-| ⑥口口口 |⑤-⑥-| 52 口口口口 |①--②| 口①口口 |--③-| 口④②口 |----| 口③口口 |④---| 53 口③口⑥ |①---| ②口口⑤ |②-③-| 口口①④ |--④-| 口口口口 |⑤-⑥-| 54 口口口口 |①--②| 口口①口 |--③-| 口②④口 |----| 口口③口 |④---| 55 ⑥口③口 |①---| ⑤口口② |②-③-| ④①口口 |--④-| 口口口口 |⑤-⑥-| 56 口口口口 |①---| ③口口③ |--②-| 口①①口 |----| 口②②口 |③---| 57 口口口口 |--①-| 口口口口 |----| 口①口口 |②---| 口③②口 |③---| 58 口口口口 |①--②| 口口①口 |--③-| 口②④口 |----| 口口③口 |④---| 59 口口③口 |①---| ④口口② |②-③-| ⑤①口口 |--④-| ⑥口口口 |⑤-⑥-| 60 口口口口 |①--②| 口①口口 |--③-| 口④②口 |----| 口③口口 |④---| 61 口③口⑥ |①---| ②口口⑤ |②-③-| 口口①④ |--④-| 口口口口 |⑤-⑥-| 62 口口口口 |①--②| 口口①口 |--③-| 口②④口 |----| 口口③口 |④---| 63 ⑥口③口 |①---| ⑤口口② |②-③-| ④①口口 |--④-| 口口口口 |⑤-⑥-| 64 ③③③③ |①---| 口口口口 |--②-| 口①①口 |----| 口②②口 |③---| 65 口口口口 |----| 口①①口 |----| 口①①口 |----| 口口口口 |--①-| 66 ②口①口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |①---| 口①口② |②---| 67 口口口口 |①---| 口口②③ |②-③-| ①①①① 口口口口 口口口口 ④⑤口口 口口⑥⑥ |--④-| 口口口口 |⑤-⑥-| 68 口③①① |①---| 口口口② |----| ②口口口 |②---| 口口③口 |③---| 69 ③口口② |①---| ③口口② |②-③-| 口①①口 口口口口 口口口口 口口④口 口⑤⑥口 |--④-| 口口口口 |⑤-⑥-| 70 口②①口 |①---| ②口口① |②---| ④口口③ |③---| 口④③口 |④---| 71 口口口口 |①---| 口①①口 |----| 口①①口 口口口口 口口口口 ②③口口 口口④④ |--②-| 口口口口 |③-④-| 72 口③①① |①---| 口口口② |----| ②口口口 |②---| 口口③口 |③---| 73 ③口口② |①---| ③口口② |--②-| 口①①口 |③---| 口口口口 |----| 74 ②口①口 |----| 口口口口 |----| 口口口口 |①---| 口①口② |②---| 75 口口口口 |①---| 口口②③ |②-③-| ①①①① 口口口口 口口口口 ④⑤口口 口口⑥⑥ |--④-| 口口口口 |⑤-⑥-| 76 口③①① |①---| 口口口② |----| ②口口口 |②---| 口口③口 |③---| 77 ③口口② |①---| ③口口② |②-③-| 口①①口 口口口口 口口口口 口口④口 口⑤⑥口 |--④-| 口口口口 |⑤-⑥-| 78 口②①口 |①---| ②口口① |②---| ④口口③ |③---| 口④③口 |④---| 79 口口口口 |①---| 口①①口 |----| 口①①口 口口口口 口口口口 ②③口口 口口④④ |--②-| 口口口口 |③-④-| 80 口③①① |①---| 口口口② |----| ②口口口 |②---| 口口③口 |③---| 81 ③口口② |①---| ③口口② |--②-| 口①①口 |③---| 口口口口 |----| 82 口②口口 |----| 口口口① |----| ①口口口 |①---| 口口②口 |②---| 83 口口口口 |①---| ④①①④ |②-③-| ⑤③②⑤ |--④-| ⑥口口⑥ |⑤-⑥-| 84 口①口口 |----| ①②①口 |--①-| 口①口口 |--②-| 口口口口 |----| 85 口口口口 |①---| 口口口口 |----| 口口口口 |----| ①①①① |----| 86 口⑤口④ |①--②| 口①口口 |--③-| 口口口② |--④-| 口③口口 |⑤---| 87 ④口⑤口 |①--②| 口口①口 |--③-| ②口口口 |--④-| 口口③口 |⑤---| 88 口口口口 |①---| ②口口② |②---| 口①①口 口口口口 口口③口 口④口口 口口⑤口 |③-④-| 口⑥口口 |⑤-⑥-| accuracy 99.5%
https://w.atwiki.jp/jujin/pages/1070.html
変身、しちゃう?
https://w.atwiki.jp/retrogamewiki/pages/6289.html
今日 - 合計 - クレヨンしんちゃん4 オラのいたずら大変身の攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月09日 (火) 16時14分31秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して